西潟正人さんの新刊は、タイトル通り、京浜急行沿線の鮮魚店や魚がうまい居酒屋などを紹介している。「ネット情報だけでは得られない、とっておきの店を、足で探し集めたのが本書である」(本書より抜粋)とあるように、読んでいると西潟さんと一緒にそぞろ歩きしている気分になる。
とびきりの魚屋や店で食べた酒の肴の紹介の合間に出てくる、「自分でつくる酒の肴」コーナーも必読。ミズダコ吸盤の酢漬け、マアジのおから漬け、カタクチイワシの一匹塩辛など、西潟節全開の肴が並び、思わず作ってみたくなる。
「魚で肴」コーナーも同様で、出てくる魚は、アイゴ、イシダイ、スケトウダラ、スズメダイ、ヒメといった少し珍しい魚たち。当然、それらも西潟流の調理方法で紹介しており、例えば、アイゴはゼンマイだし、イシダイは皮のヌタといった、一風変わった料理。
「一匹の魚に付属する宝物を、無駄にしてはもったいない」(本書抜粋)と言うように、全編からあふれるのは魚への愛だ。「外道なんていない」と普段から豪語する西潟さんならではの全魚種への愛が、ていねいな調理法やその魚のすべてを味わいつくすかのような料理に現れている。読んだら魚が食べたくなること間違いなしの一冊。ぜひ手に取っていただきたい。
『京浜急行沿線 とびきりの魚屋&酒の肴』
発行元:フォト・パブリッシング
判型:B5判
ページ数:112ページ
価格:1,980円
西潟正人(にしがた・まさひと)
1953年新潟県生まれ。服飾の仕事をしながら、インドなど世界を放浪。魚好き、料理好きが高じて地魚料理店「魚屋(うおや)」を神奈川県逗子市で20年間営む。水産庁の諮問機関、魚価安定基金の産地販売活動活性化事業審査委員。2014年より地魚料理店・品川「あじろ定置網」の運営に参画。17年から国立東京海洋大学の海洋生命科学部 魚食文化論非常勤講師を務める。
『The肴 酒呑み魚を造れ』(KADOKAWA)、『改訂新版 日本産 魚料理大全』『魚っ食いのための珍魚食べ方図鑑』(緑書房)、『「魚屋」主人の“さかなばなし” ウツボはわらう』(吉田 類との共著/世界文化社)、『京急電鉄:街と駅の1世紀』(彩流社)などの著書(40点以上!)や、テレビ出演も多数。魚食の楽しみを伝えながら、魚たちの地位向上に努めている
※月刊『BoatCLUB』の2025年1月号では、西潟さんによるカワハギ料理の手順を軽妙な文章とともに掲載。カワハギの処理仕方や、定番の姿造りやキモ和えに加え、カワハギの土手鍋という西潟さんならでは料理も並んでいる。こちらは読んだらカワハギ釣りに行きたくなる(自分で釣ったカワハギで料理を作りたくなる)こと間違いなし!