ウェイマスに集まった英国南部のジュニアセーラー

2022.12.07

英国南部のビーチリゾート、ウェイマスで開催されたジュニア地域選手権。毎年夏に各地で行われるこのイベントに、長女と次女が参加。サウサンプトンから車で2時間。ソルト家が体験した夏のイベントです。

(タイトル写真=小柄な人10人は乗れるメガSUP。子どもが水に親しむ一助にと、OnBoardスポンサーのバートンマリンが提供している )

 

 

長女(左)と次女。ビーチリゾートである英国南部のウェイマス。透明度の高い波打ち際で存分に遊んでから海辺のリゾート感を味わいました 

 

 

英国にしては珍しい25℃を超える夏日が週中から週末まで続くとの予報。現地でホリデー気分を味わおうと、夫は眠っていたウィンドサーフィンキットを車に積み込みウキウキ 

 

 

会場となったウェイマス&ポートランド・ナショナル・セーリング・アカデミー。RSゼスト級や、レーザー4.7(ILCA 4)級などがスロープに集まる 

 

 

行列のできるフィッシュアンドチップス店でテイクアウトしてビーチで食べた

 

 

OnBoardグループの傍らで数十年ぶりにウィンドサーフィンをする前に、イングリッシュ・ブレックファーストで腹ごしらえする夫 

 

 

ウェイマスビーチの傍らでは、6月23日の軍隊記念日に先駆けイベントや軍用車展示などが行われていた

 

 

ウェイマス中心街のウェイ川河口沿いにあるオールドタウン。漁船やヨット、ライフボートなどたくさんの船が浮かび、レストランやカフェが立ち並ぶ 

 

 

英国の夏のイベント

毎年夏に開催される、ジュニア地域選手権なるものに参加してきました。これは南部&南西部、ロンドン&南東部、中部、北部、さらにはアイルランド、ウェールズでそれぞれ毎年夏に行われる地区大会で、ジュニアのナショナルクラスに指定された艇種でセーリングするもの。さまざまなレベルの子どもたちが一堂に会し、タレント開発の場にもなっています。 

ウェイマスで開催された南部&南西部大会の日程は6月18~19日の週末。イベントでは、レーザー4.7(ILCA4)級、OP級、RSフィーバ級、RSテラ級、RSゼスト級、トッパー級などを使用。本格的なレースを行う「チャンピオンシップフリート」、コーチング付きレースを行う「レガッタフリート」、そして、ファンボートやRSゼスト級を使いゲームや遊びを通じて水やセーリングに親しむことが目的の「OnBoardフリート」の三つが用意され、2012年ロンドン五輪のセーリング会場だったウェイマス&ポートランド・ナショナル・セーリング・アカデミー(以下、WPNSA)に275人のジュニアセーラーが集いました。レースに興味のない私の娘たちは、OnBoardフリートでの参加です。 

 

 

メガSUPの島から一斉にダイブ!

 

 

誰にも言われてないのに、メガSUPから助走をつけてダイブしだした子どもたち。こういう時が一番楽しそう 

 

 

メガSUPの登場に大興奮

土曜朝は後発した夫を駅でピックアップ後、早めにWPNSAに到着し、カンティーン(カフェテリア)で腹ごしらえ。予報とは裏腹に北風20ノット超え20℃以下と肌寒く、防寒マックスで臨みます。 

全フリートでブリーフィング後、我々OnBoardフリートはグループ分けされビブス着用。兄姉がレースのフリートに参加している小学生低学年くらいの妹弟が多く、長女&次女は最年長のようでした。 

午前はさらっとタッキングジャイビングの陸練をしてからRSゼスト級に1枚帆2人乗りで出艇。怖がる子や操船がおぼつかない子にはインストラクターが同乗します。アビームコースをぐるぐる回りながら、スキルの把握やペアを入れ替えて子どもたちだけで乗れるようにレベルの均衡を図ったのち、保護者ボランティアにサポートされながらリーショア着岸し、午前の部終了。 

各々家族と昼食を取った後は、メガSUPやファンボート(ポリエチレン製の初心者向けカタマラン的な、現在絶版の艇)の艤装をしましたが、ブローで25kt超えの強風と寒さに尻込みする子が続出。とはいえ、スロープ際でイントラたちがファンボートの準備を続ける間に、子どもたちは順番にメガSUPから助走をつけて飛び込んで遊びだします。言われたわけでもないのに、子どもの創造力は自由! 

飛び込みに満足したら、桟橋からの「Bin Bag(ゴミ袋)レース」。ハルだけのファンボートに3人乗りし、一人は帆にみたてたゴミ袋で風をキャッチ、一人はコースをひき、一人は舵を操作し、チームワークを育みながら桟橋からフィニッシュラインまで競うという、強風下でもできる水上ゲームです。 

お次は沖に浮かべたメガSUPを島にみたて、スロープからファンボートで出艇した子どもたちを次々に上陸させます。子どもたち全員がいくつかのSUP島に乗り移ると、サポート艇に曳かれながら防水スピーカーの音楽に合わせて踊ったり、何人かで一斉に飛び込みを繰り返したりと、最初に怖がっていたのはウソのように、子どもたちの愉快な歓声が周囲に響きわたりました。 

 

 

海に出る前に、タッキング/ジャイビングのランドドリル(陸でのシミュレーション)を一通り行います。子供相手には「さらっと」が肝! 

 

 

最初は怖がっていた子も、だんだん笑顔で積極的になってきた

 

 

Bin Bag レース

Bin Bag(ゴミ袋)を帆にみたて、ファンボートを使って競争する。コツをつかんでうまく風をとらえれば、意外と速い! ファンボートだけでなく、OP級のハルとフラッグなどを使用してもできる、強風時にやるゲーム。皆さんも試してみて! 

 

 

玉入れリレー

スロープがスタートラインで、沖のマークにくくられたバケツにテニスボールを入れ、スロープへ戻ってきたら交代するリレー。ファンボートは安定よくダガーボードもないので、出着艇や人員交代が楽。競争的要素が入っても、グループ対抗ゲーム的要素が強く、レースに興味がない長女と次女でも心底楽しんだ 

 

 

ランチ後は、海へ繰り出す前に陸上でゲームをしてウォームアップ

 

 

波風激しい防波堤外で、意外とうまいこと乗れていた子どもたち。レース観戦はそっちのけだったけど、揺れたり波を被ったりするたびにキャーキャーと大喜び 

 

 

強風のなかでのセーリング

たっぷり水遊びとセーリングに親しんだ1日目終了後は、近くのスーパーで食材を調達し、マリーナ内のキャラバンサイトに滞在する私たちの地元クラブメンバーのBBQに参加し、顔は分かるも話したことがない人たちと親交を深めました。北の強風に震えつつでしたが、後になれば良い思い出になるでしょう。 

さて、北風さらに強まり気温15℃の日曜朝。小さい子たちがまたも尻込みしていましたが、最年長の長女と次女は前日にインストラクターから腕を褒められ自信がついたのか、そんな子たちのサポートをする様子も見られました。成長だわぁ(感泣)。 

午前のクライマックスは、OP級でもプレーニングしそうな強風の沖でレースしている他のフリートの観戦。それまで防波堤内側の比較的穏やかな海面で遊んでいたOnBoardフリートにとっては大冒険です。RSゼスト級とファンボートに2~3人ずつ乗り、まずは堤防内で少し練習。笛の合図で艇の上に全員立つなどバランスをとるゲームをしながら「Smile makes yougo faster!」と、インストラクターの声掛けはポジティブ。 

Follow my leader(前の艇との間隔を一定に保ち同じコースを帆走する練習法)をしながら堤防の外へ出ると、サポート艇に乗っていても一瞬でずぶ濡れになるほど波や風が高い中、子どもたちは周りとコミュニケーションを取ることで他艇との衝突を上手く避けつつ、しぶきや大揺れに歓喜しながら逞しく操船することができていました。遊びながらスキルを養うというのはこういうことかと感心しながら遠目にレース海面を見て昼休みのため帰着。 

人生最大の強風下でのセーリングを終え、自信をつけて一回り大きくなったように見える長女と次女でしたが、寒さのため午後の部はパスして街へ観光に行き、閉会式のためWPNSAに戻りました。 

地域開発チーフのダンカン・ウェストから「OnBoardフリートには賞はないが、ガストで35~38ノットの強風の中、海に出たことは素晴らしく、参加者全員がメダルに値する。皆自分に対して大きな拍手を! 次回はぜひレースフリートで参加してください」との賛辞と、金銭的な理由でセーリングを続けるのが困難なユースセーラーを支援するジョン・メリックス・セーリング・トラストというチャリティーへの申し込み方法説明があり、セッション終了。 

遊び100%ながら、Games with aims(セッションの目的とするスキルをゲーム感覚で養う)で腕を上げ、未踏の風域克服や新しい友たちができるなどポジティブな経験を満喫し、レースや遠征という未知の世界を垣間見た娘たち。表彰台横に並べられたメダルや盾を一通り眺めて、新しい扉が開いた・・・かな?

 

 

OnBoardフリートの閉会式。厳しい海象下で乗れたことへの称賛と、背中を押すような励ましの言葉がメダル代わり! 

 

 

OnBoardとは、セーリングとウインドサーフィンをよりアクセシブルにするためのRYAの青少年向けプログラム。ギアや道具は不要、体一つで参加でき、ゲームを通じてチームワーク、コミュニケーション力、自信などのコアなライフスキルを育むものとして、2005年の発足以来、学校やユース団体などを通じ約75万人の青少年にウオーターアクティビティーの機会を提供してきた 

 

 

一応、表彰台に乗っときました(笑) 

 

 

(文・写真=ソルト祥子、写真=ヘレン・スケルトン・スミス/RYA)
text & photos by Sachiko Suzuki Sault, photos by Helen Skelton-Smith / RYA

 

※関連記事は、月刊『Kazi』2022年11月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

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Sachiko Sault

英国のヨット環境を経験したいと、2004年に英国サウサンプトンに移住。娘たちが10歳を過ぎる頃から、セーリングが好きになるようあれこれ仕向けているところ。本業は翻訳家。

 


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