470級でも最終日に早稲田が逆転
大会最終日となる11月3日の和歌山は、朝から秋晴れの空が広がり、約10ノット程度の北寄りの風が吹く絶好のヨットレース日和となった。ただ、レース海面に漁船が操業していたのと、風向が定まらなかったこともあり、470級が予定時刻より40分ほど遅れてスタートした。
一方、スナイプ級はゼネラルリコールを繰り返しているうちに風速が落ち、何度かスタートの仕切り直しをしているうちに470級から遅れること約1時間でようやく第6レースのスタートが切られた。このことで、スナイプ級の第7レースは実施が不可能となり(最終日のレースは12:30以降は行わない規定がある)、1レースだけの最終日となった。
慶應義塾大学が首位に立っていた470級は、第6レースでも慶應が上位をまとまって走り、2位につけた早稲田大学を引き離すかに思われたのだが……上位集団が風下の第3マークに到達する頃に風が落ち始め、きわめてガスティーなコンディションとなった。そこまでシングル後半あたりでまとまって走っていた慶應だったが、第4レグのアップウインドコースで風のシフトをつかみそこね、3艇とも順位を大きく崩してしまった。
反対に、それまでは総合優勝狙いで安全運転的なレース運びをしていた早稲田が、シフトを利用してジャンプアップ。続く第7レースでは、勢いづいた早稲田がアグレッシブなコース展開を取り、最後の最後で慶應を逆転してのクラス優勝。初日から手堅く首位を堅持していた慶應だったが、土俵際で最大のライバルにうっちゃられる形となってしまった。
一方、初日の1-2-3フィニッシュでスナイプ級の首位に立ち、その後も圧倒的な強さで首位に居座り続けた早稲田のスナイプは、最終日も付け入る隙を見せることなく、見事な走りでクラス優勝を成し遂げた。
その結果、早稲田大学が2年ぶりの総合優勝を、6年ぶりの両クラス完全優勝という形で成し遂げた(詳報は12月5日発売の月刊Kazi-1月号に掲載予定)。
(文・写真=松本和久)
最終日に行われた470級第6レース。第2マークに2艇がシングル後半、1艇が15~16番でアプローチしてきた慶應義塾大学。2位早稲田大学との差をさらに広げ、クラスV2がほぼ決まったと思われたのだが、この後第4レグのアップウインドで風速が落ち、風のシフトを見誤った慶應は大きく順位を落としてしまう。
470級第6レース、2回目のアップウインドでの第2マークで、推進方法の変更を告げるR旗が掲揚された。この風速の変化が早稲田に味方した。
前日の4レースで頭角を現した東京工業大学のスナイプ陣は、この日も3艇が手堅くまとめ、なんとクラス4位に食い込んだ。
今シリーズはあまり目立たない印象だった同志社大学だったが、シリーズを終えてみればスナイプ級4位、470級5位の総合3位。インカレの戦い方を知る凄みをみせた。
新体制で臨んだ日大だったが、スナイプ級2位、470級5位の総合2位と、優勝にはあと一歩届かなかった。今季から、今春卒業したばかりのOB高山大智(ヤマハ発動機)がコーチングスタッフに加わり、チームのレベルは向上しつつある。常勝日大と呼ばれた時代の強さを取り戻すことができるか。
前日までのポイントでは、首位の慶應との差を逆転することは難しいと思われた早稲田の470だったが、最終日の2レースで見事ひっくり返し、総合優勝に完全優勝という花を添えた。
D旗が掲揚され、470級クラスV2を信じて海に出て行く慶應義塾大学の470チーム。
470級の第7レース終了を待っていたスナイプチームが合流し、2年ぶりの総合優勝と6年ぶりの両クラス完全優勝を喜ぶ早稲田大学。
赤いビブが席巻した今年の全日本インカレ。「W」の黄金時代はまだしばらくは続きそうだ。
◆470級・上位成績
◆スナイプ級・上位成績
◆総合成績
第85回 全日本学生ヨット選手権
■2020.11.1~3
■和歌山セーリングセンター