カヤックアングラーはソロで釣行することが少なくないが、もし悪天候になって沖で沈したとしたら――。
「JM-Safety(ジェイマリン・セーフティ)」&「JM-Safety落水検知ユニット」は、そんな海中への転落を即時自動通報してくれるアプリ&ギア。周りに誰もいなくても、登録しておいた人に即時通報がいくほか、位置情報が自動で共有される。
今回は、日本セーフティパドリング協会(JSPA)のインストラクター、赤澤克哉氏と松永匡充氏を招き、JM-Safetyを実際にフィールドで使用。その使い勝手を検証した。(編集部)
( 文=赤澤克哉 写真=舵社/宮崎克彦 協力=kayak55.com)
近年、カヤックフィッシングの人口増加に伴って事故件数も急増しています。とても悲しいことですが死亡事故も起こっています。
事故は完全にゼロにはならないと思います。ですが、限りなくゼロに近づけていく努力は常に怠らないようにする、それが大切なことではないでしょうか。
カヤックは自分の力だけで漕ぐ、というアナログ的な部分が楽しい趣味です。しかし、こと安全面に関しては、デジタルの力はどんどん取り入れるべきです。
スマートフォンやGPSなどは、もうほとんどの人が使っていますよね。
安全面向上のデジタルツールとして、いまカヤッカーに最も注目を集めているのが「JM-Safety(ジェイマリン・セーフティ)」(アプリ)と「JM-Safety落水検知ユニット」(以下落水検知ユニット)です。
これは、落水検知ユニットを身に着けていると、落水したことをJM-Safetyのアプリ上で登録した人に通知するとともに、周囲のJM-Safetyユーザーに同じように落水を知らせてくれるという、まさにスマートフォン時代の新しい安全装備のひとつです。
左がJM-Safety(アプリ)を入れたスマートフォン、右が落水検知ユニット。セットで使うのが基本となります。
私は46歳のオジサンなので、正直なところスマートフォンのアプリなどの使いこなしが苦手なのですが、このJM-Safetyの設定はかなり簡単でした。
機械オンチの私でもできたので、これをお読みの皆さんならまったく問題ないと思います。登録の流れは後述の「JM-Safety&落水検知ユニットの登録・設定方法」を参照してください。
今回はJM-Safety上で、同僚の松永くんと「見守り登録」、「僚船登録」をして出艇してみました。
アプリの「船どこ」機能で確認すると、バラバラに漕いでいても、常に松永くんがいる場所がリアルタイムでわかります。白いマークが私のカヤック、緑色のマークが松永くんのカヤック(画面では“チャンマツ“と表示)。
常にお互いの位置が一目でわかります。
僚船設定をしているので名前が表示されていますが、知らない人には名前は表示されませんのでご安心を。
一緒に海に出る仲間に常に自分の位置がわかってもらっている——。これだけで精神的な安心感がありますね。
ちなみに見守り者は10人まで登録可能。釣り仲間のグループ全員が落水検知ユニットを持って登録しあうのもオススメです。
また、私は妻にも登録してもらっています。この場合、相手は落水検知ユニットを買う必要はありません(アプリの使用は無料)。落水した際、自宅にいる家族に知ってもらえ、さらに連絡がつかなければ通報をしてもらえるのです。
今回の実験で想定したのは、友達二人でカヤックフィッシングに出ていて、一人が落水してしまったというケース。落水役は松永くんです。
だいぶ離れた場所で浮いていると、アラームが鳴り響きました!
スマートフォンを取り出すと、松永くんが「落水のおそれ」という通知が届いています。地図には位置情報と、落水からの経過時間もリアルタイムで表示されています。これによって的確な場所を海上保安庁に通報できれば捜索時間が短縮されますし、落水経過時間からどれだけ危険な状態かということも認識できます。
また、同海域で落水者がいることがわかれば、地図上で位置が表示されているので、最短時間でグループレスキューに向かえます。
松永くんが落水! 私のスマートフォンのアラームが鳴り、落水を知らせてくれました。落水後の正確な位置(緯度・経度)、そして落水からの経過時間もわかります。レスキューに向かったり、海上保安庁への通報にも役立ちますね。
落水後、落水者が流されても、マップ上では落水者のリアルタイムの位置情報を正確に確認することができます。白い落水者マークが最初の落水位置で、赤の落水者マークが現在の位置です。
落水した松永くん側のスマートフォン画面。もし無事に再乗艇して問題ないようであれば「誤認知・解除」をタッチして無事を知らせます。その後、落水検知ユニット側も解除します。
カヤックの場合、セルフレスキューで落水から再乗艇できることも当然あります。問題なく帰着できそうであれば、落水者はアプリ上で落水通知を解除した上で落水探知ユニット側も解除しなければなりません。
解除しないと、無事なのに落水状態であると誤認されてしまい、通知を受けた人が海上保安庁などに通報してしまうかもしれません。
落水検知ユニットを購入された方は、この操作も覚えておいてく必要があるでしょう。
落水者が無事に復帰し、救助性がない場合はアプリ側の解除だけではなく、落水検知ユニットの中央のスイッチを5秒押す必要があります。このため、落水検知ユニットは手が届く場所に装着しておく必要があります。
JM-Safetyには、便利なチャット機能も装備されています。このチャットで連絡を入れ、安否を確認することも可能です。
海では絶対安全ということはありません。今回のフィールドテストでは、安全面のサポートとしてJM-Safety&落水検知ユニットは、非常に有効なアイテムということがあらためて確認できました。
このアイテムは、もっと広がってほしいと思います。というのも、ユーザーが増えれば増えるほど、同海域で落水した場合に気づいてもらえる機会が増えるわけで、より安全に繋がっていくアイテムでもあるからです。
① スマートフォン内のJM-Safetyをスタートした画面。スマートフォン端末のBluetoothをONにして、落水検知ユニットの電源をONにする必要があります。落水検知ユニットの中央にあるスイッチを5秒間長押しすると電源ON/OFFができます。
② 次に利用シーンを選択する画面が出ます。カヤックは「船舶」をセレクト。航跡記録の有無はお好みでいいですが、個人的には航跡ONのほうが、画面を見たときに位置の把握がしやすいと思います。
③ 画面下のアイコン左から2番めの「ユニット」をタッチ。自分の落水検知ユニットを登録します。登録には落水検知ユニットに書いてある番号と、購入時のメールに記載されているセキュリティーコードが必要です。
④ マイユニットのエリアをタッチして入った画面。3段目の「見守り設定」から自分が落水した際に通知される人を登録することができます。見守り者側もJM-Safetyをインストールしておきましょう。(画面は、松永くんの登録画面を使用しています)
⑤「見守り者」を追加します。見守り者の名前を入力して、見守り者側のJM-Safety右下の「設定」アイコンを開いた中に記載されているユーザーIDを入力します。
⑥ 登録者側(松永くん)側の「見守り」アイコンをタッチした画面。見守り設定で追加してもらった私のJM-Safetyと落水検知ユニットが接続されていることが表示されます。
⑦ 私側の「見守り」アイコンをタッチした画面。松永くんが私を見守り登録者として登録完了したことが分かります。これで双方がつながりました。お互いに同じ海域に出る場合は、ほかに「設定」から「僚船登録」もしておきます。
⑧ 自分の「設定」を開き、ほかにもJM-SafetyユーザやAIS船舶との衝突回避警告の距離を設定したり、仲間の艇と近づいても警告が鳴らないように僚船設定をおこなうなど、細かい設定を行います。
※登録や各種設定は、今後のアプリの機能改善で、URLをクリックすることやQRコードを使用することで、より簡単になる予定です。
■落水検知ユニット概要
●通信方式:Bluetooth Low Energy
●最大通信距離:約10m(見通し)
●サイズ:60×43×21(mm)
●質量:約40g
●電池寿命:約2年(使用状況による)
●動作環境温度:-20~50度
■価格:3,960円
(問)日清紡ホールディングス株式会社 JM-Safetyサポートセンター
(フリーダイヤル)0120-666-104
https://www.jmarinesafety.jp/support
赤澤克哉(あかざわ・かつや)
JSCA(日本セーフティーカヌーイング協会)アドバンスインストラクター。2021年現在、海釣り歴37年以上、ソルトルアー歴25年以上、カヤックフィッシング歴18年。2005年に日本で最初となるカヤックフィッシング専門HP「TEAM N.W」を設立。(現在はアメブロに移行)。カヤックフィッシング専門ショップ「Kayak55.com」を主宰。
松永匡充(まつなが・まさみつ)
JSCA(日本セーフティーカヌーイング協会)アドバンスインストラクター。約22年前からシーバスフィッシングを始め、2007年にソルトフィールドでのカヤックフィッシングの存在を知り、カヤックフィッシングをスタート。メインターゲットはシーバスだが、ほかにもアオリイカ、メバル、タチウオ、青ものなど、なんでもござれ。カヤックフィッシング専門ショップ「Kayak55.com」を主宰。
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