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今回は、2023年5月19日付けで配信されたニュースの中から、世界でも話題となっている、日本のメーカーの取り組みに関するニュースをお届けしよう。(舵オンライン編集部)
環境への配慮が世界的な関心となっている昨今。この5月に、日本では自動二輪メーカーの「BIG 4」が協力して、水素エンジンの開発・研究に取り組むための組合を設立した。また、英国のエクセター大学が今週初めに水素船舶推進システムの独立試験センターを開設するなど、船舶の代替燃料として水素を利用するための取り組みが活発化している
5月17日、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキという自動二輪メーカーの大手4社が、小型モビリティ向け水素エンジンの基礎研究を目的とした「水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合(HySE:Hydrogen Small mobility & Engine technology)」を設立に向け、経済産業省の認可を得た。この組合では、二輪車、軽自動車、小型船舶、建設機械、ドローンといった小型モビリティ用の水素エンジンの開発のために、各社が持つリソースを結集していくという。
水素を従来の燃料と比べた場合、燃焼時の主な排出物が水であるという利点がある(=脱CO2)。しかしその利用にあたっては、燃焼速度の速さに加え、着火領域の広さから燃焼が不安定になりやすいこと、また、小型モビリティでの利用にあたっては燃料搭載スペースが狭いなどといった、大きな問題を克服していかなければならない。
●Hyseの主な研究開発の内容および役割分担(ホンダ|5月17日付けニュースリリースより)
①水素エンジンの研究
水素エンジンのモデルベース開発の研究(ホンダ)
機能・性能・信頼性に関する要素研究(スズキ)
機能・性能・信頼性に関する実機研究(ヤマハ、カワサキ)
②水素充填システムの検討
水素充填系統および水素タンクの小型モビリティ向け要求検討(ヤマハ)
③燃料供給系統システム検討
燃料供給システムおよびタンクに付随する機器、タンクからインジェクター間に配置する機器の検討(カワサキ)
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一方、英国南西部では、PEP(Pure Energy Professionals)とエクセター大学の共同プロジェクトである「Hydrogen Boat Centre」がオープンした。このセンターでは、さまざまなコンポーネントやシステム全体のテストを行い、ボートにおけるクリーンな水素推進システムへの移行を加速させることを目指している。
この研究機関での取り組みにおける重要なメリットは、理論的なアプローチと現実的なアプローチの双方に対して、前もって仮想的な性能試験を行うことができることだという。
PEPのJames Davison氏は、「仮想的なシミュレーションは、物理的なハードウェアに投資する前に、システムの微調整や最適化を行う機会となり、その結果、自分たちがやろうとしていることが実際に達成可能であるという確信を与えてくれます」と述べている。「また、内燃機関船と同等の性能を持つ水素推進システムで、燃料消費量やシステム効率を直接比較することも可能です」とも話している。
ヨーロッパ地域開発基金(ERDF)の一部資金援助を受けて、コーンウオールのエクセターズ・ペンリン・キャンパスに設置されたこの機関は、小型商業船やプレジャーボートのシステム設計、統合、規制、経済性に関する知識を広く提供することを目的としている。
(文=Tony Esposito /IBI 翻訳・補足=舵社/安藤 健)
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