ビクセンが昨年末にリリースした小型防振双眼鏡「ATERA H10×21」。コンパクトな防振双眼鏡の、海での使い心地を試してきました。
防振双眼鏡として世界最小・最軽量という触れ込みでしたが、実物の印象は本当に小さい!! 言われなければ、防振機能付きとは思えません。ほんとに防振がちゃんと効くのか、疑っちゃうくらいです。
電池は単4アルカリ電池が2本で、この仕様は軽量化にも一役買っています。これで12時間の使用が可能。5分で自動的に電源が切れるオートパワーオフ機能も搭載していて、電池を気にすることなくかなり長く使えます。
電池ケースも含めて変な出っ張りもなく、スマートなデザイン。これならカッパのポケットに入るよな〜。重さは358g(電池含まず)。
というわけで、お誘いを受けて乗せていただいた、リビエラ逗子マリーナを拠点に開催されたヨットレース「若大将カップ2020」の参加艇に持ち込んでみることに。
クルージングならまだしも、レース中にクルーが首から双眼鏡を下げてるワケにはいきません。ポケットであんまりゴワゴワ邪魔になっても困ります。
ATERA H10×21は……全然フツウにカッパのポケットに収まって邪魔になりませんでした。ポケットからの出し入れも特に引っかかりもありません。
今年はコロナ禍の影響で数多くのレースがキャンセルになってしまいましたが、しっかりコロナ対策を施したうえで、総勢60艇を超す艇が参加して「若大将カップ2020」は開催されました。
スタート海面を行き来するたくさんのセールボート、やっぱりいいなぁ〜。
乗せていただいたフネはスピンを揚げないハピネスクラス。黄色いレース旗をステイに結んだ艇がライバルです。黄色い旗をATERA H10×21で探します。
通常、10倍という倍率はフネの上では手に負えない高倍率です。手ブレとフネの揺れで、どんなに頑張っても目標物を止めておくのが困難です。ましてや21mmという対物レンズ径ではなおさら視界が制限され、小さな旗を判別することができません。
ATERA H10×21も、防振機能をオフにするとそういう状態。
防振機能をオンにすると……
細かな振動が消え、画面全体がゆっくりとした動きに変わります。この小さな双眼鏡の防振機能は、想像以上に効果的でした。
倍以上の価格の大きな防振双眼鏡で見たときの「ビタ!!」と止まる印象ではないのですが、小さな旗などのディテールやクルーワークの様子などもしっかりわかります。はるか遠いマークブイも水平線より上ならしっかり判別。本部船の上の動きもよくわかります。
いやいや、これは使えます。
ハイアイポイントで、眼鏡やサングラスをしたまま使えます。
バウの艇名を読むのは、遠いとちょっと苦労しました。これは、防振が映像そのものの揺れではなく、双眼鏡の物理的な揺れを消す働きをしているせいだと思います。水平線は止めても、揺れながら帆走するセールボートの動きを止めてはくれないせいです。
それでも防振なしでは、そもそも艇名を読むという努力もしなかったはず。まさに雲泥の差です。
この小さな防振双眼鏡の防振機能は、思ったよりも(失礼!)しっかりと機能して、実用性を証明してくれました。
防振機能があると、不思議なことに小径対物レンズの視野の小ささがあまり気にならなくなります。目の疲れも少なく、楽です。おそらく人間の目が持つ優れた防振機能を、双眼鏡の防振機能がしっかりと下支えするせいでしょう。
ATERA 10×21のお値段は、税別65,000円。けっこう高い。
でも、一度、防振双眼鏡をのぞくと、考えが変わるかも。揺れるフネの上で遠くの細かいディテールを見ることができるツールがある。そういう目的があるかどうか、という選択肢です。
フネで使うには、願わくば、防水だったらよかったのに!
スプレーや雨がかかりそうなときには、注意です。あと、フネに置きっぱなしは厳禁です。水がかからなくても、レンズの曇りや、電池の腐食の原因になっちゃいますので。
ちなみに、小型防振双眼鏡をどんなユーザーが買っているのかというと、バードウオッチャー……もさることながら、アイドルグループの熱烈なファン! なのだそうです。コンサートの熱気の中で、表情までしっかり見るには最適なのだとか。
でっかい7×50クラスの双眼鏡はポケットには入りません。ポケットに入る「実用的な」双眼鏡という選択肢はいかがでしょうか。
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(文=舵社 用品事業部/佐藤唯史)