「スパイキ」という道具を知っていますか?
ヨット乗りなら誰もが知っている、ロープワークに使う先のとんがった固い棒です。中が空洞になっていたり、断面がU字だったりとさまざまな形がありますが、古来からのスパイキは巨大な千枚通しよろしく、棒状で先が尖った形状をしています。
大きさもまちまちで、長さ10cm程度の小さいものから、30cmの大きなものまで。数本のストランドで編まれたロープをほどき、結びなおしたり、さらにはロープの端の処理や、結ばずにスプライスによって輪を作ったりするときに使います。
本来のスパイキは鉄製が多く、特に帆船乗りたちはそれぞれのマイ・スパイキを腰から下げて作業にあたります。30cmの鉄製のスパイキがいつも腰にある・・・。はっきりいって、マジで重い! そんな帆船乗りたちが憧れたスパイキ・・・それが、カジキの吻(フン)という部分、まるでツノのように前方に突き出たアレで作ったスパイキなのです!
今回、"日本一楽しい航海をする帆船乗り集団”「スピリット・オブ・セイラーズ」の代表、山本 海さんから、カジキの吻製スパイキの作り方を教えてもらいました! マニアックですすみません(笑)!
軽くて強い、そして使いやすい。帆船乗り御用達のカジキの吻のスパイキの作り方、はじまります~!
photo by Shinnosuke Sugimoto
釣り上げられたクロカジキ。まるで槍のような吻が特徴的。これがスパイキになるなんて!
これが、皮を剥いで乾燥させた吻。まるでヤスリ・・・というより、ヤスリそのもの
切断したカジキの吻を1 ~2カ月海水に漬け皮と肉をはがし、炎天下で2~3日乾燥。作業はここから開始。必要な道具は、各種紙やすり、バフ、ランダムサンダーなど。その工程はヤスリがけに尽きる。ひたすら磨こう!
① 80 番→ 240番のやすりを使い、サンダーで粗削り
② とりあえず、強力なトゲトゲを削り取ってみる
③ 紙やすりは、320 番→ 600 番と番手を上げていく
④ 最終的に1,000番の紙やすりを使用。磨く!
⑤ ランダムサンダーにバフを装着。バフがけする!
⑥ 磨いた吻の表面に蜜蝋を塗り込む。10回以上塗った
⑦ 無心で削り、無心で塗りこむ。艶が出てきた
⑧ 巻き結びを繰り返し、サービング。持ち手は削らず
⑨ 一巻きごとにマーリンスパイキヒッチで締める
⑩ エンドは飾り巻きにして持ち手を作る
⑪ こちらは麻ひも。火で焼き、蜜蝋をしみ込ませて・・・
完成です!
上から、無垢の吻、麻ひもサービング、化繊ロープ・サービング。すばらしい出来です
さあ、あなたもカジキの吻(ふん)でスパイキを作ってみよう!・・・って、そもそもカジキの吻なんてどうやって手に入れるのよ(笑)!
山本 海さんは、同じく帆船乗りの先輩で遠洋漁業に出ていた迫田 央さんから「 カジキの吻を手に入れたから、作ってみなよ」と渡されてトライしたとのこと。迫田さんもロープワークの達人で、カジキの吻のスパイキをこよなく愛する帆船乗りの一人。なんだか、海の男って豪快ですわ。
あなたももしカジキの吻を手に入れたなら、ぜひともトライしてみてください。
気になるスパイキの使い方については、後日舵オンラインで紹介します!
(文=Kazi編集部/中村剛司 写真=山本 海/スピリット・オブ・セイラーズ)
※関連記事は月刊『Kazi』2021年1月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ
カジキのツノ作り方を教えてくれたのはこの人!
2002年、〈海星〉で帆船キャリアスタート。2006年~2009年にかけてヨーロッパ、東南アジア、オセアニア地域で帆船5隻にクルーとして乗船。帰国後、タンカー勤務(航海士)を経て、2013年〈みらいへ〉へ。後、2015年、スピリット・オブ・セイラーズ設立。ISPA公認インストラクター。名古屋と小豆島を中心にセーリングカッターでも活動中。
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