オークランドのロックダウンによって延期が発表された第36回アメリカズカップ。3月6日と7日の二日の延期が発表され、3月10日が最初のレースとの発表があったばかり。ルナロッサ・プラダ・ピレリ(以下、ルナロッサ)が防衛者エミレーツ・チームニュージーランドに挑む戦いは、ちょっとだけ先送りになった。
(上:photo by COR 36 / Studio Borlenghi)
その前に。
第36回アメリカズカップ挑戦者決定シリーズであるプラダカップ決勝を振り返ってみよう!
圧倒的な強さを見せつけて勝利したルナロッサ。プラダカップ決勝、2月12日に開始された初戦から2日目までに、驚異の4連勝を見せつけた。コロナ禍によりキャンセル、延期された2月17日を開け、レース3日目となる2月20日に開催された第5、6レース。
ラウンドロビンでは絶好調だったイネオス・チームUK(以下、イネオス)がプラダカップを逃した要因とは……。
いきなりスタートから見せ場となった第5レース。スタート30秒前、風上側のエンドマークのレイラインにいたルナロッサ(左)は、さらにヘッドアップしてイネオス(右)へ攻撃をしかけた!
イネオスはこの攻撃的なヘッドアップに一瞬躊躇するも、風下に落とすことを避け、風上から強引にバウをねじ込む。 ここでルナロッサからイネオスへプロテスト(抗議)!
イネオスの危険な突込みにタッチダウンするルナロッサ(左)
この状況を分析したネイサン・アウタリッジの見解を以下に。
「ジミー・スピットヒルはレイラインにいましたが、ハイスロー(高さ重視でスピードを落とした)モードでラインエンドより風上に向かいました。スピットヒルは、ベン・エインズリーが入ろうとするスタートラインへの道を見事に遮ります。 スピットヒルたちはすばらしい戦術をとりました。エインズリーたちはこのペナルティーを解消するため、このあと困難なアタックを何度も強いられたのです」
先の激しいプロテストの結果、まずは両者にクロスド・ライン・アーリー=リコールが宣告される。リコールランプ消灯後、改めてプロテストジャッジが通達され、イネオスにペナルティーが宣告された
プロテストに負け、艇速減のペナルティーを負ったイネオスは、その後復活することなく敗退した。マックススピードが明らかに遅すぎる……
PRADA Cup Final - Race 5
Start: 1615
Port: ITA
Stbd: GBR
Course: E
Axis: 245
Length: 1.82nm
Current: 0.2 knots @ 353
Winner Luna Rossa Prada Pirelli – 1:20
今回は、イネオス(奥)の得意とする、すばらしいスタート。リーバウをキープし。左のバウンダリーに行く前にセパレートを強いる。第1レグを完全にコントロールした
イネオス(左)は200m以上のゲインを持って余裕の第2レグへ
第4レグには580m以上のアドバンテージをマーク
全レグ、イネオス! 思わず解説者が「ビッグカンバック!」と叫ぶ。 その差は32.9秒。大きなミスがない限り盤石な最終レグに突入
580mあったゲインを詰められたものの、イネオス、決勝で初勝利!
photo by COR 36 / Studio Borlenghi
満面の笑みで海上インタビューに答えるエインズリー。
エインズリー「勝利できてハッピーです。チームは、全員すばらしい仕事をしました。私たちは戦い続け、やっと1勝を勝ち取ることができました」
インタビュアー「レース前、艇速が遅いという発言をされていましたね。そのため、必要以上の攻撃が必要なように見えましたが」
エインズリー「ほとんどの人はそう見ていると思います。私たちもそう感じています。ボートスピードを向上させることは大きな課題です。私たちはあきらめません。ずっとプッシュし続けます」
インタビュアー「このレースでグラインダーたちは、地獄のようにハードな仕事をしました。今夜、彼らに飲み物をおごるチャンスですね(笑)」
エインズリー「そうですね(苦笑)。彼らにたくさんのビールの借りができました(笑)」
軽風域では、イネオスのほうが速いということが証明された!
PRADA Cup Final - Race 6
Start: 1715
Port: GBR
Stbd: ITA
Course: E
Axis: 248
Length: 1.8nm
Current: 0.2 knots @ 353
Wind: 8-12knots 225 degrees
Winner INEOS TEAM UK – 0:14
photo by COR 36 / Studio Borlenghi
プラダカップ決勝レース6戦目にして、悲願の1勝を挙げたイネオス。エインズリーに笑顔が戻ってホッとしている。
この段階でルナロッサ5勝、イネオス1勝。7勝先勝の戦い。ルナロッサはあと1勝でマッチポイント。イネオス、起死回生なるか!
後編に続く。
(文=Kazi編集部/中村剛司) ※関連記事は月刊『Kazi』2021年4月号にも掲載予定。