【取材余滴】/写真家の大竹英洋さんと、集大成の写真集

2022.06.12

みなさん、「ノースウッズ」という場所をご存じですか? それは北米中央北部の原生林に囲まれた湖水地方のこと。6月21日発売予定の『カヌーワールド』VOL.24では、このノースウッズをメインフィールドにしている日本人写真家、大竹英洋さんのスペシャルインタビューを掲載しているのですが、先行して少しだけ、その大竹さん&写真集についてご紹介しようと思います。

 

(文=CANOE WORLD編集部/星野 淳 写真=舵社/宮崎克彦)

 

 

私が大竹英洋さんを知ったのは、2011年5月から始まったナショナルジオグラフィック日本版サイトの連載「ノースウッズの森へ」でした。この連載では月2回のペースで4年間、全86話にわたって大竹さんの文章と写真が掲載されたのですが、とにかく文章が生き生きしていてグイグイ引き込まれ、また写真がとっても素敵だったんですね。

内容は、“狼の夢“に導かれて単身でノースウッズに旅立った大竹さんの「心と写真の物語」——なのですが、なんのツテもなく、ただその情熱だけで世界的に活躍する写真家のジム・ブランデンバーグに弟子入りすべく訪ねていく最初のくだりからして、最高なんです。

 

 

なんたって、最初にたどり着いた米国の町から、ジム・ブランデンバーグが住んでいる(であろう)ムース湖まで、「急ぐたびではないし、急ぎたくなかった」という理由で(本当はもっと理由はあります)、陸路ではなくカヌーを使って水路でのキャンプ旅を選択するんですから(しかもカヌーはそのときが初体験)。

その物語は後に書籍化され、「第7回 梅棹忠夫・山と探検文学賞」を受賞。さらに先月文庫化されたので、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

 

そして、ぼくは旅に出た。

はじまりの森 ノースウッズ

大竹英洋 (著・写真)
文春文庫(刊)
■価格:1,122円
(問)文藝春秋
mail : i-bunko@bunshun.co.jp
https://books.bunshun.jp/list/bunko

 

で、大竹さんはカメラを生業にして、その後もずっとノースウッズに通い続けます。そして昨年、20年間の活動の集大成となる写真集『ノースウッズ  生命を与える大地』にて、ついに国内でも有数の権威ある写真賞「土門拳賞」を受賞しました。
私は、最初にそのニュースを聞いたとき、ナショナルジオグラフィック日本版サイトに連載していたあの大竹さんと同一人物だとは、すぐには結びつかなかったのですが、偶然にも共通の知り合いがいて、「その大竹さんですよ」と教えてくれました。
しかも、「このコロナ禍でノースウッズに行けず、いま日本にいる」との情報をいただき、すぐに熱烈にアプローチ。話はトントン拍子に進み、無事に『カヌーワールド』VOL.24のインタビューを行うことができた、というわけなんですね。

 

ノースウッズ

生命を与える大地

大竹英洋 (著・写真)
クレヴィス(刊)
■価格:2,750円
(問)クレヴィス
TEL:03-6427-2806
https://crevis.co.jp/

 

6月21日発売予定の『カヌーワールド』VOL.24では、「水辺の漕ぎ語り 特別編」として、大竹さんの写真をふんだんに使ったグラビアページとともに、スペシャルインタビューを掲載しています。
また、大竹さんの現地でのカヌーキャンプ旅の様子や、旅や撮影で実際に使用しているチェストナット 50パウンドスペシャル(60年代後半~70年代前半に造られたウッドキャンバスカヌー)なども登場します。
ぜひ、そちらもご覧くださいね。

 

大竹英洋(おおたけ・ひでひろ)

1975年京都府生まれ、幼少期より東京都世田谷区で育つ。一橋大学社会学部卒業後、1999年から北米の「ノースウッズ」と呼ばれる地域での撮影をライフワークとしている。2019年、日経ナショナルジオグラフィック写真賞2018 ネイチャー部門最優秀賞を受賞。2021年、写真集『ノースウッズの森 生命を与える大地』で第40回土門拳賞を受賞。

 


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