「カイ&エリ」こと、山本 海さんと絵理さんが、米・メイン州へ飛ぶ。それは、シーマンシップを競う大会「アトランティック・チャレンジ」に参加するため。その様子を短期集中連載で紹介する。ボストン空港に降り立ったカイ&エリは、「和船」と書かれた帽子をかぶったアメリカ人、ダグラスさんに出会った(編集部)
◆タイトル写真:ランス・リーさんが創設した造船学校「アトランティック・チャレンジ」の母体となる学校「アパレンティスショップ」、若者から趣味の造船までさまざま
photo by Kai Yamamoto |
陽気なダグラス・ブルックスさん。“和船”のキャップに“舟人”のTシャツ!
“I can’t change the direction of the wind,but I can adjust my sails to always reach my destination”
「風向きは変えられないが、セールを調整し、いつでも船を目的地に向かわせることができる」
──この言葉を掲げ、若者にシーマンシップを伝える団体「アトランティック・チャレンジ」。2年に一度、各国のチームが集まりシーマンシップを競う大会が開かれるという。日本にも学びの場所と、世界につながるチームを作りたい。 カイ&エリこと、スピリット・オブ・セイラーズの山本 海と絵理が、日本人として初めて参加してきた。
アパレンティスショップの前の桟橋を歩く。眼前に広がる海面には、多くのディンギーが係留され、沖にはキールボートが沖掛けされていた
渡りにたらい舟
空港に到着した僕ら2人、カイとエリ(山本 海と絵理)。
初めてのアメリカ大陸。少しの緊張と、ワクワクが止まらない。空港で売ってるスナック菓子のサイズやドーナツにも「アメリカだね!」なんて興奮するほど舞い上がっている2人の前に現れた大柄な男性。帽子には「和船」の漢字、Tシャツにも漢字。アメリカで僕らを迎えてくれたのは佐渡島の「たらい舟」をはじめ日本の和船を研究し、実際に建造してその技術をアメリカに紹介しているダグラス・ブルックスさんだ。
アメリカで和船に詳しい方に出会う。ちょっとややこしいこのシチュエーションも初めてのアメリカ大陸には渡りに船、いや、渡りにたらい舟だ。ダグラスさんはボートビルダーとしてもこの大会を運営する団体を創設したランス・リーさんとも親交があり、今回日本からのセーラーが初めて大会に参加するということで、案内役を買って出てくれたのだ。
ダグラスさんの車でボストン空港を後に3時間北へ。車内では船の話題で盛り上がる。ダグラスさんは和船の話を、僕は西洋帆船の話をしながら車は和やかにアメリカのハイウェイを時々道を間違えながら進んでいく。
「まずは、このアトランティック・チャレンジが開かれたきっかけとなった造船学校を見に行こう。創設者のランス・リーにも紹介するよ」とダグラスさん。長旅で少し眠かったけど、その提案には2人で大賛成。ロックランドにあるこの大会の母体となる造船学校アパレンティスショップ(Apprentice shop/見習いの工房という意味)という専門学校に到着する。岩と針葉樹に囲まれた静穏な湾に面した街、ロックランド。名前の通り、近くの島で良質な石が取れたのでここの石はアメリカの発展にとても貢献したそうだ。
アメリカ建国当時からの港町には今でも伝統的な街並みが残り、水辺には絵本に出てきそうな立派な木材建築の家が残っている。
(次回へ続く)
●Apprentice shopを見る
「見習いの工房」という意味を持つ、ダグラスさんとアパレンティスショップを拝見した!
作製途中のディンギー、生徒は一人一人自分で目標となる船を決めてプロジェクトとして造り上げていく
クルーザーや木造ディンギーのレストアを行っているヤードもあり、おじさんたちが集まって楽しそうだった
アパレンティスショップの中には大型の木工機械から必要な工具は全てそろっている。創設した当時はこれらの機械は全て寄付や使わなくなったものを譲り受けてそろえたそうだ
●ロックランド名物・ロブスター!
ダグラスさんと奥さんの案内で、地元で有名なロブスターを食べに出かけた!
巨大なロブスターにトウモロコシ、コールスローサラダ、フィッシュ&チップスなどで20ドル前後。バターソースでいただきます
左からダグラスさん、エリ、ダグラスさんの奥さん。美しいロックランドの入り江を眺めながら。天気がよければもっとよかった!
ロブスターにかぶりつくエリ。ツメの先まで身が詰まっていておいしい!!
ダグラスさんの奥さん(左)とロブスターの顔ハメ看板。顔の部分が大きい(笑)
(文・写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ 写真=山本絵理/スピリット・オブ・セイラーズ)
※本記事は月刊『Kazi』2025年2月号に掲載されたものを再編纂しています。バックナンバーおよび電子版をぜひ
月刊『Kazi』2025年2月号を購入する!
山本 海
Kai Yamamoto
セイルトレーニング帆船〈海星〉勤務後、国内外の数々の帆船で活躍。2015年スピリット・オブ・セイラーズを設立。ISPA公認スクールを開講(沖縄、三重など)。「DIY無人島航海計画」を主催。マリンジャーナリストとしても、活躍中。現在、マリーナ河芸やシーガルヨットクラブを拠点に活動中。 https://spiritofsailors.com