3月12日、東京都千代田区の海運クラブにおいて、日本マリン事業協会の記者発表会が開催された。
この記者発表会は、毎年、ボートショーの開催告知とともに、一般メディアを中心とするマスコミに向けて、日本のマリン市場の動向などを説明する恒例行事。今回は、新型コロナウイルスがどのように影響を及ぼしたかという点を中心に、2020年の市場動向などが発表された。
日本マリン事業協会の柳 弘之会長は、冒頭のあいさつにおいて、コロナ禍における世界的な“価値観の転換”に触れ、【1】さまざまな面におけるパーソナライズ(個別化)が進み、モビリティーにおいてもその方向の需要が増加したこと、【2】密を避け、家族や親しい人々とともに、安全・安心な時間を過ごすアウトドアへのニーズが増加したこと、の2点を説明。
そうした中で、家族と海で遊ぶということに注目が集まり、日本でもその傾向は非常に強く、2021年に入ってもそうしたトレンドが続いており、コロナ禍が国内マリン市場においてはプラスに働いている、と述べた。
こうした動きは、数字で見た市場の動きにも明確に反映されている。
同協会の吉海浩一郎専務理事による昨年のマリン市場の動向の説明では、ボート免許取得者数、レンタルボート会員数、新艇・中古艇の販売/流通数が増加しているデータが示され、非日常を体感したいというニーズから、釣りやマリンレジャーに参入する新規層、潜在関心層が増えていること、また、既存ユーザーの活動が活発化していることが説明された。
まず、国内マリン市場の先行指標となるボート免許取得者数は、リモートワークの導入などで時間的に余裕ができたことや、最初の非常事態宣言に合わせた一時金が給付されたことなどの要因により、昨年6月以降、6カ月連続で前年を大きく上回る結果となり、15年ぶりに7万人弱の規模に急回復。そうした新規免許取得者が実際に海へ出る際の入り口ともなっている会員制レンタルボートクラブの入会者数も、ほぼ同様の伸びを示していることから、マリンレジャーへの新規参入者が大きく増えていることが見て取れる〔資料1〕。
〔資料1〕
また、2020年7~12月は、レンタルボートユーザーの利用回数、既存オーナーの出艇回数も増加。特にレンタルボートの総利用回数は過去最高の値となっており、コロナ前からレンタルボートを利用していた層も含め、アクティブに海に出ていることが明らかとなっている〔資料2〕。
〔資料2〕
新艇の新規販売数、中古艇流通数も、2020年後半は前年を上回る傾向にある。年間を通しての新規販売数こそ前年をわずかに下回ったが、これは、コロナ禍による工場の一時操業停止や生産調整、部品供給の滞りといった影響によるもの。全体としては需要に供給が追いつかず、バックオーダーを抱えている状況で、今年は各メーカーとも生産が進み、販売数も延びることを期待しているという〔資料3〕。
〔資料3〕
こうした好況を受け、日本マリン事業協会では、2017年に策定した「マリンビジョン2026(新10年ビジョン)」に基づき、マリンレジャー参加人口100万人、ボート免許新規取得者10万人という目標達成を目指し、特に若者やファミリーを中心とした新規参入層や潜在関心層に向けて、新たなかたちのボートショー開催をはじめとする各種情報発信を充実させ、体験試乗機会への誘導を図るといった取り組みを行っていくという。
吉海専務理事によれば、「2020年の新規ボート免許取得者は、従来の傾向とは異なり、男女ともに30代~50代という実行力のある世代が増えているというデータがある。また、アメリカなど海外でも、昨年はボート購入者のうち『初めて購入した』という割合が例年になく高い値を示しており、コロナ禍という特殊な環境下で、新たな楽しみとして『海で遊びたい』という層が増えているのではないか。こうしたニーズをキャッチアップしていくことが重要だと考えている」とのこと。
コロナ禍という世界的危機を、マリンレジャーの定着、底辺拡大につなげる大きなチャンスにしようとする、積極的な姿勢が伝わる記者発表となった。
※この記者発表会で説明された「ジャパンインターナショナルボートショー2021」については別記事にて紹介します。
(文=舵オンライン編集部)
あわせて読みたい!
●「ジャパン インターナショナル ボートショー 2021の概要」に関する記事はコチラ