自分で釣った魚はそれだけでおいしいけれど、仕立てることでもっともっとおいしくなる。月刊『ボート倶楽部』2019年11月号の特集「魚のうまみを引き出すひと手間」では「究極の魚仕立て法 話題の“津本式”を大解剖」として、話題の津本式を紹介した。ここではその内容を一部抜粋して、津本式で魚をおいしくする方法を解説します。
津本式とは?
耐圧ホースや専用アイテムを用いて、魚を適切に締めたり、血を抜いたりして、長期熟成に適した状態にするためのテクニックのこと。宮崎県在住で、魚の販売などに携わる津本光弘さんが考案した。
津本式は、大きく分けて、「締め」「血抜き」「熟成」から構成されており、なかでもホースを用いる血抜きは、「究極の血抜き」と名付けられ、これをするだけでも、食味は大きく変わるという。
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2種類の血抜き
いよいよ、津本式の真髄である血抜きの世界に入っていく。
津本式には2種類の血抜きがある。究極の血抜きとノズルを用いた血抜き(以下、ノズル血抜き)だ。
究極の血抜きとは、裂いたエラに耐圧ホースを入れて水を流して行う血抜き。これがメインの血抜きとなる。この血抜きで必要なのは、市販のホースだけなので、どなたでも気軽にトライできるはずだ。究極の血抜きをするだけでも大きく味が変わるそうなので、ぜひやってみてほしい。
一方、ノズル血抜きは、ホースと接続した津本式ノズルを尾側の動脈に差し込み、水を送り込んで行う血抜き。究極の血抜きでは血を抜ききれないことがあったため、究極の血抜きを補完することを目的に開発された。
両方の血抜きを行う場合の順番は、ノズル血抜き→究極の血抜き。この順番には理由がある。
「最初に、太い血管側から細い血管に向かって水を流すと、細いところで水が引っかかって抵抗になるでしょ。すると、もし釣ったときに魚が暴れて内出血した箇所があれば、そこから水が漏れて、血と水が体内に入っていってしまうんです。それを防ぐために、最初に細い血管側から太い血管に向かって水を流すようにしています」
津本さんの処理場に置かれた津本式アイテム。まるで理科の実験器具みたいだ
また、釣って(締めて)からしばらく時間がたち、心臓が止まった魚を血抜きしても意味がない、あるいは、血抜きできないのでは、と考える人もいるかもしれないが、津本式は水圧を使った処理のため、しっかりと血を体外に排出できると考えられている。
ちなみに、スーパーマーケットで買ったような、死後数日たった魚でも、血管内の洗浄という観点から見れば、まったく無意味というわけではないとのこと。
これらの血抜きは、一般家庭の水道の水圧で問題なく行うことができ、また、水道水を使うことで、雑菌の繁殖を抑えつつ、浸透圧の違いを利用して魚の赤血球を破壊することが可能となる。
と、いろいろと書いてみたが、まずは実践してその効果を体感してみてほしい。どんなにズボラな人でも、尾の近くの背骨を断ち切り、少し切ったエラ膜にホースを差し込んで水を流し込むくらいならできるはずだ。仮に熟成を目的としない場合でも、血抜きをするだけで味は大きく違ってくるので、ぜひお試しあれ。
エラ膜を切る。動脈は背骨の下側にあるので、刃で背骨の硬さを感じながら下側を切ると血がどっとあふれてくる。究極の血抜きを行う場合は、片側のエラ膜をホースが通る分くらい切るだけでいい
ノズル血抜き
ノズル血抜きは、背骨の下側にある動脈に、サイズが合った津本式ノズルを差し込んで行う。送水しすぎると、魚体内に水が漏れることがあるので要注意
次第に、魚体の尾側半分が硬くなり始めた。触ってみて、硬く感じられたら終了だ
究極の血抜き
上の写真のように、エラ膜の内側にホースを差し込んで、動脈に水を送り込むのが「究極の血抜き」だ。うまくいけば、断ち切った背骨の動脈から勢いよく血が混じった水が吹き出す(上の写真)。ちなみに、このように水が吹き出さなくても、血抜きはできている
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半身をおろしたあと、尾側から動脈に水を流すと漏れ出る箇所が。内出血があると、このようにして体内に水が浸入する
(文=BoatCLUB編集部/幸野庸平)
津本光弘(つもと・みつひろ)
1973年生まれ。大阪府大阪市出身で、現在は宮崎県在住。バス釣りがメインだが、友人のフネでボートフィッシングに出かけることも
https://tsumotoshiki.com/
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