海上での共通の通信手段
携帯電話は便利だけれども、必ずしも万能というわけではない。例えば、海の上で目の前に船がいたとしよう。でも、相手の電話番号がわからなければ、どうすることもできないのである。このような場面では、相手とのコミュニケーションが取れないと、ときにシリアスな事故につながる可能性すらある。
そこで、世界中の海を走る船舶に広く利用されている共通の通信手段をご存じだろうか。それが「国際VHF」だ。
SOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)で、国際航海に従事する旅客船および総トン数300トン以上のその他の船舶に、そして日本では船舶安全法により100トン以上の日本船舶に、DSC機能の付いた国際VHFの搭載が義務付けられている。
国際VHFは無線機器だから、電波の届く範囲内にいる相手に対しては、誰でも呼びかけることが可能。呼び出し用の16チャンネルを常時聴取し、会話をする際には別のチャンネルに移動する。安全航行のためには必須のツールであり、世界に目を向けるとプレジャーボートでも搭載しているのが当たり前。もちろん、危険の回避以外にも、さまざまな情報を得たり、また仲間とのやり取りやヨットレースなど、日常的に幅広く使える通信機器なのである。
多彩な機能を備えた新製品が登場
そんな海の通信手段のスタンダードともいえる国際VHFだが、このほどアイコムから新製品「IC-M510J」がリリースされた。25Wの据置きタイプの国際VHFで、従来製品にはない多彩な機能を備えている。
上の写真が本体。薄型となっており、設置場所を選ばないのがうれしい。カラーディスプレーは、従来機種に比べて大型で、ほぼ180度の視野角を実現。ナイトモードに切り替えれば、夜間や薄暮の際の視認性も高い。
そして驚くことに、AIS(船舶自動識別装置)の情報を受信し、ここに表示してくれる。機器本体にAIS受信機を内蔵しており、周囲のAIS搭載船舶の動静がつかめるので、国際VHFの機能と合わせて利用すれば、さらに大きく安全に寄与することは間違いない。
こちらは簡易ナビゲーション機能。ウェイポイントやAISターゲットを選択すると、カーナビのように目的に向かって導いてくれるというものだ。
国際VHFがスマホで使える
マルチな機能を備えた「IC-M510J」、さらに注目すべきは、スマートフォン(スマホ)での通話や聴取も可能だという点だろう。
セッティングは実に簡単。スマホに専用の無償アプリ(RS-M500)をインストールすればOK。これで、フネに設置したIC-M510Jの操作と通話が可能になる(DSC機能全般の操作を除く。使用には第二級海上特殊無線技士免許以上の従事者資格が必要)。なお機器1台に対して、最大で3台までのスマホを連携することが可能だ。
据置型の国際VHFは、ヨットならチャートテーブル周り、パワーボートならステアリング周りに設置されるケースが多いが、この機器を導入すれば、例えば船室やフォアデッキ、フライブリッジなど、機器本体から離れた場所にいる人、しかも複数の人が国際VHFの聴取や通話ができるので、使い勝手抜群。また、機器本体とスマホ間では、インターフォンとしての利用もできて便利だ。
本機と別売りのインターフェースボックス(CT-M500)を無線LANで接続すると、NMEA2000に対応した外部機器に対して、位置情報やAIS情報の入出力が可能。CT-M500に拡声器を接続すれば、RXヘイラーやヘイラーといった拡声機能や、汽笛機能を使うこともできる。
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海に出る船舶の世界常識である通信機器に、さらに多彩な機能が加わったIC-M510J。まさに、マルチに使える国際VHFと呼ぶにふさわしい。
(文=舵社/安藤 健 写真提供=アイコム)
【主な仕様】
●サイズ:高さ110mm×幅175mm×奥行き53.6mm ●重量(本体のみ):約730g ●国際チャンネル数:64 ●電源電圧:13.8V DC(11.7~15.9V DC) ●消費電流:送信(25W出力)5A以下、受信(最大音量時)4.0A以下 ●防塵・防水レべル:IP68 ●付属品:スピーカーマイクロホン、マイクハンガー、DCケーブル、マウントブラケット ●価格:77,000円
(製品に関する問い合わせ)
アイコムサポートセンター
TEL: 0120-156-313(平日9:00~17:00)
https://www.icom.co.jp/lineup/products/IC-M510J/
(掲載商品に関する販売のお問い合わせ)
KAZIオンラインショップ シープラザ
https://www.seaplaza.jp/
E-mail: seaplaza@kazi.co.jp
TEL: 03-3434-0941(平日9:30~17:30)
※3月28日追記
上記商品は、新型コロナウイルスおよびロシア・ウクライナ情勢の悪化により、半導体関連部材の供給が遅れ、納期が未定となっています。
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