自分たちで修理した船で島を目指せ! DIYで無人島計画

2021.03.30

愛知県の知多半島、河和(こうわ)港。ここに、朽ち果てたカッターが2艇。

その2艇はまもなく船首尾線で真っ二つに切断され、おしゃれなベンチとしてリメイクされる予定だという。

「ちょっと待った! 直せばまだ使えるのに!」

そう叫んだのは、帆船乗りの山本 海(やまもと・かい)さん。

“航海に出よう! 人生を冒険しよう!”をテーマに活動するスピリット・オブ・セイラーズの代表だ。

海さんはこの廃船寸前のカッター2艇の管理を志願し、修復を開始した。

みんなでカッターを修復しよう、そして、自分たちで直したカッターに帆を揚げ、無人島を目指そう!

こうしてはじまった「DIYで無人島計画!」。

このすばらしい取り組みは多くの賛同者が集まり、計画は進んでいった。

 

大事なことなのでもう一度書く。

「自分たちで修復したカッターで無人島を目指す」

なんという魅惑的なフレーズ。少年少女だったあのころのときめきを、なんと刺激する言葉だろうか。

 

この模様は、月刊『Kazi』2021年1月号&2月号にて、海さん自身の手記により紹介した。 今回は、この取り組みに参加した記者の目から見た「DIYで無人島計画!」を紹介してみたい。

海さんからこの話を聞いたのは昨年の9月。修繕していたくだんのカッターが完成したので、テスト航海に出るという。

まじか!

私は知多半島へ飛び、このセーリングカッターの初航海に立ち会った。 河和港に集合したのは12人。

みな、このセーリングカッターのレストアに参加してきた面々だ。 その堂々たる表情。

張られた胸は天を仰ぎ、高々と上げられた鼻は天を通り越してのけぞるほど。

進水式とテストセーリングは無事終了している。 到着した河和港の岸壁には、ゆうゆうと下架されたセーリングカッター〈KAMOME〉号の姿があった。

 

初航海は"有人"の佐久島を目指す。出航前の櫂(かい)立て!

 

 

河和港から佐久島は約7マイル。

 

 

山本 海さんは企画を思い描くとき、まずその思いをイラストに起こす。 その全文を紹介。

 

カッターで島を目指す!!
DIYで無人島計画

知多半島河和港から三河湾に浮かぶ島々を自分たちの手で直したボートで目指します。

ボートは漕ぐこともできるし、セール(帆)で風を受けて、風の力で走ることもできます。

・海賊やバイキングのような海の旅

・無人島で豪快なBBQ

・仲間と目的地を目指す

・初心者でもOK

・免許は必要ない!

・シンプルな生き方 陸地に囲まれた三河湾は波が穏やかで安全な海域。

港のすぐ横には美しいビーチが広がります。

SUP、ヨットなどほかのアクティビティも豊富です。

河和港!! 名古屋から電車で1時間! 港まで駅から歩いて5分! 南国の雰囲気がするステキな港です。

 

 

photo by Spirit of Sailors

 

 

■レストア開始!

船底に穴が開き、ドレンコック(水抜き栓)から水が延々と流れ出る。らちが明かず、デッキを剥ぐと……。ハルとデッキの間は水浸しだった。水漏れの原因を突き止め、キールにセメントを詰めてデッキを戻した。 

 

 

水漏れを修理し、デッキを塗りなおす。
photo by Spirit of Sailors

 

 

ネームプレートももちろんDIY。
photo by Spirit of Sailors

 

 

アキラさん(左)が作製したネームプレート。文字は金色に! 海さん(右)も満面の笑み。
photo by Spirit of Sailors

 

 

マストパートナーを設置して、リギンを張って……マスト立て完成です。
photo by Spirit of Sailors

 

 

ラダーとティラーも美しく仕上がりました。
photo by Spirit of Sailors

 

 

ついにレストアが完成した!
photo by Spirit of Sailors

 

 

いよいよ進水式!
photo by Spirit of Sailors

 

 

セールプランはメインとジブのスループに。メインセールは、扱いやすいガフリグに。

 

 

海さんは帆船乗り。多彩なロープワークでセールを完成させていく。
photo by Spirit of Sailors

 

 

■初航海に出航! 目指せ佐久島

ぐるっと話は戻って、初航海の朝。出艇しセールをアップ! メンバーから歓喜の声があがる。感動の瞬間。風は北西10~18kt。意外と吹いてきた。

 

 

ジブとガフリグのメインセールに風をいっぱいに受け、〈KAMOME〉号が海面を滑る

 

 

順調に帆走し、入港時はセールを降ろして櫂(かい)で漕ぐ。

 

 

佐久島に上陸! 大人はビール、若者はジュースで乾杯!

 

 

メンバーのケビン君が、採取した貝を食べる! まさに野生児だ。「しょっぱくてうまい」とのこと(笑)。

 

 

もうひとりの野生児、メイさんが採取した磯ガニ。リノちゃん(中央)にワイルドなプレゼント。

 

 

島に着いたらBBQに決まりでしょう。新鮮魚介を焼きまくり。

 

 

メイさんのウクレレがみんなを癒やす。レストア中も、この音色に癒されたのです。

 

 

島でやってみたかったことの一つ、釣り。エサはもちろん現地調達。

巻き貝、カメノテ、フナムシを試したところ、フナムシに軍配が。

「釣りをするときに、もうエサを買う必要なし!」と海さん(笑)。 

 

 

復路は風がなく、全行程漕ぐことに……。潮流がきつく、苦渋の決断で曳航を選択した。 

 

 

河和港に無事帰還した「DIYで無人島計画」チーム、1期生のみなさん。この笑顔がすべてを物語っています。 

 

 

思い出すのは、参加者の皆さんの笑顔。

あそこまでボロボロだったカッターをレストアすることは、並大抵のことではなかったとだろう。

セーリングに長けたメンバーも多いが、そうでない人にとって往路の強風は怖かっただろう。

復路、潮流に逆らって進んだローイングは、全員が疲労困憊しただろう。

そうして達成した離島への初航海。 自分たちで直したカッターだから、どんな構造か、どこが丈夫でどこがデリケートかもよくわかる。

艇をいたわりながら操船するメンバーたち。

艇を知り尽くしているからこそ、プッシュできるし、セーブもできる。

高校生から年配の大人まで。

セーラーも、そうじゃない人も、ここに集まったメンバーは、その瞬間、確かに全力で少年少女に戻っていた。

その瞬間に立ち会えて、本当によかった。

次なる目標。少年少女たちはいよいよ無人島を目指します。

 

(文・写真=Kazi編集部/中村剛司 写真=スピリット・オブ・セイラーズ)

※関連記事は月刊『Kazi』2021年1月号、2月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ

 

小学生のワカコちゃんが製作した1期生のフラッグ。「Dを帆にしたり、Iを灯台にしたり、文字のところを工夫しました」。

 

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