フィンランド発、小さな“海の4×4”/タルガ23.1

2020.10.19

フィンランド生まれの「タルガ(Targa)」は、ワークボート風のフォルムが独特の個性を放っている。いかにもスカンジナビアボートらしく、船内外にはチークがふんだんにあしらわれ、温かみのある船上空間が広がる。
ビルダーのボトゥニアマリン(1976年創業)では、1984年からタルガシリーズの取り扱いをスタートしているが、細かなリファインを何度も施しながらも、タルガらしいスタイルは一貫して継承している。それだけ世界中のファンたちに受け入れられているボートなのだと、言い換えることもできるだろう。同社では、警備艇などコマーシャルボートの建造も多数行っており、いかにも質実剛健といった造りが特徴だ。
日本では、ウインクレル(神奈川県横浜市)がタルガシリーズの取り扱いを行っているが、先ごろ、シリーズでは最小モデルとなる「タルガ23.1」が日本に上陸。筆者は、これまでにタルガ25.1、27.2、30.1、32、37、44と、さまざまなサイズレンジのタルガシリーズに試乗してきたが、この小さな“海の4×4”には、非常に興味津々である。相模湾での試乗は絶好のコンディションに恵まれた。

 

真横から見た走行シーン。前傾したフロントウインドーは、タルガシリーズのアイコンともいえる。
全長7.66m、ハル長7.13mという手ごろなサイズ。一回り大きな25.1以上のモデルは、セミフライブリッジ、あるいはフライブリッジを備えるが、この23.1だけはどちらも備えていない。

 

アフトコクピット。舷側(げんそく)の上に設置された手すりは十分な高さがあり、走行中ここにいても安心感がある。釣りをする場合にもGOODだろう。
取材艇は、ハウス内のヘルムステーションに加え、2カ所操船システムも増設(写真左上)。手前船頭でのフィッシングを意図した装備だ。
タルガ25.1の全幅2.88mに対し、23.1の全幅は2.72m。ハル長さは50cm以上違いがあるのに、幅は10cm程度しか変わらない。サイズ以上に広さを感じる理由がここにありそうだ。

 

フォアデッキエリアも安心感たっぷり。フロア中央にテーブルをセットすることも可能になっている。船首からの乗り降りを意図したバウレール形状も、このシリーズならではのデザイン。

 

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SUVやミニバンにも通ずる船内空間。いかにも気軽に海に出られる感じがすると思う。決して広くはない空間を有効に活用するための知恵が詰まった、まさにデザインの見せどころ。ハウスには左右から出入りが可能だ。

 

後部座席を跳ね上げると、左右にバースが並ぶスペースが出現。入り口の足元にはトイレも備わっており、ゲストが乗船したときにもプライベートスペースを確保できる。

 

ウッディーな雰囲気に包まれたヘルムステーション周り。ステアリングの台座の角度は、ドライバーの好みに合わせて自由に変えられる。取材艇はバウスラスターも装備しており、ステアリングの左下にコントローラーが見える。

 

ナビゲーターシート(左側)のテーブルトップを跳ね上げると、シンクと2口コンロが現れる。その下には冷蔵庫。ボートのサイズは小さくても、装備は充実。まるでキャンピングカーのようでもある。

 

取材艇のパワーユニットは、ボルボ・ペンタD4-300DPI(300HP)をチョイス。スターンドライブならではのスポーティーな走りが楽しめるはず。エンジンルームは、メンテナンス性も高そうだ。

 

取材を実施した当日のコンディションは、風も弱く、ほぼフラットな海面。キビキビとした走りは、ワークボート然としたたたずまいが、見てくれだけにはとどまらないことを実感させる。
この日は3人が乗船していたが、最高で38ktの速度を記録した。ラフな海面での走破性も、ぜひ試してみたいものだ。

デビュー以来、デザインとコンセプトを頑なに継承し、ブランドとしてのアイデンティーを確立しているタルガボート。日本のマリンレジャー事情に即したサイズのモデルを展開し、また、クルージングからフィッシングまで、マルチパーパスに使える多様性も魅力だ。昨今のクルマの世界におけるSUV人気を鑑みれば、まさに時流に乗った一艇といえるかもしれない。
気になる方は、ぜひ輸入元のウインクレルまで問い合わせていただきたい。

(文=舵社/安藤 健 写真=舵社/宮崎克彦)


SPEC
●全長:7.66m
●ハル長:7.13m
●全幅:2.72m
●喫水:1.05m
●排水量:2,800kg
●燃料タンク:340L
●エンジン:ボルボ・ペンタD4-300DPI(300HP)、D4-260DPI(260HP)、D4-225DPI(225HP)

(問い合わせ)
ウインクレル
TEL: 045-681-0104
https://yacht-w.com/


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