なぜかアラからよく出汁が出る根魚。せっかく釣り上げて持ち帰ったからには身だけでなく、そのアラから出る出汁も堪能したいもの。
ていねいに下ごしらえすれば、一段上のおいしさが得られるのだが、では、具体的にどういった方法でアラを下ごしらえすればおいしく出汁が取れるのか。ここでは、アラ汁の作り方を参考に見ていきたい。
教えてくれるのは東京築地目利き協会の荒川あやこさんだ。
今回は仲卸さんに頼んでカサゴを入手しました。あまり出回っていなかったので、宮崎産の2尾で390グラムという小さなカサゴでした。極力捨てるところがなく、おいしく食べられる調理をしていきます!
エラと内臓。肝が小さいですが、これから冬に向かって栄養を蓄えて大きくなってゆくのでしょう
肝と胃袋を切り離しました。あとで調理するので取っておきます
三枚おろしにしたあとのアラです。手前は身からすいた腹骨。身は皮をひいて刺し盛りに
頭からカマを切り離し、胸ビレ、腹ビレを切り離します。頬の部分も特に必要ないので切り離します。カマが大きい場合はカマを半分に切っておくと食べやすいです
残ったこれらを使って出汁をひいていきます
ヒレの部分は、手や口にささるとケガをする恐れがあるので使いません
ボウルに入れて塩(この量で小さじ1くらい)をして15分ほど放置します
ちなみに、カサゴの骨は硬いのでハサミを使うと楽にアラを切り分けることができオススメです。私が愛用しているのは藤原産業の万能はさみ「SK11 SML-200」
アラに塩をして待っている間に、肝や胃袋、皮もおいしく食べられるように、こちらも処理していきましょう。
包丁を入れて胃袋を開き、胃袋の表裏を包丁でこそいできれいにします
胃袋に多めの塩をまぶし両手の指でもみ洗いするようにし、その後洗い流してぬめりを取り除きます
水洗いした肝と、ひいた皮と一緒に胃袋も湯がいていきます
水に酒と塩を入れて沸騰させ、胃袋はしっかりと5分ほど湯がきます
肝と皮はさっと湯がき氷水に落とします
すべてキッチンペーパーにとり水分をきります
ここまでしたら、またアラ汁のほうに戻りましょう。
塩をして15分たったアラを霜降りにするため、沸騰した湯に入れます
湯の中で大きくゆっくりとかき混ぜたら冷水にとります。アラが入ると水がぬるくなるので、いったん水を変え、冷水の中で、アラに残っているウロコや血、内臓の汚れなどを1片ずつていねいに指でこすって取り除きます。ここが生臭さを残さず、おいしいアラ汁を作る一番のポイントになります!
結構不純物があります。ここまでで下ごしらえは完了! ここまでしておけば、次の手順は翌日でも大丈夫です
ていねいに下ごしらえしたアラとだし昆布、酒適量、水を加え、弱中火でじっくりと加熱します
沸いてきたら昆布を取り出し、出てくるアクをひきます。下ごしらえがていねいにできているので茶色がかったアクは出てきませんが、白いアクは出るので、しっかりと取りましょう
お好みの野菜を加えて数分煮てなじんだら、みそを加えて出来上がりです
湯がいた皮と肝と胃袋を小さく切り、刺し盛りに添えます。肝をアラ汁にのせてもよいでしょう。肝じょうゆでお刺身というのもいいでしょう。また、皮や胃袋のコリコリとした食感も合わせて楽しんでください
荒川あやこ
東京築地目利き協会理事。同協会が主催する「魚がしコンシェルジュ認定講座」の運営を通じ、豊洲市場の仲卸と一般消費者の橋渡しを担い、日本の魚食と食文化をつなぐ活動をしている。日本初の野菜ソムリエ上級プロでもあり、魚と野菜のおいしい食べ方の提案をしている
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