【フネのDIY術】/内装と外装② 施工時に考えることって?

2021.10.04

月刊『ボート倶楽部』では、2019年から「フネのDIY術」という記事を連載し、東京ボート(埼玉県八潮市)のベテランスタッフの協力のもと、ボートに関するDIYの技術や船体に対する情報をお伝え中。今回は、2020年2月号に掲載した、「内装と外装② 施工時に考えることって?」から内容を抜粋してお届けします。


 

イメージする

DIYにおけるフネの内装と外装について、今回も東京ボートのサービス部長、伊藤幸洋さんにお話を伺った。今回のメインテーマは、内装や外装の施工前に、どういうことを考えているかについて。

「そもそも、内装っていうのは、フネの本来の機能と直接関係がないものだったりするんです。フネは、水に浮かんで走ればいいわけですよね。それに限っていえば、内装になんてこだわらなくたって、最低限その機能は果たせます。でも、プレジャーボートなんで、どうせ乗るなら楽しく乗りたいじゃないですか。音楽をかけたり、見た目をかっこよくしたり。内装とはそういうものだと思います。例えば、コントロールパネル部分にカーボンシートを貼るとか。走る機能にはまったく関係ないけど、高級感が出ます。だから、まずはどういう空間にするのか、その人の趣味趣向を大事にして、トータルでイメージすることが大切です」

 

最近のオーディオ機器は、無線を使って手元のスマートフォンで操作することもできるので、必ずしも操船席の近くに設置する必要はない。また、写真のはめ込みタイプのオーディオ機器の場合、パネルの内外でほかのパーツと干渉しないかどうかなど、事前にシミュレーションをしておくと失敗が少ない

 

写真左半分がオーディオ機器の背面部分で、右半分がワイパーのモーター部分。ギリギリの距離で収まっているが、しっかりと検討した結果である

 

加えて、前回も少し触れたが、自分のボートライフがどういうものかを想定することも大切だ。

誰と乗るのか、何人で乗るのか、なにをして遊ぶのか、なに釣りをするのか、バースにはどちらの舷で係留するのか・・・。もっと言えば、船上をどういう動線で移動するのか、今後どういうふうに遊び方や同乗者が変わっていくのか、など。

すべてのボートライフに適した内装・外装は存在せず、それぞれに合った形を選択していくしかない。自分にとって理想のボートを作り上げるには、まずは自分のボートライフをしっかりと把握することが肝要となる。

 

統一感を保つ

「最初にしっかりと全体的、将来的なプランが決まっていれば、統一感が保たれます。例えば、最初にキャビン内に椅子を一つ設置して、数年後に別の椅子を付けるから、スペースを空けておこうと考えるとします。そして、数年後、実際に新しい椅子を付けようとなったときに、もう同じ生地が売っていない、なんてことは十分にありえますよね。それを避けるために、最初の椅子を設置したときに、生地を多めに買っておくとか、そういった将来への備えも大切になります。新しい椅子を造らないにしても、補修用としてその生地を使うことができますから。あるいは、見やすいからと、コントロールパネルのど真ん中にGPSプロッター魚探を取り付けてしまうと、次に新しくソナー用のモニターを設置するときにスペースがない、なんてことも。僕の場合は、そういう事態に備えて、航海計器などは基本的に、端から取り付けていくようにすすめています」

 

ヘッドコンパートメントの純正のトビラ(写真左側)に合わせて伊藤さんが造った、収納ボックス用のフタ。光の当たり方の関係で違った色に見えるが、実際にはほとんど同じ色である。また、柄も若干異なるが、言われなければ気づかないだろう

 

伊藤さんのこうした考え方は、多くの経験の積み重ねによって得られたものであり、一朝一夕で真似できるものではない。そのため、本記事や近くのマリーナスタッフの話などを参考にして、DIYでの内装・外装施工時のヒントとしていただきたい。

そのほか、普段から、フネの内装・外装に使えるものにどういうものがあるのかについて、知識をストックしておくことも大切だ。リメイクシートの柄や種類、艤装品などについてはもちろんのこと、一見すると関係なさそうなアイテムも、DIY時に流用することもできる。伊藤さんは、小さなギャレー用のシンクを造るときに、フードバイキングなどで使われる、シルバーのトレーを使ったことがあるという。日ごろから、ジャンルを問わずにあらゆるアイテムに視野を広げておけば、意外なものがぴったりとフィットするかもしれない。

 

バウデッキのアンカーウェル内部に設置された仕切り。アンカーやアンカーロープを収納するだけにしてはスペースが広かったため、仕切りを入れて、フェンダーなどを整理して収納できるようにしている

 

一枚の写真に見る プロの頭の中

電動リール用の電源(中央)と、陸電のレセプタクルの設置位置には、伊藤さんのこだわりが詰まっていた

 

電動リール用電源の設置位置
写真中央部にある電動リール用電源は、この位置にあることに意味がある。下すぎると、釣りのときや移動時につま先をぶつけてしまうかもしれない(はめ込み式になっているのもそのため)。また、もしフタが向かって右側に開くようになっていたら、開きすぎて壊れてしまう可能性がある。左側なら、収納スペースにフタが当たって、開きすぎることはない。加えて、左側にフタが開くのは、フネが走っているときに勝手に開くのを防ぐためでもある。

 

陸電のレセプタクルの設置位置
もともとアフトコントロールステーションの横にあった陸電のレセプタクルを右舷後部に移設。理由は、ウオークアラウンドの通路をふさがず、かつ、トランサムの左側にエントリーがあるフネなので乗艇時に邪魔にならないようにするため、など。また、できるだけ上部に設置しているのは、なるべく水に触れないようにするための配慮だ。係留ロープの邪魔になることも考えられるが、離着岸時には陸電ケーブルは外しているものなので、実際には干渉することはない。

 

(文・写真=BoatCLUB編集部)

 

※本記事は『BoatCLUB』2020年2月号から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。

 

東京ボート
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