【フネのDIY術】/ロッドホルダー③ 取り付け方法

2022.06.13

月刊『ボート倶楽部』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝え中。今回は、2020年12月号に掲載した、「ロッドホルダー③ 穴開けを伴うロッドスタンドの取り付けって?」から内容を抜粋してお届けします。


 

おことわり
本記事においては、ポイント移動などのときにロッドを挿しておく筒状のツールをロッドスタンド、エサ釣りのときなどにロッドを船べりに固定する道具をロッドホルダー、キャビンの天井にロッドなどを収納しておくアイテムをロッドラックと呼び、それらの総称を、かっこ付きで「ロッドホルダー」と表記する

 

事前の準備が大事

前回は、ロッドホルダーのマウント部の取り付けを、月刊『ボート倶楽部』編集部員が実際に体験してみて、その意外な難しさについて述べた。今回は、船体に穴を開けてロッドスタンドを固定する、プロの仕事を拝見する。

まずは取り付け位置の確認から。今回見ていくのは、バウデッキのアンカーロッカーの側面外部に、リガーマリンエンジニアリング製の「フィッシング3連ロッドホルダー」を取り付けるといった作業。いきなり、船体にネジ穴を開けてしまうのではなく、設置予定箇所にロッドスタンドを当てて、アンカーロッカーのフタが問題なく開閉できるのか、ロッドスタンドにロッドを挿したとき、ロッドエンドが床面に付かないかどうかなどを確認する。

「そのほか、設置位置の裏面にあたるアンカーロッカー内に、障害物などがないかの確認もお忘れなく」(東京ボートのサービス部長、伊藤幸洋さん。以下同)

 

今回、ロッドスタンドはアンカーロッカーの外側に取り付けるので、ボルトとナットが干渉するような物が内側にないか確認

 

次に、設置する艤装品のほか、ネジやシリコン、工具などがそろっているかどうかを確認する。作業が始まってから、慌てて必要な道具類を取りに行ったりすることのないようにしよう。ちなみに、今回取り付けるロッドスタンドには規格の合ったボルト&ナットが同梱されていたが、入っていない商品もあるので要注意。

 

今回は、伊藤さんがリガーマリンエンジニアリングの「フィッシング3連ロッドホルダー」(スリーブカラーは選択可能)を取り付ける工程を見ていく

 

適切な基準で位置出し

必要な道具がそろっていたら、実際の取り付け作業に入る。最初に「位置出し」から。位置出しとは、図面上で描いたような計画を、実際の現場に落とし込むことをいう。ここでは、穴を開ける箇所を、船体に反映させることを指す。

伊藤さんはまず、アンカーロッカーの入り口の横幅の長さを計測し、その中心を取って、そこにロッドスタンドの中心を合わせて位置出しを行った。

伊藤さんがなにげなく行っていた位置出しだが、そもそも基準の決め方はいったいなんなのだろう。

「取り付けるものや場所によって千差万別なので、しっかりとした基準はないのですが、パッと見て、変に見えないかどうかが大切だと思います」

位置出しでズレたりすることはないのだろうか。

「ズレないようにするのがプロです・・・と言いたいところですが、人間なので当然ズレることはあります。ただ、ズレたとしてもいかにしてリカバリーできるか、というのが大事だと思います。また、ズレるといっても、結局、なにに対してズレているのか、が重要なんです。今回は、アンカーロッカーに取り付けるので、それに合わせることで左右対称になるように設置できると考えました」

その後、上下位置を確認して、その高さにマスキングテープを貼り、テープに合わせてロッドスタンドを当てて、ネジ穴の位置にマーカーで印を付けた。

「マスキングテープを使わず、鉛筆やマーカーで位置出しを行ってもいいのですが、その場合は船体に傷が付かないように注意してください」

以上が、ロッドホルダー取り付け位置の注意点だ。

 

 

いつもアンテナを張る

ドリルで穴を開け、バリ取りのためにザグリ(穴の入り口を広く削る加工)を施したら取り付け。穴を開けた箇所には、FRPの内側に浸水するのを防ぐため、シリコンで防水処理をする。今回取り付けたFRPの厚みが薄めだったので、大きめのワッシャーを使用。こうすることで局所的に力が働いても割れないようにしている。

また、アンカーロッカーも普段から使用するので、ナット部でケガをしないよう、クリング(ナットにかぶせる樹脂製のキャップ)で保護した。はみ出たシリコンは、シリコンオフできれいに除去し、取り付けは無事に終了となった。

こうして、ロッドスタンドは緻密な計算のうえで、見た目のズレも見られず、ていねいに取り付けられた。実際に使用する予定のロッドを挿してみても特に問題はなさそうだ。

実際の作業は、伊藤さんとオーナーさんが現場で話し合いをしながら進めていった。お二人とも普段からいろいろな艇の艤装をチェックし、こういうのがいいな、こうしたらダメだな、といったインプットを増やしながら、そして失敗も重ねながら、よりよいものを目指して日々工夫を凝らしている姿が印象的だった。

 

実際にロッドを挿してみても、特に問題はない。操船席から見ても、意外とこの位置にロッドがあっても邪魔にはならない。よく考えられた位置なのだ

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2020年12月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
新艇・中古艇の販売や保管、メンテナンス関連部品の販売、ボート免許取得のための講習など、ボートに関する幅広い業務に携わる。
埼玉県八潮市古新田9-1
TEL:048-960-0041
https://www.tokyoboat.co.jp/


あわせて読みたい!

●6/3発売、月刊『BoatCLUB』7月号/充実の船上時間

●【フネのDIY術】/ロッドホルダー① 最適な取り付け位置

●【フネのDIY術】/ロッドホルダー② 取り付けの注意点

 


ボートフィッシング

ボートフィッシング の記事をもっと読む