ロープを撚り、ロープを編む、奥深き結びの世界(1)

2023.06.19

イラストレーター国方成一さんが紡ぐ、奥深き「結びの世界」。

実践的で実用的なロープワークに長けた国方さんが、最近ロープそのものを撚(よ)っている・・・という話を聞いた。

仲間たちからもらった古着からロープを撚り、できあがったカラフルな自作ロープで飾り結びを編む。

月刊『Kazi』6月号に掲載された記事を3回に分けて再録いたします!(舵オンライン編集部)

メインカット | photo by Shigehiko Yamagishi | Kazi | 自宅のアトリエで飾り結びを編み込む国方さん。自ら考案した穴あき板(編み込み専用の台)の上で、マットを編む。このアトリエは絵画教室としても開放され、子どもから大人まで多くの生徒の笑顔であふれる場所でもある 

 

 

釣り用リールを使うという斬新な手法。実に真似したくなる作業である

 

 

ロープを撚るその画期的なアイデア

三つ撚り(三つ打ち)ロープ作成に必要な道具や、その方法について紹介していこう。

釣り用リール撚るために使用。上がバージョン01、下がバージョン02。グリップ力が増している

 

 

裁ちバサミなどハサミやニッパー、千枚通しや止め用の化繊紐。革ケースや台座はもちろん自作

 

 

20リッターポリタンクとS環撚ったロープの戻り防止のために使用。20kgの重量が必要。S環でつなげる

 

 

古着から作る三つ撚りロープの味わい

ある日、家の中を整理していると昔の雑多なモノがでてきた。なかでもだいぶん以前に故人になった母や祖母が残した着物は、ほとんどが古着として使えるモノではなかった。片づけて一カ所に集めたそれらはボロ布だから細かくし、使いやすいサイズのウエスや雑巾となり、主にキッチンで使用している。

あるとき何かの本で読んだ撚(よ)り紐(ひも)を作ることを思いつき、それなら汚れを拭き取り捨ててしまうゴミではなく、再び古着を生かせるというのが作るきっかけだった。

今は世界中でさまざまなモノがあふれ、なかでもゴミは我が日本ばかりでなく多くの国で大問題になりつつある。現代は便利になった反面ゴミ処理問題が、人類の生活をも脅かすほどになりつつあるのだろうか。

ボロ布ひとつでもその先行きを考え、再利用することは気持ちの温もりをも感じる。

ま、そんなことで作り始めた撚り紐だけど、今度はそれだけではそれら多くの紐がゴミ化しないだろうか?そこで次にはその紐を使いマットを制作することも思い付き、まずは簡単な飾り結びの資料を頼りにやってみる。慣れてくると次第に高度でサイズも大きなモノもできるようになり、自宅の玄関にマット、風呂場には足拭き、テーブルには鍋敷きなどなど楽しみながら便利な敷物が次々と出来上がっていく。

それを聞きつけ注文というよりおねだりして来た友人たちにもプレゼント。このようになんの気合入れもなく、楽しみで始めたのが紐作りなのです。

 

 

三つよりロープ編みの手順

①古着を用意する。洋服よりは、縦に長い和服のほうが素材を取りやすい

 

 

②着物に5~7cm幅の切れ目を入れて、手で裂いていく。同じ幅がよい

 

 

③7cm幅の反物をミシンで縫い合わせていく。目標は30m。洋服だとこの作業が大変に

 

 

④反物を重ね、斜めに縫い、余りを切り落としていく。テーパーにすることでなめらかなロープに

 

 

⑤端をS環に結び、10mの長さに切る。これを3本作る。作業は屋外でも可

 

 

⑥S環にはバントラインヒッチで結ぶ。引くほどにきつく締まる有効な結びだ

 

 

⑦-1 S環を釣り用リールのベール部分に引っかけ、回し、ポリタンクに固定 

 

 

⑦-2 ひらすら回す!

 

 

⑧同じ長さに巻いた3本を同時にリールのベールに引っかけ、今度は逆に回す

 

 

⑨撚ったロープをポリタンクに固定し、端をコンストリクターノットで結ぶ

 

 

⑩完成!

見事に出来上がった自作の三つ撚りロープだ

 

 
ちょっと興味を持たれる方にお勧め

まずは細いテープ状の長い布切れを作ることから始まる。捨てるようなぼろきれを裂き、縫い合わせてつなげるのだが、ぼろ布といっても小さいモノではテープ状にするのにとても手間がかかる。最適なのは古くなり捨てるしかなくなった着物(和服)が一番良い。

というのも着物はもともと反物を単純にカットし作られたモノであり、縫い目をほどき広げると人の背丈ほど長い布なのだ。だからそれを裂いていくと良い長さの布テープが大量にできる。それらをつなげ数十mにすると、撚り紐を作るにはとても効率よい材料となるわけだ。

また古くなった布団のシーツなどもその長さの点で、反物と同じく細く裂いてテープ状にするには良い生地だ。カットする幅は5~7cmくらいが適度な幅である。

さてつなげるには縫い合わせなくてはならないが、大量に作るとなると手縫いではとても手間がかかる。やはりミシンが一番だろう。

テープ状の布をつなげるには連続写真④番のように長い斜線で縫い合わせる。この作業が終わったら、それら縫い合わせた個所の三角部分をハサミでカットする。最初から縫い合わせるテープ布の端を斜めにカットする方法も良いが、ミシン掛けの時にきちんと合わせなくてはならないという手間がかかる。

またつなげれば良いからと重ねたテープ布を直角にミシンで縫い合わせる手抜き作業は、撚りをかけたときにスムースな紐になってくれない。こうした作業を辛抱強くやると、20~30m以上の細長いテープ状のモノができるというわけだ。撚り合わせのアイデア

これを撚り合わせていくのだが、農家の熟練したお年寄りたちが藁を撚るように素手でやって行くと、その技の難しさにとてもとても凄い手間と時間がかかることがわかる。なにせ数十mになるものを撚って三つ撚りの紐を作る訳だから、素手の作業ではいかに熟練した方でもご苦労な作業だろう。

そこで撚り合わせる道具を考案した。釣り道具のひとつである釣り用のリールを利用しよう。

使わなくなった小さなリールを誰かからいただくなりして、ちょっとだけ改造し“撚り器”とでもいう道具を作る。といっても持ちやすいようにするだけのことだからいたって簡単。短い棒にリールを取り付け、扱いやすくするだけのこと。

その次の道具というか備品は小さなS環だ。ホームセンターなどで手に入るが、やや太めの針金を使い自作しても良い。

これらの道具がそろったら、さあ撚り紐作りの作業を始めよう。

長い撚り紐を作るには、その長さ分に相当する場所が必要になる。家の中で無理な場合は庭へ出てもよいだろう。

幸い私の工房では隣の部屋とつなげると10mほどの場所が確保できる。そこでまず、さきほど作った布テープをその長さ分に切り、3本用意する。布テープの片方をS環に結びつける。このとき確実に結ばず撚る作業中に外れたりすると、経験上とても面倒なことになるから要注意だ。

特にしっかりと撚ってしまったあとに解けて外れたりすると、その修復には嫌になるほどの手間がかかる。

 

 

S環にはバントラインヒッチ

そんなわけだから、そこへの結びにはバントラインヒッチが良いだろう。そうして3本のテープそれぞれの両端に同じくS環を取り付け(計6カ所)、片方の3本はあらかじめ設備しておいた箇所の輪にかける。

まず一本のテープをとったら端まで伸ばし、その片方をリールの先端に付いた輪にかけ、布テープがたるまないように場所の広さを使ってしっかりと張る。

リールは右回転、左回転が自由にできるので、まずは持ち手から見て右回り(左回りでも良い)に回していこう。そのとき布テープはたるまないようにしっかりと張るのがコツである。 

こうして撚りが進んでゆくと言うまでもないが、紐状になっていく布テープは引っ張られるようにして短くなる。前述したように、ゆるみを作らないようにしっかりと張ってリールを巻くのが大きなポイントだ。 

次に2本目の布テープを撚るのだが、最初に撚った紐は一時的にリールから外し固定しなくてはならない。私は重さを確保するため水を入れたポリタンク(20リッタータイプ)を用意し、その取っ手にリングを取り付け、S環のフックを素早く掛けられるようにしている。ここで注意。紐は撚ることで長さが変わるため、あらかじめ固定された位置(回転リール側)にフックは設備できない。 

満タンの水の力で動かない重さのあるポリタンクは、持ち手にリング状の固定環も付けられ自由が効き最適だ。 

 

S環にはバントラインヒッチ

そんなわけだから、そこへの結びにはバントラインヒッチが良いだろう。そうして3本のテープそれぞれの両端に同じくS環を取り付け(計6カ所)、片方の3本はあらかじめ設備しておいた箇所の輪にかける。 

まず一本のテープをとったら端まで伸ばし、その片方をリールの先端に付いた輪にかけ、布テープがたるまないように場所の広さを使ってしっかりと張る。 

リールは右回転、左回転が自由にできるので、まずは持ち手から見て右回り(左回りでも良い)に回していこう。そのとき布テープはたるまないようにしっかりと張るのがコツである。 

こうして撚りが進んでゆくと言うまでもないが、紐状になっていく布テープは引っ張られるようにして短くなる。前述したように、ゆるみを作らないようにしっかりと張ってリールを巻くのが大きなポイントだ。 

次に2本目の布テープを撚るのだが、最初に撚った紐は一時的にリールから外し固定しなくてはならない。私は重さを確保するため水を入れたポリタンク(20リッタータイプ)を用意し、その取っ手にリングを取り付け、S環のフックを素早く掛けられるようにしている。ここで注意。紐は撚ることで長さが変わるため、あらかじめ固定された位置(回転リール側)にフックは設備できない。満タンの水の力で動かない重さのあるポリタンクは、持ち手にリング状の固定環も付けられ自由が効き最適だ。

 

ラストはコンストリクターノット

こうしてリールを使った撚りの作業で3本の撚り紐をつくる。最後の3本目はリールから外さず、ポリタンクのS環にかけてある2本を外しリールのベールに移動。そこで今度は3本まとめて左回り(左回りで撚ったのなら右回り)に撚る。こうして三つ撚りの布紐が出来上がる。右回りで撚った3本を左回りで撚りまとめるため、こんどは互いに反発して撚りが戻らないしっかりした三つ撚りの紐になるという次第だ。

それぞれの端をしっかり細い紐や糸で止める。止めた糸が解けないようにするにはコンストリクターノットが最適。撚った3本が解けて行かないようにすることで完成である。出来た三つ撚りの紐同士を、ショートスプライスでつなげることもある。そのため前述の端止め箇所は、ある程度長さを残して止めたほうが良いだろう。

 

 

いろいろな素材で作ってみよう

反物を取るには着物が楽だが、どのような布、紐でもロープは作れるのだ。

漁港に捨てられていた廃棄ロープをばらして同様の手順で撚った。ロープワークを駆使した作品

 

 

獅子舞に使う布、油単(ゆたん)で撚ったロープ。知人が使っていた油単を思い出とともに撚った

 

 

ヨット乗りならセールで! ダクロンのメインセールは硬すぎて向かなかった。長さ、厚さともにスピンクロスはかなりよい。0.5オンスほどのクロスで径4mmほどの三つ撚りロープを作成 


 

次回は今回出てきたロープワークを国方さんのイラストで解説します

奥深き結びの世界②を読む!

 

(文=国方成一  写真=山岸重彦/舵社)

※関連記事は、月刊『Kazi』2023年6月号に掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

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国方成一
Seiichi Kunikata

東京都出身、多摩美術大学卒業。イラストレーター、造形作家。自宅のアトリエを開放し、絵画教室やロープワーク教室などを開催。ヨットを楽しんだのは、神奈川県の伝統的な小網代湾にて

 

 

『ロープワーク入門講座』(国方成一 著。舵社刊。右)、『結び 生活に美と潤いを求めて』(中沢 弘著、国方成一 画。天然社刊。左)など、結びに関する多数の書籍を上梓

 


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