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イラストレーターでセーラーの国方成一さんによる、自作木製クリートのストーリーです。
前回は木製クリートの作り方を詳細にお伝えしました。
今回は、自作したクリートを自宅で活用するアイデア集。
国方さんが実際に自宅で実践する、木製クリート使用法とは。(舵オンライン編集部)
メインカット | 自宅の庭に貼ったダクロンセールのタープ。このタープのトリムも木製クリートを活用。日差しや風向に合わせてセールトリム(笑)をする
前回紹介した木製クリートのおおまかな工程図。詳しくは「木製クリートの作り方」へ!
セールのタープを木製クリートで止めよう
大航海時代よろしく、タープのハリヤードには、木製クリートが似合うのだ。
クリューだった箇所を最終的にトリムする。木製クリートに止めて、タープの位置を決定
エンドが斜めから入るので、クリートは垂直に設置(その理由については後半で説明あり)
こちらはラフ側。細かなトリムができるように、セールの各縁にも多くのロープがつながる。それぞれのロープの先はもちろん木製クリートだ
木製クリートを自宅で使ってみよう!
自宅のあらゆる場面で活躍するクリート。開閉式の扉や、スピンクロス製日除けの昇降、吊り下げ式のはしごから、カーテンまで。あらゆるシーンにクリートを使ってみる。自宅に吹き込む、すばらしき潮っ気。ここに紹介した例は一例にすぎない。いろいろな場所で、クリートを使ってみよう。
イラストA
スピンクロス製日除け&開閉扉
日除けはもちろん、のれんのフックとしてもクリートはよき風合いを醸す
開閉式扉に設置したクリートに、スピンクロス製日除けを引っかける。実によい感じだ
これが窓に取り付けた開閉式扉。アトリエにやってくる子どもたちに大人気。もちろんクリートで止める
古くなったスピネーカーで作った日除け。これもまた潮っ気の強いアイテムだ
イラストB
カーテンやすだれのストッパー
もともと、カーテンのホールドバックルは、クリートに似たものが多い。ならば木製クリートを使おう!
チラッと見える木製クリートがオシャレ。もちろんクリートノットで
すだれの昇降こそ、木製クリートが似合う
イラストC
スキップフロアの昇降式はしご
中二階=スキップフロアに掛けた昇降式はしごは、テークル&木製クリートを使用。まさに船乗りの技術だ
昇降式はしごを上げたところ。ラストは木製クリートに止めて完成。こちらの窓にも、スピンクロス製日除けを設置
テークルの取り回し。1/2の力で引ける
中二階を利用するときは、昇降式はしごをゆっくりと降ろしていく。ロープは12mm径を使用、テークルの取り回し。1/2の力で引けるクリートも長さ150mm×幅15mmという大き目を設備
クリートノットで止める
イラストD
壁掛け用のフック
バッグをちょっと掛けるフックとしても、木製クリートは活躍する。ヒートンでは味気ない……
トートバッグを掛けてみる。しっくりくる
右がよく見るヒートン。やはり木製クリートの圧勝です
自作クリートのさまざまな用途
さて、出来上がったクリートを家のなかではどこに、何に使うか、ということになる。その正統的使用法はロープを止めることだから、まずはロープもしくは紐を使っているところだ。しかもそれに力がかかっているという条件であれば最適だろう。
私のアトリエ工房の話をしよう。南東側の窓は、内側に中折れで上下に開閉できる扉を自作で設けてある。これもヨット用のブロック(滑車)を使い、ロープで開閉しているのだ。そして開けた時に止める個所にはクリートを設備し、しっかりと固定できるようにしてある。さらにスピンクロス製日除けの設置もクリートがいい(イラストA参照)。
またカーテンを引き込んでまとめるにもちょっとクリートがあると、これもまたオシャレなストッパー役として部屋を飾る(イラストB参照)。さらには、カーテンレールに直結した細いロープをクリートまでリードし、それを引くとカーテンが開けられるという仕掛けもできる。
天井が高くいわゆる中2階(最近ではスキップフロアとも呼ばれる)などがある家では、そこへ上るはしごが設備されている。そのはしごの上げ下げにはロープ及び滑車(ブロック)を使う。このようにちょっとした重量のあるモノを、引き上げて止めるためのロープにはクリートが最適である(イラストC参照)。
そのほか、ロープを止めるばかりでなく、いわゆる壁掛けとして便利なフックにも使える。これなどは金属でできた通常ヒートン(洋灯吊り金具)と呼ばれるモノより、数段お洒落だ(イラストD参照)。
クリート結びの話
さてこの耳型をしたクリートへロープを止める方法だが、船乗り以外にはあまり知られていない。私のアトリエ工房にもいくつか必要があり装備しているのだが、絵画活動に来る方々や子どもたちもそれを見つけると、ちょっと興味があるらしい。どうやって結び止めるのか尋ねることもある。
中には積極的にやってみる人もいる。しかしぐるぐると巻き付けるだけである。ちょっと工夫して八の字にするが、最後の止め方が分からずひたすら襷掛けに巻き付ける。
ぐるぐると巻き付けるだけでも、その摩擦によりクリートから滑りださないから、止めるだけというなら一時的にその機能は果たしている。
その時の具合や人の癖によりクリートへ右から巻き付けるのと、反対の左からという場合の違いがある。ときにはいつも巻き付ける方向とは違うこともあり、最後に捻りを入れ止める結び方を間違えやすいのもこのロープワークの特徴だ。
これに手が慣れてマスターすると、とても便利で楽しい結びなのだ。ぜひ挑戦してください。
(文・イラスト=国方成一、写真=山岸重彦)
※本記事は月刊『Kazi』2023年12月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ
国方成一
Seiichi Kunikata
東京都出身、多摩美術大学卒業。イラストレーター、造形作家。自宅のアトリエを開放し、絵画教室やロープワーク教室などを開催。ヨットを楽しんだのは、神奈川県の伝統的な小網代湾にて
『ロープワーク入門講座』(国方成一 著。舵社刊。右)、『結び 生活に美と潤いを求めて』(中沢 弘 著、国方成一 画。天然社刊。左)など、結びに関する多数の書籍を上梓
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