2020年夏、月刊誌『Kazi』誌上で開催した「Kazi YACHT AWARD 2011-2020」。
『Kazi』誌にて2011年1月号から2020年8月号に紹介された全167艇のセールボートをノミネート艇とし、大賞および各部門賞を選出したものだ。
選者は、同誌ボートレビューの執筆陣であるセールボート評論家6人と、僭越ながら6人の舵社編集部員、合計12人が務めた。 選出はモデルごとに行ったため、サンオデッセイ(ジャノー)、ハンゼ、デュフォー、バヴァリア、オセアニス(ベネトウ)、ラグーンといった多くのモデルを輩出する人気シリーズラインは票を割る結果となった。
1カ月におよぶ厳正な選出から得られた結果を、KAZIオンライン上であらためて発表させていただく。
各部門は
クルージング部門 30ft以下
クルージング部門 31~40ft
クルージング部門 41ft以上
スポーツ部門
マルチハル部門
ディンギー部門
の6部門に加え、全167艇のなかの大賞を1艇選出した。 では、栄えある Kazi YACHT AWARD 2011-2020、受賞艇を発表していこう。
本アワードの初代大賞は、ジャノー・サンファスト3300に決定した。得票数は実に144ポイント。
選考委員の半数以上がなんらかの得点を付けたということも特筆すべき。
2024年開催のパリ五輪から行われるセーリング外洋種目の制式採用艇候補筆頭の1艇であったこと、その1号艇が早くも日本に浮いたこと、といった非常に強い話題性も選考委員の心を動かした一因といえる。
逆オーバーハングしたステムや面取りされたバウガンネルなど、昨今の超最新と目される船型であり、なおかつ男女ミックスのダブルハンド仕様という点、
バルブキールの廃止など、どこをとっても“近代的” な1 艇であり、そのスペックは大賞の風格を十二分に持ち合わせている。
記念すべき「Kazi YACHT AWARD」初代大賞である。
SPEC
●全長:10.11m
●全幅:3.40m
●喫水:1.95m
●排水量:3,500kg
●設計:Daniel Andrieu & Guillaume Verdier
●標準仕様価格:23,100,000 円+税
(問)オデッセイマリーン
TEL: 046-875-0650
https://www.odysseymarine.co.jp
-----------------------------------------------------
1位 タータン・ファンテール26
2位 岡崎30C
3位 エラン210
4位 ベネトウ・ファースト24
5位 パイシーズ21
6位 ブリストルチャネルカッター28〈エオラス〉
7位 アーシャンボー 27
8位 Zen 24
9位 エスカルゴ20ヨットバージョン
10位 TUG 25改
クラシカルヨットが名を連ねる小型艇部門。
その趣味性の高さゆえか票はばらけ、10位以下であってもそれほど得票差はなかった。
このサイズレンジでまっさきに思い浮かぶマクサス24は11位、アクタス17は12位、サフィア26は13位と、いずれも僅差であり、選考委員が一人かわれば、結果はまったく違ったものになったことも想像できる。
その状況で首位を取ったタータン・ファンテール26は、小型艇の雄たる堂に入った風格を感じた。
SPEC
●全長:7.92m
●全幅:2.57m
●喫水:1.37m
●排水量:1,384kg
●標準艤装価格:12,000,000 円(税込み。デイセーラーバージョン2020年6月現在)
(問)ユニマットプレシャス
TEL: 046-844-2111
http://www.velasis.com/
-----------------------------------------------------
1位 デヘラー34
2位 ベネトウ・ファースト35
3位 岡崎361デッキサルーン
4位 デュフォー310グランドラージ
5位 グランドソレイユ34
6位 ハンゼ315
7位 Xc 35
8位 岡崎40デッキサルーン
9位 ホルベルグラッシー37
10位 ベネトウ・オセアニス30.1
この10年間に日本で最も売れたジャンルとサイズ帯。
そんな激戦区の中には、デュフォーとハンゼがそれぞれ8艇種、ベネトウ・オセアニスが6艇種、バヴァリアが5艇種と、サイズ/仕様違いの艇が複数エントリー。
こうしたブランドは、各艇に票が割れてしまい、順位が伸び悩んだ感がある。
そこを制したのは、ドイツの名ビルダー、デヘラーヨット社の34ft。
創業者の息子、カール・デヘラーが企画立案したデヘラー34は、日本上陸した2017年に多くのレースで優勝を果たした。
SPEC
●全長:10.70m
●全幅:3.60m
●喫水:1.95m
●排水量:5.95トン(スタンダード)
●艇体標準価格(2020年):28,000,000円+税(横浜港or神戸港渡し)
(問)イチ・サン・ゴ・イースト
TEL: 0798-32-1350
https://www.135-e.com/
-----------------------------------------------------
1位 スワン54
2位 CNB 76
3位 センス43
4位 センス50
5位 ポゴ12.50
6位 シガール16
7位 X43
8位 ギャツビー45カスタム
9位 ベネトウ・オセアニス46.1
10位 オイスター46
この部門のエントリー艇のうち、50ftを超えるモデルの半数以上を2017年以降に紹介しているという点からも、近年、大型化の流れが進んでいることがうかがえる。
その部門を制したのは、サイズだけではない、高品質な造りで世界中から認められるスワンの54ftモデル。
2位はエントリー中、最大(23m超)のCNB 76。
3位は、ベネトウの大型艇シリーズだったセンス(現在はシリーズ自体がフェードアウト)の最小モデル。
やや、憧れの対象となるモデルに偏った感もあるが、夢の世界をのぞき見るつもりでご覧いただければ幸いだ。
SPEC
●全長:16.48m
●全幅:4.75m
●喫水:2.44m
●排水量:22,000kg
●価格:問い合わせ
(問)リビエラリゾート
TEL: 0467-24-1000
https://www.riviera.co.jp/marina/sales/
-----------------------------------------------------
1位 ジャノー・サンファスト3300
2位 K36侍
3位 J/70
4位 シーエアー・クラスミニ6.5ハルナンバー747
5位 アウディメルジェス20
6位 J/88
7位 ウッドフレンダー24
8位 トロ34
9位 カーキーク40
10位 メルジェス24
名だたるライバルたちを打ち破り、部門賞トップはジャノー・サンファスト3300(大賞も受賞)が1位を獲得。
2014年パリ五輪の採用艇最有力候補にして、その先の未来を見据えた最先端の外洋スポーツボートだ。
ランキングでは、7位には国産の木造レーサー、ウッドフレンダー24(WF24 、木造探検造船所)がランクイン。
8位にはJ/88が入り、3位のJ/70と共にJボート社(アメリカ)の人気がうかがえる。
「メルジェスウィーク」が盛り上がったメルジェス社(アメリカ)からも、メルジェス20と24がベスト10入り。
トレンドを反映した海外のボートに、K36侍やWF24といった日本人の手によるこだわりのボートが食い込む、『Kazi』誌らしい面白いランキングになったのではないだろうか。
SPEC
●全長:10.11m
●全幅:3.40m
●喫水:1.95m
●排水量:3,500kg
●設計:Daniel Andrieu & Guillaume Verdier
●標準仕様価格:23,100,000 円+税
(問)オデッセイマリーン
TEL: 046-875-0650
https://www.odysseymarine.co.jp
-----------------------------------------------------
1位 バリ4.1
2位 ニール47
3位 ラグーン42
4位 ラグーン40
5位 ドラゴンフライ25
フランスのカタナ造船所が立ち上げたブランド、バリ。
2018年にはバリ4.1が発表され、カタマランシーンの王者であるラグーンに迫る人気を獲得した。
ランキングでは、複数のモデルがエントリーしているラグーン(4艇)と、バリ(2艇)は、ブランド内で票を分け合う形に。
ラグーンの新世代の2桁モデル(40、42)と、バリの2艇(4.0ラウンジ、4.1)の得票を足すと、僅差でラグーンが上回り、同ブランドの根強い人気を物語っている。
『Kazi』誌では、この10年間で、11艇中8艇のマルチハルを2010年代後半に本誌で紹介している。
日本でも徐々にマルチハル文化が根付き始めたこと、各地の大型マリーナで全幅の大きなマルチハルを受け入れる体制が整い始めたということだろう。
その人気は、今後さらに高まりそうだ。
SPEC
●全長:12.12m
●全幅:6.72m
●排水量:8,900 〜11,800kg
●喫水:1.12m
●価格:問い合わせ
(問)ウインクレル
TEL: 045-681-0104
https://yacht-w.com/
-----------------------------------------------------
1位 RSエアロ
2位 テーザー
3位 オープンスキフ(オープンビック)
4位 ウェタ
5位 RSクエスト
マストだけでなくハルもカーボン製にすることで大幅な軽量化を実現し、誰でもハイスピードのセーリングを楽しめるRSエアロが堂々の首位を獲得。
発売から30年以上たった今でも世界中で愛されているテーザーが2位にランクイン、3位はビック社のジュニア育成艇、オープンスキフとなった。
トライマランディンギーのウェタをはじめ、車に積んでどこへでも遊びに行ける気軽なディンギーが近年ますます増えてきた印象だ。
ぜひ、レースだけでないファンセーリングを楽しめるこれらのディンギーも、海遊びの選択肢の一つに入れていただきたい。
SPEC
●全長:4.0m
●全幅:1.4m
●ハル重量:30kg
●価格:1,290,000円+税(RSエアロ5)
(問)葉山セーリングカレッジ
TEL: 046-877-5399
https://sailco.com/
-----------------------------------------------------
今回、2011年から2020年の10年間に『Kazi』誌が紹介したセールボート167艇のうち、71%がクルージングボートであった(レーサー/クルーザー含む)。
艇のサイズについては、最も多かったレンジは31~40ftで全体の54.2%。
とはいえ、41ft以上の艇は23.9%と、やはりこの10年で艇の大型化はかなり進んだといっていい。
次回からは、読者の声も反映したアワードを予定している。
これからも、きら星のように輝いたすばらしいセーリングボートに巡り合えることが楽しみでならない。
(文・写真=Kazi編集部 まとめ=Kazi編集部/中村剛司)
※本記事は月刊『Kazi』2020年8月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ
[広告]