若者にアンケートに答えてもらった
学連ヨット部を卒業した若者たちは、それっきりヨットをやめてしまう人が多い。これは、何十年も前から語られる悲しい現状である。
なぜ、若者がヨットから離れてしまうのか。本当は乗りたいと思っているのではないのか。
Kazi編集部ではこの実情を探るべく、全国のヨット部現役、20代OB&OGに向けてアンケートを実施した。
総勢76人の回答から見える事実とは?
Q1.回答者について
アンケートを実施したのは、ヨットから離れて俗世間の生活を送っているヨット部の卒業生も、学生の頃の思い出を振り返ったり、何かとヨット意識が高まるであろう、11月のインカレシーズン。若手編集部員の先輩や後輩のつてを使いグーグルフォームのURLを送り、現役ヨット部、20代のOB&OG総勢76人に答えてもらった。
Q2.ヨット部ライフはどうだった?
ヨット離れの原因について、編集部の予想は、つらい思い出ばかりがよみがえる部活にあるのではないか・・・というもの。しかしそんな予想とは反して、ヨット部として過ごした学生時代を「よかった」と振り返る人は8割を超えた。
Q3.卒業後もヨットに乗りたいと思う?
「乗りたい」「少し乗りたい」と答えた人が合わせて8割以上いた。反対に「まったく乗りたくない」という選択肢を選んだのは0人。本当は乗りたくても、何かしらの理由があって乗れていないという現状が見えてきた。
Q4.どのような艇種に乗りたい?(複数選択可)
選択が多かったのは、スナイプ級や470級、レーザー級など、これまで乗っていたであろうレース向けの艇種。ファンディンギーなど、他の項目への選択が少なかったのは、認知度の低さではないかと考えられる。
Q5. Q.3で、ヨットに乗りたいと思う理由は?(記述式)
ヨットに対し、どのようなポジティブな意見があるのか。どこに魅力を感じているのかをヒアリング。総じて海とヨットが好きだということに尽きるが、生涯スポーツであることや、非日常的で自然の中で行う奥深いスポーツであることなど、ヨットならではの理由が多かった。また、仕事のストレスを発散したい、せっかく得た知識を活かしたい、成長し続けたいなどの意見も複数見られた。
Q6. Q.3で、乗りたくないと思う理由は?(複数回答可)
11人が回答。乗りたくない理由の一つに、「ヨットが嫌い」という選択肢を設けていたが、票が入ることはなかった。ゴルフなど、社会人になってから始めた趣味にシフトしていくことも、ヨットに乗らない理由か・・・。
Q7. どのような環境で乗りたい?(複数回答可)
部活に縛られて乗っていた影響か、「好きなときに乗り満足したら帰る」を選択した人が多かった。また、「仲間とクルーザーレース」を29人、「クルーザーで島巡り」を25人、「日帰りクルージング」を24人が選択し、クルーザーへの興味があることも示された。
Q8. どのような所有方式なら乗りたい?
ヨットをレンタルして乗る方法や、仲間と共同所有するなど、ヨットに乗る手段はたくさんある。シェア文化のあらわれか、今回は51人がレンタルを選択した。
Q9. 卒業後にヨットをやめる人が多いのはどうしてだと思う?
時間的、金銭的、立地的なハードルがヨット離れの要因として考えられている。さらに、この条件をクリアした環境があっても、その情報が行き届いていないことが想像される。参加しやすいヨット界の構築、情報の発信が必要だと感じた。
青春の中心だったヨット 今も残る思い
ヨットから離れてしまっても、学生時代青春を謳歌したヨットの思い出は消えない。 部活の記憶、ヨットへの思いを聞いてみた。
若者のヨット離れを探る
このアンケートは月刊『Kazi』1月号で若者に向けての特集記事を作った際に行ったもの。スナイプ級や470級だけに乗りレース中心で生きていた学生時代とは違い、引退後のヨットライフは、艇種、遊び方を含めてさまざまな選択肢がある。にも関わらずヨット部を引退後、ヨットから離れてしまう仲間は多い。私は入社2年目の編集部員だが、舵社に入っていなかったら、多くのヨット部OB&OGと同じように、ほかの趣味を始めて、ヨットとはほど遠い生活を送っていたかもしれない。クルーザーには足を運ばなかっただろうし、ファンディンギーとも出合わなかっただろう。
ヨット界全体的にはクルーが不足しており、ヨット部上がりの若者たちにもっと乗ってもらいたいというオーナーも多いように感じる。しかしながら、その現状を知らない若者も多く、乗りたくても乗れるつてがない、ヨットは買わないと乗れないだろうという認識を持った若者もいた。
これからの課題
アンケートの結果を見て最も驚いたのは、学生時代をヨット部で過ごしたことをよかったと捉える人、そして卒業後もヨットに乗りたいと思っている人が8割を超えたということである。また、ヨットから離れる理由について、ヨットが嫌いだからと答えた人はいなかった。金銭面、時間的な制約から、もっと都合がいい趣味へ流れていってしまったり、ヨットに乗り続けている大人との出会いが少ないこと。ヨットを買わないと乗れないのではないか、というイメージや、スナイプ級や470 級以外の艇種(クルーザーやファンディンギー)の幅の広さ、奥深さが知れ渡っていないことなどがヨット離れの原因として考えられる。
若者がヨットに乗り続けられるのはどのような環境なのか。ヨット界全体の課題として、考察していけたらと思う。実際にヨットに乗る道はたくさんあるし、乗り続けている若者もいる。一人で行くのが難しければ、友達を誘って一緒にクルーザーチームへの門戸をたたいてみてほしい。
(文=Kazi編集部/松山 暁 トップ画像=舵社/宮崎克彦)
※この記事は月刊『Kazi』2022年1月号に掲載された内容を再編したものです。この号の特集は「若者に告ぐ、一生ヨット乗りであれ NO SAILING, NO LIFE」と題し、ヨット部引退後の若者のヨット離れを危惧し、どうしたらヨットに乗り続けてもらえるかを考察する企画となっています。
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