【水路を航く】#55/徳島県三好市 吉野川・大歩危峡
高知県から徳島県へまたがり、“四国の大動脈”とも称される1級河川、吉野川。
川幅の広い河口部とは異なり、山間を流れる上流部では、急峻な場所も多く見られる。
高知との県境にも近い大歩危峡は、数キロ下流に続く小歩危と合わせて景勝地として人気が高い。
同じ吉野川水系の祖谷川の周辺もまた、山深く自然豊か。
その集落には、屋島の戦いに敗れ、この地に逃れてきた平家落人の伝説が残っている。
折り重なる緑と岩、そして清流が、比類なき景観をつくり出している。
(トップ画像説明)
険しい崖がそそり立つ渓谷、大歩危峡。もとは海底だった地層が隆起し、約2億年かけて吉野川に浸食されてできたもので、国の天然記念物に指定されている
◆日本各地にある海峡や運河などを巡る、月刊『ボート倶楽部』の人気連載「水路を航く」。 舵オンラインでは、過去に誌面で取り上げた水路の中から、印象的だったいくつかの水路を再掲する。
◆第55回は、『ボート倶楽部』2023年8月号に掲載された、吉野川の上流にある大歩危峡の風景をお届けする。
(※本記事の取材は2022年の8月に実施しました。掲載内容は取材当時のものとなりますのでご注意ください)
まるで彫刻作品のような形をした岩たちは、長い年月を経て浸食された砂質片岩。すぐ横を遊覧船が航行していく
遊覧船のコースの最上流部分、崖の上にあるフネ置 き場
大きな艪を操り、流れが速く狭い場所でも遊覧船は巧みに転回していく。コースには、スリルを味わえる急流と、景色を堪能できる緩やかな流れの両方が組み込まれている
平家落人伝説が残る祖谷のかずら橋は、厳寒な冬の山で採取されたシラクチカズラで編まれている。金属製品は使用されておらず、3 年ごとに架け替えが行われる。長さ45メートル、幅2メートル、水面上14メートル
高さ200メートル、祖谷渓の断崖に立つ小便小僧。昭和43(1968)年に徳島県の彫刻家、河崎良行氏によって制作されたもの
(文・写真=舵社/山岸重彦)