ボートを使ったライフセービング種目|世界選手権IRB競技に日本代表が出場

2024.08.27

ライフセービングというと、砂浜を走ってゴールラインを目指すビーチフラッグスや、パドルボードやサーフスキーを使った種目を思い浮かべる方が多いと思う。

そして、水辺での命を救うために活動するライフセーバーたちが、日常の鍛錬の成果を競い合うライフセービング競技は、競技者として結果を求める他のスポーツとは性格が少し異なっている。

 

photo by The 1st Japan National Lifesaving IRB Championships

 

そんなライフセービング競技に、ボートを使った種目があることをご存じだろうか。「IRB(Inflatable Rescue Boat)」というレスキュー用ボートを使うもので、日本ではまだまだなじみが薄いが、世界の海辺でIRBは動力機材として使われているほか、競技自体も広く普及している。

 

8月20日~9月8日に、オーストラリアのゴールドコーストで行われる「ライフセービング世界選手権2024(Lifesaving World Championships 2024)」のIRB競技に、日本から代表チームがエントリー。8月21日に佐島マリーナ(神奈川県横須賀市)で行われた壮行会には、今年4月の全日本ライフセービング・IRB選手権大会を勝ち抜いた日本代表の西浜サーフライフセービングクラブの皆さんが参加し、全力を尽くすことを誓った。

 

photo by The 1st Japan National Lifesaving IRB Championships

 

IRB競技にはいくつかのクラスがあり、3人または4人で競う。ドライバーはスタートの合図とともに砂浜に置かれたIRBまでダッシュ(IRBにはクルーが先に乗り込んでいる)。エンジンをかけ、一気に沖まで走ってブイを回ったあと、クルーが海に飛び込んでペイシェント(溺者役)の選手をピックアップし、再び砂浜まで戻るやいなや、ドライバーはゴールまで駆け抜けるというものだ。

ドライバーには操船技術はもちろん、砂浜を走るアスリートとしての能力も求められる。また、クルーは急発進や急旋回を繰り返すボートの上で常に体重移動をしながら、ペイシェントをピックアップして泳ぐというスキルが必要となる。

「実際の救助において、IRBならではのメリットも多くあります。例えば、船上には要救助者を寝かせて即処置が可能なスペースもありますし、複数人を同時に救助することも可能です。練習をしているとき、実際にすぐ横で流された人を助けるような場面もあり、競技のスキルが実際にライフセービングに求められる技術とイコールの関係にあります」(鈴木慎一コーチ)

 

日本から初めてライフセービング世界選手権のIRB競技に参加する西浜サーフライフセービングクラブの皆さん。(左上から時計回りで)溝上晴斗キャプテン、岸 瑛心さん、髙橋 颯さん、立石隆真さん、森 陽菜子さん、大川莉奈さん、間根山花子さん、鈴木慎一コーチ(富田和佳子さんは欠席)

 

今回の代表メンバーの一人であり、女子チームのドライバーを務める森 陽菜子さんは、東京夢の島マリーナ(ユニマットプレシャス)のスタッフとして勤務している。お客さまや同僚からの信頼も厚い。

休日はもちろん、勤務前や勤務後にスイムやランのトレーニングも欠かさないそうだ。ボートライフを過ごすユーザーにとって、森さんのようなスキルを持つスタッフの存在はとても心強いはずだ。

「大会に参加することが、とても楽しみで仕方がありません。世界選手権に出るからには、たくさんのメダルを持って帰ってきたいです」(森さん)

 

ユニマットプレシャスから、PFD(ライフジャケット)10着と競技用ヘルメットが代表チームに贈呈された。右は末長宏之さん(ユニマットプレシャス)、左は溝上キャプテン

 

男子チームのドライバーを務める髙橋 颯さん。ライフセービングの本場であるオーストラリアでの半年間の武者修行ののち、1カ月ほど前に帰国したばかりだという

 

今回の世界選手権には、なんと(!)約7,000人もの選手が参加するとのこと。大会が開かれるオーストラリアは、ライフセービング競技がとても盛んなのだという。2032年のブリスベン五輪(オーストラリア)では、ライフセービング競技が大会種目として採用される可能性もあるのだそうだ。

 

水辺の事故を減らしたいという気持ちで活動を続ける日本代表チームの皆さん。8月31日に日本を発ち、決戦の地、オーストラリア・ゴールドコーストに向かう。

前回の世界選手権(2018年)ではIRB競技のメダルはゼロに終わったが、今回はベストを尽くしての活躍が期待される。プレジャーボートを楽しむ私たちも、そんなライフセーバーたちの活躍に熱いエールを送りたい。

 

(文=舵社/安藤 健 写真=舵社/落合明人)

 


【Lifesaving World Championships 2024】

開催期間:8月20日~9月8日
開催地:ゴールドコースト(オーストラリア)
※IRB競技(4種目)は9月4日に実施

日本ライフセービング協会 特設サイト
https://ls.jla-lifesaving.or.jp/lifesaving-sports/jla-high-performance-program/jhpt-lwc2024/

大会公式サイト
https://www.lwc2024.com/

 


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