『Kazi』誌は今年で100周年! じゃありません。
嘘です、フェイクです、世迷い事です、妄想です。1932年6月に創刊号を発行した『舵』誌(当時の表記)は、今年2022年6月号でついに90周年(これは本当)。
ということで編集した、10年後の未来を考える特集「Kazi90周年 拝啓 10年後のセーラーへ」(Kazi6月号・5/2発売)。その編集会議で、「実際に10年後のKazi誌を作ってみたらよいのではないでしょうか?」(編集部・友田)のアイデアに「それ、いいね~~!」(全員)と賛同し、始まった「舵誌100周年号作成プロジェクト」。
どうせやるならマジでやるぜと、企画会議からきちんと開始。10年後にはどんな記事があるのか、どんな記事を取材していたいのか。その模様をドキュメントでお送りします。
右が90周年記念号の表紙(モノホン)、左が空想で作った100周年記念号(フェイク)。頭が混乱します
まずは、ラフを描いてみる。表紙の写真は、山岸重彦カメラマンが撮影したタヒチのええやつが、ええやろね
編集部員が集まり、アイデア出しのブラッシュ会議(好き勝手言い合う、的なやつ)。80周年記念号や1000号記念号も参考に(一応。実際は全然見てない(笑))。アイデアを口で言うだけでなく、勝手に書き込みはじめる編集者たち
「ヴァンデ・グローブのスタートは2032年の秋やんけ! 6月号では結果は載せられない!」やら、「五輪はオーストラリアのブリスベン。これも開幕直前か・・・」など、白熱(罵りあい)する編集部
「編集チーフが適当だからこうなってるんだ!」とまさかのブーメラン。放置されたお菓子の袋(手前)が悲しい
でも大丈夫♪ ほんとは仲良し編集部。なんだかんだで内容が決定しました(適当に)。お菓子の袋、片付けてください
完成したラフと写真候補数点を、アートディレクターのS野さんに渡す。いろんなパターンを出してくれます。さすが、プロ。空想、妄想の表紙が、現実味を帯びてきます。実際、この作業が一番重要なのです。よろしくお願いします。
ラボで出力した表紙を実際のKazi誌に巻いてみる。汚い作業机ですみません
完成した100周年号の表紙と創刊号を並べて、 Kazi6月号(5/2発売)の特集のトビラページを撮影する。デザイナーのS木さん、三角定規(海図用)を取り出し、緻密に配置を考える! 45度に交差するのが一番なのか・・・、かっこつけなのか・・・、それは誰にもわからない
簡易で作ったシロホリのスタジオで撮影開始! 巨匠・宮崎カメラマンが鋭い眼光でシャッターを押す。手タレ(手のタレント)は編集部の森口だ。無理な態勢から、ナイスな「ページめくり」を披露した
ヨット・ボートの雑誌だし、セーリンググローブを付けてめくってみよう。あれ? グローブの存在感がスゴ過ぎて、100周年がめだたねえ・・・。ギルさんすみません、今回はグローブなしで。
カメラマンとデザイナーからああしろこうしろと言われ、正解が分からなくなる森口(手タレ)。指がツル寸前である
「小指を立てて!」とありえない指示を出すデザイナー。それに応え、さらに指を立ててしまう森口。絶対にこんなふうにページをめくる人はいなかろう
なんとなく正解が見えてきた。そうだよね、雑誌ってこうやってめくるよね。その場にいた全員が何か分からない力に支配され、迷走した。正解は近くにあったのだ
design by Yosuke Suzuki, photo by Katsuhiko Miyazaki
そうやって撮影されたKazi6月号(5/2発売)の特集のトビラページがコチラ。苦労して制作した100周年号をめくった先がピカーっと光る。ページをめくったその先に、10年後の未来を考えた記事が続きます、という演出&仕掛けです。もしKazi6月号をお手にされましたら、そういう裏テーマと、撮影の苦労も思い出してやってください
design by Junko Sugeno, cover photo by Shigehiko Yamagishi
苦労して完成した2032年に発売されるであろうKazi 6月号(たぶん、2032年4月30日発売)。表紙の写真は山岸カメラマンが撮影した、タヒチのライアテア島のアンカレッジ、タヒチパールレガッタでのひとこまだ。まじですげえ。では、表紙を飾る文言を見てみよう。
・白石康次郎64歳 ヴァンデ・グローブ連覇への布石
康次郎さんは2028年のヴァンデ・グローブで優勝! そして続く2032年大会にエントリーを表明。DMG MORIセーリングチーム、大躍進です。
・AC悲願の優勝 銀杯、ついに日本へ!
まじか! アメリカズカップ=銀杯がついにアジアへ、そう、日本へ! 早福和彦CEOが仕切る日本チームは、なんとアメリカズカップのディフェンダーとなりました。
・ブリスベン五輪 49er級金メダル連覇への道
2028年のロサンゼルス五輪で金メダルを獲得した男子&女子49er級は、次に開催されるオーストラリア・ブリスベン五輪で連覇を狙う! セーリング大国、日本のストーリーがはじまる。
・全国100 漁港をプレジャーボートに開放
フィッシャリーナが普及し、2032年にはついに100漁港がプレジャーボートに開放された! フネにとって一番いい湾はだいたい漁港・・・という日本の港事情は激変し、一番いい湾はプレジャーボート向けのマリーナやハーバーになっています。
・ヤマハ学連艇モス級ACPR
学連艇はついにモス級に。470級を造り続けたヤマハ発動機も、当然モス級開発に乗り出します。ヤマハ470級のACPHから数えて10艇目、ACPRはモス級なのだ! (末尾のAは1艇目を指し、Hは9艇目を指す。なのでRは通算18艇目)
・eSailing世界一周レース開催
eSailing学連も盛んなご時世、外洋学連も当然eSailing部が発足。そして開催されたeSailing世界一周レース。過酷なオーシャンレースの勝者はいかに。
・SAIL「ラグーン60 フォイル」
艇の大型化、マルチハルの普及は加速度的に進み、とうとう60ft台でも驚かない時代に。さらに、クルージングボートには不向きと思われた、ダガーフォイル装着のプロダクションクルージングカタマランが登場。飛んじゃいます。
・POWER「ヤンマーX47 H2 スペシャル」
ヤンマーからは水素エンジン搭載の47ft艇が登場。SDGsは当然の言葉となり、エコは加速。化石燃料から電動モーターの時代を経て、ついに水素エンジンが一般的に。
・海ガール矢口あやは「世界一周はじめました!(6)」
2019年に「海ガールはじめました」でKazi誌に登場した矢口あやはさんは、念願の世界一周へ出発。その第6話は「航海記その6:ひえええ、これが喜望峰かぁ~」。ほんわかしたムードで難所を越えたようです 。
・100 周年記念連載「センチュリアン(100 歳)セーラーに聞く(1)」
人生120歳時代(ちょっと早いか)の2032年。90歳セーラーは珍しくなく、ついに100歳セーラーが元気に海を走ります。そんなセンチュリアンたちの連載。1932年生まれのオールドソルトの話を聞こう!
あらためて書き出してみると、とんでもない号だ。盆と正月が一度に来たようだ。いやそれ以上か。ヴァンデとオリンピックとアメリカズカップが一緒にやってきた。 そんな100周年号を、10年後にセーラー、ボーターの皆さんと笑って話せていたら幸せだなあ。
ということで、いろいろと頑張っておりますKazi 6月号、ぜひお手にとってください!
(文=中村剛司/Kazi編集部 写真=宮崎克彦/舵社 山岸重彦/舵社)
※本記事は月刊『Kazi』2022年6月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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