今年のクルージングは絶景を探す! 陽光降り注ぐ南洋諸島への憧憬|海流のなかの絶景集

2025.01.15

2025年のクルージング先のアイデアとして、南洋諸島で出合った絶景をお贈りする。ゴールデンウイークに、そして夏休みに、あなたはヨットやボートでどのような絶景を探すのだろう。強烈な太陽の日差し、心が透かされるかのような美しきブルー。あなたの心にも、その光景は強く残っていくことだろう。

メインカット | photos by Shigehiko Yamagishi | 沖縄県・石垣島/石垣御神埼灯台(Ishigaki-jima) | 石垣島西部の石垣御神埼(いしがきおがんさき)灯台を背に、灯台の目線で北西を眺めた風景。左下に写るのは灯台の影。沖を行くカタマランは〈minnie〉(ラグーン410)/泊地:石垣港

 

あなただけの絶景がある

ほんの一瞬の出来事。ふと目にした光景が強烈に目に残る。心は支配され、その印象は強く胸に刻まれる。ヨットやボートに乗った先で絶景に触れたとき、そんな気持ちになることはないだろうか。

個人的な話になるが、山岸重彦カメラマンの作品、記事冒頭の石垣島の石垣御神埼灯台(いしがきおがんざきとうだい)から見た風景が、私にとってのそれだった。バックグラウンドを言わなければ、ああ、とても素晴らしい景色ですね、という感じの一葉であろう。

まあ、たいしたストーリーではないかもしれないのだけれど、このとき私は24°NORTHの渡真利(とまり)将博さんの案内で、宮古島の荷川取(にかどり)港をヨットで出港し、水納島(みんなじま)、多良間島(たらまじま)とホッピングして、石垣島へやってきた。島民3人のみの水納島で過ごした数日間は強烈だった。店もなければ自動販売機もない。街灯もない。野良ヤギが300頭。島民の許可を得てヤシガニを捕って食べた。次の多良間島へは船首波で遊ぶハンドウイルカの群れに案内してもらい、リーフエッジでシュノーケリングしたりしながらゆっくり上陸。街灯や店のある多良間島がまぶしく、なぜか気後れしたのを覚えている。

そして、ナイトセーリングで向かった石垣島。平久保埼灯台をかわして、石垣御神埼灯台へ。そのまま南下して入った石垣港。その灯台は、不安な夜間航海の心強い道しるべだった。取材をそこで終えた私たちは、石垣御神埼灯台で宮古島へ帰る渡真利さんの艇を見送った。数日前に私たちを見守ってくれた灯台の目線から見下ろすヨットは、あまりにも小さかった。

その姿はとてもはかなく見えて、でもしかし、なによりも勇敢で愛おしく映った。

とどのつまり、人生とは物語のようなもので、いや、物語そのもので、あなたはその物語の主人公なのである。ヨットやボートで訪れたその航程が、たどり着いた絶景に主人公にしか分かりえないギフトを添える。あなたにとっての島々を巡る冒険は、そんな一瞬の出合いのためのものであるのかもしれない。

 

 

沖縄県 
黒島/黒島北
Kuro-shima

座間味諸島の無人島、黒島。元ダイバー、カメラマンの山岸重彦が海の仕事をするきっかけになった場所/泊地:宜野湾港マリーナなど

 

 

沖縄県
多良間島/前泊港
Tarama-jima

風が消えたマジックタイム。多良間島北部の泊地、前泊港は不思議な夕暮れの景色を見せてくれた/泊地:前泊港

 

 

東京都
南島/扇池
Minami-shima

父島からツアーボートでのみ上陸できる南島の扇池。まるで、映画『紅の豚』のポルコ・ロッソの隠れ家のようだ/泊地:父島の二見港

 

 

沖縄県
座間味島/安護の浦
Zamami-jima

安護の裏の大浜(ウハマ)で、アダンの林からアンカリングしたヨットを見る。今すぐ走り出したくなる光景である/泊地:座間味港

 

 

沖縄県
伊江島/タッチュウ
Ie-jima

伊江島(いえじま)のシンボル、タッチュウ(城山/ぐすくやま)の頂上、岩の上から恐る恐る崖下をのぞき込む。まるで鳥になったような気分だ/泊地:伊江港

 

 

ゴールデンウイーク、夏休みの航海計画の一助にとお送りしました絶景記事。同じ島などひとつもなく、ましてや同じ航海はただのひとつもありません。今年のあなたの航海。それはほかの誰かに理解されないものかもしれませんが、あなたにとっては何物にも代え難い一生の記憶になるのかもしれません。そんな海にまつわる人生を歩む皆さんを誇らしく思い、この特集もその思い出のひとかけらになれたらと熱望し、本記事を終えます。

 

(文=中村剛司/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社、 中村剛司/Kazi編集部)

※本記事は月刊『Kazi』2024年7月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

 



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