国際VHF無線の交信の仕方「基本のき」

2021.07.24

プレジャーボートでの遊びを安全、安心に楽しむために、大きな役割を果たしてくれる国際VHF無線。
その無線機を使うため、講習会に参加して無線従事者の資格を取り、無線機を買って開局もした。さあ、いよいよ、船舶局のデビュ~! でも、待って。いったい何を、どのように話したらいいの?

そんな疑問をお持ちの方、多いと思います。そこで今回は、無線のプロである「海の達人」(品川区天王洲)の髙野光哉さん監修のもと、国際VHF無線の応答の仕方について、その基本を教えてもらいました。初めて無線を使う方、ぜひ参考にしてください。

 

■基本の設定
まず無線機は、通常はチャンネル16を選局しておきます。チャンネル16は「海上航行するすべての船舶間で呼出応答する専用チャンネル」です。

次に、受信する音量を調整します。エンジンの音や海況によって適切な音量は異なるでしょう。

相手に話しかけるときはプレストークボタンを押しながら話し、相手の話を聞くときは、ボタンを離します。ボタンを押すと同時に話し始めると言葉の冒頭が切れてしまうので、ボタンを押して1秒くらい待ってから話をするのがポイントです。

 

■通話用チャンネル
国際VHF無線では、まずチャンネル16で相手船を呼び出し、その後、通話用チャンネルに切り換えて(変波という)通話を行います。

プレジャーボートが使用する船舶局同士の通話チャンネルの代表的なものは、「6」「8」「69」「72」「73」など。詳細は総務省が発行している「国際VHF 利用ガイド」を入手して確認してください。チャンネル以外にも、国際VHF無線を運用するために必要な情報が掲載されています。同ガイドのPDFの入手先はコチラ

 

「国際VHF 利用ガイド」(総務省)の一部抜粋

 

では、応答の基本を見てみましょう。まずは2種の動画で解説します。

 

■動画1 進路確認
大型船の航路を横切るときなど、迫り来る大型船にドキドキしてしまいますよね。この動画は「横切り船に連絡」する場面です。

設定:達人丸(大型船)=男性 KAZI丸(ヨット)=女性

○ポイント1 相手局の呼出名称(3回以下)こちらは(1回)自局の呼出名称(3回以下)で呼びかけます。
○ポイント2 話を終えたら「どうぞ」で相手に返します。
○ポイント3 チャンネル16は一般船舶の「呼出応答用」なので、話をするときは他のチャンネルを指定します。
○ポイント4 会話が終了したら「以上」で締めくくり、チャンネル16に戻します。

 

■動画2 メーデーメーデーメーデー
次は不測の事態(緊急)の場面です。
不測の事態が発生し、救助を求めなければならないときに「メーデー」を発信します。メーデーは、座礁、浸水、転覆等の緊急を要する場合の遭難信号です。遭難信号を受信した海上航行するすべての船舶や海上保安部は、直ちに応答し、内容を確認しながら救助に向かいます。慌てず、端的に用件を伝えましょう。

設定:天王洲ほあん=男性 KAZI丸(ヨット)=女性

○ポイント1 DSC「デジタル選択呼出装置:ディストレス(緊急遭難信号)」がない無線機の場合
自船の位置がわかれば緯度、経度を伝えます。
場所がわからないときは、不測の事態が発生する前の場所や、そこからどの方向にどれくらいの時間を航行したか、または見える風景など、可能な情報を伝えましょう。

○ポイント2 DSC機能がある無線機の場合
無線機にDSCボタンが付いていれば、そのボタンを押すだけで、近くを航行するすべての船舶や海上保安部に、不測の事態が発生した自船のIDと位置情報、時間等のデータが発信されます。相手に正確な位置がわかり、速やかで円滑な救助を受けられる大変便利なツールです。

 

■海上保安部との交信で無線感度試験と航海連絡を行う
最後は、無線感度試験と航海連絡の応答です。

○無線感度試験:相手が自分の通話をどの程度の感度で受信できているかを確認する作業です。最も良好な状態を「5」とする5段階で表現します。
○航海連絡:自船の航程などを知らせることです。

これらの通信の相手として、最寄りの海上保安部(署)を呼び出す例を下記に示します。
「そんなことで海上保安部を呼び出していいの?」と思うかもしれませんが、高野さん曰く、事件や事故、他の急を要する状況でチャンネル16を使用している場合を除き、「管轄ほあん」を呼び出して感度試験のお願いをすることは問題ないとのこと。
海上保安部(署)に連絡することで、安全航行のための見守りや、さまざまな情報を受け取れることもあるので、むしろお勧めしたいそうです。


天王洲ほあん 天王洲ほあん こちらはKAZI丸 KAZI丸 感度ありますか どうぞ

KAZI丸 こちらは天王洲ほあん 何かありましたか どうぞ

天王洲ほあん こちらはKAZI丸 出航前 無線感度試験をお願いします どうぞ

KAZI丸 こちらは天王洲ほあん チャンネル12に変波してください どうぞ

天王洲ほあん こちらはKAZI丸 チャンネル12変波 了解しました どうぞ

天王洲ほあん こちらはKAZI丸 港区浜松町マリーナからです どうぞ

KAZI丸 こちらは天王洲ほあん 感度明瞭度5です 品川区天王洲運河保安署にて受信しています どうぞ

天王洲ほあん こちらはKAZI丸 感度明瞭度5です 本日8時、浜松町マリーナより熱海港へ向け航行します 明日午後16時に帰港予定です どうぞ

KAZI丸 こちらは天王洲ほあん 了解 安全航行で気をつけて 以上


 

無線交信をスムーズに行えるようになるためには、最初は所属するマリーナや仲間の艇を相手に、自船の航行している場所や海上環境などを伝えることで、無線操作や会話に慣れていくのもよい方法です。構えず、気軽に無線を交信し、安全な航海を楽しみましょう。

 

私たちのプレジャーボートに国際VHF無線機を設備することで、海上航行するすべての船舶と、安全航行に関する交信が可能になります。
もちろん、クルージングに出るときは、所属するマリーナや、家族、仲間に行き先や帰港予定を知らせることも、とても大切なことですね。

 

(文=舵社用品事業部/大山英里子)

 

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また舵社では、国際VHF無線機を扱うために必要な海上特殊無線技士の資格を取得するための講習会も開催しています。
●舵社主催 無線講習会の日程はこちら

 

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