1月20日(水)で、スタートから72日が経過した。
首位はシャルリー・ダランの〈APIVIA〉。9位のジャン・ルカム〈Yes We Cam!〉まで、その距離は約270マイル。この2艇の間に、最新のフォイル艇と、前回大会(2016-2017)当時の最新艇、フォイルなしの旧型艇が入り乱れる。2万5千マイル以上を走ってもなお、この混戦模様だ。
1週間弱でトップ艇がフィニッシュするものと思われる。
UTC(協定世界時)1月19日11時時点のトラッキングマップ。この時点では上位10艇までが赤道を再び越え、北半球に入った
©Vendée Globe
最後尾の25位、アリー・フーセラ〈STARK〉もポイント・ネモを通過した。まだ雪も降る南緯50度のサザンオーシャンを黙々とゆく。
一方トップ艇団は、すっかり暖かくデッキの外でもTシャツ1枚という陽気の中を走っており、その緯度の高低差を実感する。
1月18日のアリー・フーセラ。船に降った雪で、雪だるまを作ったようだ
photo by Ari Huusela / Stark
1月12日のシャルリー・ダラン。南緯20度あたり、ブラジルの沖合を北上する。軽装で暖かそうだ
photo by Charlie Dalin / Apivia
さて、舵オンラインでは、毎週水曜恒例の「ヴァンデ・グローブ選手紹介」は第10回。
今回は、〈DMG MORI Global One〉白石康次郎スペシャルをお送りします!
photos by Jean-Marie Liot / Alea & Jean-Louis Carli / Alea
〈DMG MORI Global One〉
Kojiro SHIRAISHI/白石康次郎
1967年、東京で生まれた海洋冒険家・白石康次郎。神奈川県・鎌倉で育ち、三崎水産高校に在学中、BOCチャレンジ1982−1983のクラスIIで、207日の記録で優勝した多田雄幸氏に弟子入りする。そのために東京駅の電話帳をめくって多田氏の名前を探し、公衆電話から電話をかけたのは有名な話だ。師と仰いだ多田氏の死後、その名前を冠したヨット〈スピリット オブ ユーコー〉号が、長年の白石の相棒である。座右の銘は「天如水!(てんみずのごとく)」。
2度の失敗を乗り越え、1993年、世界一周航海を開始。176日かけて日本に戻り、1994年当時の単独無寄港世界一周の最年少記録(26歳)を樹立した。2000年代に2度の単独世界一周レースで完走し、通算で地球を3周している。
2007年7月号の月刊『Kazi』。単独世界一周ヨットレース「ベルックス5オーシャンズ2006-2007」で、クラス2位となった白石のフィニッシュ時の写真が表紙に
ⒸKazi
2016年には、アジア人として史上初、そして唯一、ヴァンデ・グローブ2016−2017出場を果たす。しかしスタートから約1カ月後、ディスマスト。無念のリタイアとなり、南アフリカ・ケープタウンに入港した。
その後、白石は日本のファンのために〈スピリット オブ ユーコーIV〉(IMOCA60)を日本に持ってきた。全国各地を回航し、一般の方がIMOCA60に乗れる機会を提供したり、東京湾や相模湾のヨットレースに参加したりと、精力的な活動が記憶に新しい。
2018年10月、白石は、大手工作機器メーカーのDMG森精機が立ち上げたプロセーリングチーム「DMG MORIセーリングチーム」のスキッパーに就任する。強力なバックアップを得た白石は、新艇でのヴァンデ・グローブ挑戦という悲願をかなえた。
新艇〈DMG MORI Global One〉(登録名はスピリット オブ ユーコーV)は、優勝候補のジェレミー・ベユー〈CHARAL〉のモールドを使用したシスターシップである。白石の目標は「完走」のため、より頑丈なボート造りを行ったという。
ヴァンデ・グローブ2020-2021に出場する33人のスキッパー。白石は中央やや右に
photo by Olivier Blanchet / Alea
2020年11月8日、ついに白石の2度目のヴァンデ・グローブがスタートした。6日後の14日、メインセール上部の破断というトラブルに見舞われたが、約1週間かけて修理。メインセールは常に1ポイントリーフ(縮帆)した状態だが、懸命に走り続けている。このペースで順調にいけば、2月中旬頃のフィニッシュが予想される。アジア人初のヴァンデ・グローブ完走は目前だ。GO KOJIRO!
2020年11月8日、レースビレッジからスタート海面に向かう白石
photo by Olivier Blanchet / Alea
白石の最新ビデオレポートをご覧ください。↓↓
白石康次郎
●年齢/生年月日:53歳/1967年5月8日
●性別:男性
●出身地:東京生まれ、鎌倉育ち(日本)
●出場回数:2回目(16-17:リタイア)
●チームベース:フランス・ロリアン
●公式サイト:https://kojiro.jp/
JPN11〈DMG MORI Global One〉
©Vendée Globe
〈DMG MORI Global One〉
●全長:18.28m
●全幅:5.85m
●喫水:4.50m
●艇体重量:8t
●マスト高:29m
●マストタイプ:ウイングマスト
●最大セール面積:アップウインド 320m2、ダウンウインド 600m2
●進水年月日:2019年9月5日
●セールナンバー:JPN 11
●フォイル:あり
●設計:VPLP
●造船所:マルチプラスト
●グラフィック:エトルデザイン
主な活動歴/戦歴
1994年 26歳で当時の単独無寄港世界一周最年少記録を樹立(176日)
1998年 75ftカタマラン〈Explorer〉にクルーとして乗艇。横浜-アメリカ・サンフランシスコ間の太平洋横断最速記録を樹立(14日17時間22分50秒)
2003年 アラウンド・アローン2002-2003(単独世界一周ヨットレース) クラスII 4位
2007年 ベルックス5オーシャンズ2006-2007(単独世界一周ヨットレース) クラスI 2位
2008年 110ftカタマラン〈Gitana 13〉にクルーとして乗艇。アメリカ・サンフランシスコ−横浜間の太平洋横断最速記録を更新(11日12分55秒)
2016年 トランザット・ニューヨーク・ヴァンデ(単独大西洋横断ヨットレース) 7位
2016年 ヴァンデ・グローブ2016-2017に出場。2016年12月4日にディスマストによりリタイア
2020年 ヴァンデ・アークティック・レ・サーブル=ドロンヌ(ヴァンデ・グローブ予選レース) 10位
(文=Kazi編集部/森口史奈)
●Vendée Globe公式サイト
https://www.vendeeglobe.org/en
●レースのトラッキングサイト(現在位置)
https://www.vendeeglobe.org/en/tracking-map
●「ヴァンデ・グローブ2020-2021選手紹介」掲載済みの記事はコチラ