ヴァンデ・グローブ2020-2021で、アジア人初となる完走を成し遂げた〈DMG MORI Global One〉の白石康次郎さん。現地にて、スタート、フィニッシュともに撮影をおこなった矢部洋一さんが、フィニッシュ直後の白石さんにインタビューを実施しました。そのインタビューのダイジェスト版を、特別に掲載します。
フランス現地時間の2月11日11時52分56秒、ヴァンデ・グローブ2020-2021のフィニッシュラインを切る〈DMG MORI Global One〉白石康次郎
矢部:ついに完走を果たしましたね。
白石:やっと終わったという感じです、今回は長い冒険になりました。
矢部:フィニッシュしてすぐ、チームの皆と喜びを分かち合った時の気分は?
白石:フィニッシュラインを切ったあと、打ち合わせでは僕の船に乗り込むクルーの数は2~3人だけだったらしいのですが、僕はチーム全員を船に上げました。潮の関係で、水路を通って港に入るまで2時間くらい待ち時間があったのですが、その間、チームメンバーとずっと一緒に船に乗れて、幸せでした。本当にいい時間でした。
矢部:チームの皆と最初に交わした言葉は?
白石:言葉はありません。とにかく抱き合って喜んでいました。皆よくやったよくやったということで。
フィニッシュ直後、艇に乗り移ったチームメンバーと抱き合って喜ぶ白石
photo by Olivier Blanchet / Alea
矢部:完走できると確信したのはいつごろでしたか?
白石:確信できたのは10分前です。フィニッシュ前の2日間はずっと寝ていなかった。漁船が多かったからです。フィニッシュラインと船の間に漁船が1隻もなくなったのが、10分くらい前になってからでした。それでようやく確信できた。
矢部:桟橋には優勝したヤニック・ベスタベンや、英雄ジャン・ルカムをはじめ、多くのセーラーが来て祝福してくれましたね。
白石:ヤニックは同じコーチのビルー(ローラン・ジョルダン)の元で練習した仲間です。だから彼の優勝はとてもうれしい。彼は忙しいはずなのに、わざわざ来てくれて光栄なことでした。今回、僕がメインセールを破り、修理してレースを続けていることは皆が知っていた。にもかかわらず、ヴァンデ・グローブ完走を果たして、順位も31位から16位まで上げたことを評価してくれたのでしょう。
左からヤニック・ベスタベン、ローラン・ジョルダン、白石。レ・サーブル・ドロンヌのオロナ港の桟橋にて
photo by Yvan Zedda / Alea
矢部:ドラマチックな2度目のヴァンデ・グローブ挑戦でしたね?
白石:前回のヴァンデ・グローブをリタイアして、その後DMG森精機の森(雅彦)社長とご縁を得た。新たなスタートが始まり、プロチームを立ち上げた。直後に何があったかというと、心臓の大手術でした。半年間は動けない。次に何が起きたか、コロナです。新艇を造ったけれども、整備も練習もできない。重要なレースが二つキャンセルされて、十分な走りができないまま、はいヴァンデ・グローブ、スタートです。で、スタートしたら、いきなりメインセールがぐちゃぐちゃ。そういう劇的な僕のヴァンデ・グローブでした。それでもまずはアジア人初完走、これを達成できました。
矢部:これからのことについては?
白石:一つ決まっている目標は、今年一年、皆さんに恩返しをすることです。船を持って帰って、日本で楽しんでもらう。その先のことは、おのずと決まってくると思います。
(インタビュー・写真=矢部洋一、構成=Kazi編集部/森口史奈)
※このインタビューの全編は、3月5日発売の『Kazi』4月号に掲載予定です。