ようこそ、国際VHF無線の総合窓口へ!──と迎えてくれたのは、日本マリン無線協会の高野光哉さん(タイトル写真)。
日本マリン無線協会・東京支局(Base of Tokyo)は、2020年4月に天王洲アイル(東京都品川区)にオープンした施設。同協会は、船の無線に関わる業務全般を行う組織で、一般商船やプレジャーボートの動向、マリンインベントの活動などをチェックし、海上保安庁とも連携して、それぞれの情報の橋渡しをしながら、海の安全のために重要な役割を担っている組織です。その活動内容は、1月5日発売の『kazi』 2月号で詳しく紹介していますので、ご覧ください。
さて、東京支局の局長である高野さんは、たった一人、水上オートバイで世界の海を駆け巡ってきた経験も持つつわもの。「海洋冒険家 Captain Takano (キャプテンタカノ)」と呼ばれ、マリン業界ではよく知られた存在です。実は無線にも詳しく、国際VHFを使いこなすのはもちろん、修理、配線、基地局も建ててしまう無線のプロフェッショナルです。
その高野さんいわく「海に繰り出す者には国際VHFは必須アイテム。海外では船に国際VHF無線機がついているのは当たり前。VHFがついていない船には乗るな!と言いたい。なぜならVHFは、世界の海上で航行する、すべての船舶同士で交信ができる唯一の手段だからです」とのこと。
携帯電話があるから大丈夫ですって? とんでもない。近くにいる船に連絡を取ったり、トラブルの際に危機を伝えたくても、携帯電話では相手の電話番号がわからなければ交信できません。
不測の事態に対応でき、他船と交信できるのは、国際VHF無線機の「チャンネル16」だけなのです。
では、日本マリン無線協会・東京支局への簡単な道案内を。
浜松町駅(東京都港区)から羽田空港に向かうモノレールに乗り、1駅目の天王洲アイル駅で下車。駅直結のシーフォートスクエアビル口の出口を出ると、たった一駅なのに、浜松町とはまったく違うお洒落な空間が目に飛び込んできました。写真の階段の前の階段を降り、1階の海側の通路を羽田空港方面に進むと、日本マリン無線協会のオフィスがあります。
全面ガラス張りの大きな窓から、たくさんの無線機と大きな地図画面が見え、前を通る人がみんなのぞいていきます──見ますよ、のぞきますよ。いったい何をやっているんだろう? と思いますから。
中に入ると目につくのは、東京湾を映した巨大な3台のディスプレー。AISや国際VHFを搭載したたくさんの船が行き来している様子がわかり、それはまさに海の管制室のイメージ。東京湾だけでなく、日本中のAISや国際VHFを搭載した大型船舶や漁船、プレジャーボートの運航がここから手に取るようにわかります。
無線機のメンテナンスや修理も、日本マリン無線協会の大切な業務の一つ。マリン用だけではなく、アマチュア無線や陸上無線など、多くの機材の修理を引き受けています。
さて、いよいよ、高野さんオススメの国際VHF無線機は何か、聞いてみましょう。それは、この2機種です‼
1台目は、携帯型の国際VHF無線機、スタンダードホライゾン 「HX890J」(左)。防水仕様で水に浮くハンディー無線機です。出力5ワットで見通しのある船舶間で交信できます。
ハンディー機ながら、デジタルデータ通信ができるDSC機能を装備しているのが一番の特徴。DSCを使って、ボタン一つで遭難警報を発信できる「ディストレスボタン」も備えています。第3級海上特殊無線技士以下の資格では通常のDSC運用はできないのですが、非常時には、3級以下の資格でも、この「ディストレスボタン」を使うことが可能。いざというときは、ワンプッシュで簡単に遭難警報を発信し、海上保安庁や付近の船舶に知らせることができます。
また、水に浮き、ストロボライトも光るので、落水者が出たときにボタンを押して水中に投入したり、船体放棄するときにライフラフトに持って乗り移ることもできます。ただ通話するだけでなく、とっても安心な機能がプラスされた一台です。
2台目は、船舶固定型の国際VHF無線機、スタンダードホライゾン「GX6000J」(右)。第2級海上特殊無線技士以上の資格が必要な出力25ワットの据え置き機です。
おすすめの理由は、AIS受信機能を搭載している点。AIS表示機能を持ったGPSプロッターなどに接続すれば、画面上に付近の船舶の情報を表示できます。また、プロッターに接続しなくても、付近の船舶の情報を本体のディスプレーで確認することも可能。船体に書かれた船名が読み取れない夜間でも、目の前に迫った船の名前や進路がわかりますので、直接チャンネル16で呼びかけることができます。もちろん遭難警報を発信できる「ディストレスボタン」も備えています。
緑色の矢印が「ディストレスボタン」。万が一の遭難など、不測の事態のときにはこの赤いボタンをプッシュ! すると、この信号を受信した付近の船舶では、国際VHF無線機(DSC機能付き)のアラームが鳴り、ディスプレーに遭難船の位置情報と認識番号(MMSI番号)を表示。同様に、AISのプロッター画面にも遭難船の情報が位置とともに表示されます。一定以上の大きさの船舶には国際VHFとAISが搭載されていますので、見通し距離にいるそれらの船には必ず遭難信号が伝わるというわけです。
ディストレスボタンを押したあとは、続けてチャンネル16で遭難の状況を伝えてください。海上保安庁のアンテナがカバーしているエリアなら、直接通話することも可能です。
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今回、日本マリン無線協会の高野さんの話を伺って、国際VHF無線の大切さを実感しました。この1台で命を守ることができる可能性が高まるのです。船にはVHF無線機を備え、安心して安全に、思いっきり海と船を楽しみましょう!
また、日本マリン無線協会のオフィスを訪れて、実際に無線機を手にとって、質問をしてみるのもお勧めです。
次の機会では、無線での応答の仕方について伺ってきます。機械音痴の私にわかるかしら? ちょっと心配……。
(文・写真=舵社用品事業部/大山英里子)
この商品は、舵社の通販サイトでお買い求めいただくことができます。
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