“つながる”ハンディーGPS/ガーミン「GPSMAP 66i」

2021.08.30

ハンディータイプのGPSはポケットサイズで持ち運びができるので、ヨット&ボートに乗るとき以外にもあれこれ使えて、とても便利。もちろん、現在位置を把握し、航海計画を立て、航跡を残したりといったGPSプロッターとしての機能は、安全に海を走る上では心強い味方となることは言うまでもない。マイボートに据え置き型のGPSプロッターが設置されているとしても、例えばそれが故障した際のバックアップツールにもなるし、いつでもどこでも手元で使えるという手軽さは、据え置き型にはない長所といえるだろう。

そんなハンディータイプのGPSといえば、「ガーミン(Garmin)」ブランドがあまりにも有名。海の世界はもちろんのこと、登山や自転車といったシーンでも、多くのユーザーに愛されている。

舶用機器のテクノロジーの進化が著しい昨今。そんななかで、ハンディータイプのGPSは、今さら紹介するまでもない、超基本的なアイテムといえるかもしれない。だが、今あらためて注目したくなるような、ココロくすぐる一品を見つけた。

 

コチラがガーミンのハンディーGPSの最新モデルGPSMAP 66i。16.3×6.6×3.5cmというコンパクトなサイズながら、頑丈そうなボディーは、いかにも使い勝手がよさそう。カラー液晶モニター(3インチ)の表示も美しく、必要な情報を直感的に把握することができる。

そして、本体の左上に注目していただきたい。これは衛星通信用のアンテナであり、すなわちGPSMAP 66iは、イリジウム衛星通信を利用することができるのだ。

電話をかけるための携帯電話が、手のひらに収まるパソコンともいえるスマートフォンへと移り変わっていったように、ハンディーGPSは、もはや“GPSプロッター機能の付いた衛星通信端末”へと進化しているのである。

GPSMAP 66iでは、衛星通信機能を利用して(別途サブスクリプション契約が必要)、テキストメッセージや位置情報を送ったりと、いろいろなことができるもよう。マリンレジャー歴30余年、緯度・経度の文字しか表示されない初期のGPSでナビゲーションを実践していたこともある筆者としては、ぜひこの最新モデルを使ってみたい!──ということで、販売元のガーミンジャパンさんにお願いしてGPSMAP 66iをお借りし、実際に海で使ってみることにした。

 

シティマリーナヴェラシス(神奈川県横須賀市)でレンタルボートを借りて、いざ出航!

 

この日の目的地は、東京湾をはさんで対岸の房総半島、保田漁港。ヴェラシスを出航したあとは、浦賀水道航路の入り口で変針して、保田を目指すルート(上画面のピンク色のライン)を事前に設定した。

ちなみに、別売りの「ニューペックデータカード」を使えば、ニューペックの詳細なデータ(全国版)はもちろんのこと、沿岸の潮汐表や海底地形図(全国版)も利用できる。日本全国の沿岸部を完全にカバーし、2m/5m/10mの等深線データや定置網、漁具、航路標識なども表示されるとあって、安全なナビゲーションの実現に大きく貢献してくれるはずだ。

 

湾の外に出る前に、いま一度コースと現在位置を確認。海や山などアウトドアでの使用を想定しているため、直射日光の下でもクリアな画面を確認することができる。防水性能も高いから(IPX7)、海の上でも波しぶきや雨を気にせず使うことが可能だ。

 

こちらはGPSMAP 66iの画面をキャプチャしたもの。ちょうど浦賀水道航路の入り口にある緑ブイの南を通過しているところだ。その右の▲マークが自船、そこから出ている水色のラインが自船の航跡。この日は風が強く、また大型船が何隻か通過していたため、予定していたルートよりも南を走っていった。

 

画面表示は、いろいろと切り替えることが可能。この画面では、コンパスで針路を表示するほか、速度(SOG:対地速度)や目的地への到着予想時刻などの情報が手に入る。

 

さて、予定コースのおおよそ半分まで来たので、陸上でワタクシの安否を気遣う(?)人々に向けて、メッセージを送ってみることにする。

 

GPSMAP 66iは、別途、サブスクリプション契約を結ぶことで、イリジウム衛星を介した衛星通信の利用が可能となる。このガーミン独自の衛星通信機能を、「InReach(インリーチ)」と呼んでいる。

通信プランは「Safety」「Recreation」「Expedition」の3種類が用意されていて、利用できる機能が異なっている。月額利用料は、例えばスタンダードのSafetyの場合で11.95USD。詳しくはガーミンジャパン公式サイトをご覧いただきたい。

 

サブスクリプション契約を結ぶと、GPSMAP 66iからテキストメッセージを送ることが可能になる。ユーザーが任意に文字を打ち込むテキストメッセージは、プランの種類によって、1カ月間に送ることができる数が異なる。一方、あらかじめ用意されているプリセットメッセージであれば、いずれのプランでも無制限に送ることが可能だ。

送り先は、その都度メールアドレスを打ち込んでいくこともできるが、海の上では面倒このうえない。そこで、あらかじめ「Gamin Explore」というウェブサイト(アプリ)において自身のアカウント登録することで、たとえばメールアドレスを登録しておいたり、航海情報などのさまざまなデータを管理したりといったことが可能となっている。スマホやパソコンでルート作成したデータを、このGarmin Exploreを通じて、GPSMAP 66iなどの機器で利用(ペアリング)することもできる。

 

Garmin Exploreで、まずは「連絡先」情報を入力してみた。GPSMAP 66iを使うワタクシを「舵オンラインスタッフ」として登録。また、「連絡先」には、よく連絡を取る相手のメールアドレスを入れておくことができる。

 

相手とメッセージを固定し、「プリセットメッセージ」としてワンプッシュで送信することが可能(画面左)。洋上で、今ここにいるということを伝えたかったので「now here」という、ごく簡単なワンフレーズのメッセージを設定しておいた。
ちなみに、GPSMAP 66iは日本語対応もしているので、日本語でのメッセージのやり取りも可能となっている。

 

さて、ここで洋上の現場に戻ってみよう。GPSMAP 66iのメニュー画面に表示されるアイコンの中から、「メッセージ」の項目を選んで進む。

 

事前に指定しておいたプリセットメッセージのうち「1」を選んで、送信してみた。

 

こちらが相手先に届いたメールの画面。「now here」という事前にセットしておいたメッセージ、それに送信した位置の緯度・経度の数字も記載されている。

 

メールに添付されていたURLを開くと、送信者の位置情報がマップ上に展開される。「ユーザーが今ここにいる」ということが一目でわかるから、受け取った人も安心できるはず。メールでも、緯度・経度の数字は届くものの、こちらのリンク先でのマップ表示のほうがはるかに便利。

また、地球全体をカバーする衛星通信(イリジウム)を利用しているから、沿岸から離れた携帯電話の電波の圏外でも、問題なく通信ができるのは心強い。また、海の上にいるときでも、ワンプッシュで送信できるので、とにかくストレスフリー。

さらに、トラッキング機能を使えば、いちいちボタンを押して送信しなくても、指定した相手に対して、一定の間隔でGPSMAP 66iユーザーの位置情報を自動送信することも可能だ。

 

これらは日常の通信ということになるが、このGPSMAP 66iは、さらにすごい機能を持っている。海の上で万が一の非常事態が起きたとき・・・そんなシリアスかつ危機的な状況に陥った時には、自身の非常事態の発生を知らせるSOS信号を発信することができるのだ!

 

本体の右側には「SOS」の記載が見られる。いざというときには、ここを押せばいいのか?!

 

「SOS」と書いてあった部分は、誤発信や誤動作を防ぐためのカバー。これを開けると、中にボタンがあるので、緊急事態の場合にはコレを押せばOK。

ボタンを押すと、民間救助組織であるGEOSの国際緊急救助調整センター(IERCC)に対して、インタラクティブにSOS信号(位置情報含む)が発信される。IERCCがSOS信号を受信すると、ただちに各国の救助機関に、その旨を通報するというシステムとなっている。

“インタラクティブに”という部分を補足すると、SOS信号を受診したIERCCは、SOSを発信したユーザーに対して、メッセージの送受信を通してやり取りを続け、最寄りのエリアの救助機関とも連携し、すみやかに救助・捜索体制を整えてくれるというものだ。

海の上での緊急遭難信号を発信するツールとしては、イーパーブやPLB(個人用イーパーブ)といったツールがあるが、これらはいずれも無線局を開局しなければならないというハードルがある。免許や開局手続きを必要とせず、緊急時のSOS情報の発信ツールを使えるというのは、ユーザーにとっては非常に魅力的といえるのではないだろうか。

 

それにしても、GPSプロッターとしての機能を持ち、そして衛星を使った通信ツールとして、さらには緊急事態のライフラインとしての機能まで備えているとは・・・。いったい一台何役なのか? おそるべしGPSMAP 66i!

 

陸上にメッセージを送ることもできたし、安心してクルージングを楽しんでいたら、目的地の保田が近づいてきた。

 

小さな岩礁の存在を確認し、南側を通っていく。目標となる物標もきちんと表示されるので、初めての港でも安心して入っていくことができる。

 

無事に保田漁港(きょなん・ほた海の駅)に到着。実は台風や長雨の影響で、当日の東京湾には大きな流木やゴミが多数浮いており、ぶつかってしまえば船体やプロペラにダメージを受けてしまうことは必至。衛星通信機能(インリーチ)やSOSボタンも備えているGPSMAP 66iが、気持ち的な部分でお守り代わりになっていたことを、あらためて告白しておこう。

 

航跡を残しておいてくれるので、あとで振り返ってみても面白い。港に進入したあとは、こんな感じで桟橋に舫いを取った。

 

保田漁港といえば、新鮮な海の幸が楽しめる漁協直営の飲食店「ばんや」が人気。GPSMAP 66iを片手に記念撮影!

 

「漁師のまかない丼」(写真手前)を堪能。いやあ最高です!

ちなみに、GPSMAP 66iの電源を切っておくのを忘れて、ばんやで海の幸を楽しんでいたので、あとで航跡を見たら、ボートを離れて食事に行って帰ってくるまでの足跡もしっかり記録されておりました(汗)。

 

おなかもいっぱいになったところで、予報では午後からは風がさらに上がって来る前に、ヴェラシスに向かっての帰路に出発。往路の航跡が画面に残っているので、それをトレースするように進んでいく。

 

小1時間ほど走って、無事にヴェラシスに帰着。こちらが本日の航跡です。

 

到着したところで、さっそくテキストメールを送信。プリセットメッセージではなく、今回は「今到着しました」とテキストを入力し、位置情報とともに、陸上にいる家族にメッセージを送っておいた。テキストは、1回に最大180字まで送ることができる。

 

ワタクシからのメールの着信に、相手はすぐに気づいてくれなかったようだが(残念!)、2時間ほどすると、GPSMAP 66iにメール着信を知らせるアラームが。こんな感じで、スマホや携帯と同じような感覚でメールのやりとりができる。

今回は、GPSMAP 66iのハンディーGPS以外の機能の部分・・・衛星通信を利用した機能について、特にあれこれ試してみた次第。以前に比べれば、だいぶカバーエリアは広がったとはいえ、陸から離れたエリアを航行するような場合には、携帯電話が利用できないケースは多々ある。そんなエリアを航行する場合でも、何か別の、確実な通信手段を持っていることは、安全航行を実現する上ではとても重要なことだといえるだろう。しかも、もしもの場合には、民間の救助組織に対してSOS信号も送ることができるのだから・・・。

もちろん、「ボートに据え置き型のGPSプロッターが付いている」「ハンディーGPSは、すでに持っている」といった方も少なくないと思う。そんな方には、GPSMAP 66iからGPSプロッター機能を除き、衛星通信機能のみに特化した「インリーチ ミニ」という製品もある。

 

こちらがインリーチミニ。衛星通信機能を利用する際のサブスクリプション契約の内容や料金は、GPSMAP 66iの場合と変わらない。

 

 

全地球をカバーする衛星通信網を利用し、アウトドアエレクトロニクスツールとして、マルチな機能を備えたガーミンの「GPSMAP 66i」。
たかがハンディーGPSと、あなどることなかれ。常に危険と隣り合わせの海という自然のフィールドで活動する私たちにとって、これ1台あれば、もしものときにもサポートしてくれる心強い相棒となるに違いない。

 

(文=舵社/安藤 健 写真=舵社/宮崎克彦)

 


ガーミン「GPSMAP 66i」

●本体サイズ:16.3×6.3×3.5cm
●ディスプレー:3.8×6.3cm(3インチ)
●解像度:240×400ピクセル
●ディスプレータイプ:半透過型カラーTFT
●重量:241g
●バッテリー:内蔵のリチウム電池
●稼働時間:10分間のトラッキング時に最大35時間、30分間のトラッキング時(エクスペディションモード)に最大200時間
●防水性能:IPX7
●内蔵メモリ/履歴:16GB
●インターフェース:高速USBおよびNMEA0183に対応
●地図:日本詳細地形図2500/25000(オプションのニューペックカードあり)
●価格:98,780円(税込み)

 

(問い合わせ)
ガーミンジャパン
https://www.garmin.co.jp/

 


 

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