2023年10月に開催された第26回横浜ベイサイドマリーナオープンヨットレース(以下、YBMオープン)取材に際し、私(雑誌Kazi編集部の中村)もどこかのチーム乗せていただき同乗取材ができないかと知り合いを訪ねたが、タイミング悪くことごとくふられてしまった。
ということで、YBMの頼れるアニキ、松尾 晋さんに相談。
「素晴らしいチームがいますよ。23回ほど連続で出場する、関東学院大学体育会ヨット部OBの〈かたつむり〉(岡本24)チーム。合計年齢301歳、平均年齢75歳のベテランチームです!」
こうして私は、名門関東学院ヨット部OBのお歴々で構成されたオールドソルトチームの門をたたいた。艇名はかわいらしいが、きっとおっかねえチームなんだろうな・・・。期待で胸が膨らみます。
笑顔で迎えてくださった〈かたつむり〉チームのみなさん。後列左から時計回りに、艇長の山本 勤さん(80歳)、古尾谷弘一さん(76歳)、青木幹隆さん(76歳)、井上政夫さん(69歳)。合計年齢301歳!
艇名の〈かたつむり〉のフォントがかわいらしい。一部剥げているが・・・
かたつむりチームのオーナー、 貝道和昭さん(神奈川県セー リング連盟名誉会長)
緊張して訪れた〈かたつむり〉。スターンにはカタツムリのイラストが三つ。バウの艇名は「む」以外剥げている。
「お、舵社! 来たな!」と迎えてくれたのは、クルーの古尾谷(ふるおや)弘一さん(76歳)。YBMと伊東サンライズマリーナにパワーボートを持つオーナーでもある。
「あ、電話いただきましたか? 携帯を車に忘れてきちゃって」と青木幹隆さん(76歳)。日本ハンザクラス協会理事であり、セイラビリティの発起人の一人。
「私が最年少。来年古希ですが、いまも一番下っ端です(笑)」と井上政夫さん(69歳)。モスクワ五輪470級代表の箱守康之さんと同期で、ともに練習した仲。
「ようこそ、〈かたつむり〉へ」と、柔和な笑顔で迎えてくださったのが、艇長の山本 勤さん(80歳)。〈かたつむり〉のオーナーは、同じく関東学院ヨット部出身の貝道和昭さん(神奈川県セーリング連盟名誉会長)。「貝道さんがオーナーで、私が艇長って感じでやっています。今はこの4人で頑張っていますよ。YBMオープンは最初の2~3回だけ艇の準備が間に合わなくて欠席、それ以降は皆勤を続けています」(山本さん)
なかなかのメンバーである。平均年齢75歳ながら、皆さん現役バリバリのレーサーゆえ、私が足を引っ張るわけにはいかない。事実、これまでの20数回の参戦はほぼ6位以内の入賞をはたしている。
艇長の山本 勤さん(80歳)。セイラビリティ横濱の理事長および、パラオでもOP級指導を行うセーラー
〈かたつむり〉のメンバー。左から青木幹隆さん(76歳)、井上政夫さん(69歳)、古尾谷弘一さん(76歳)
終始冗談を言い合い、和やかなムードのかたつむりチームの艇上は、準備信号が上がると少しだけピリリとし、ヘルムスマンの井上さんはクールな舵さばきで、風上サイド有利のスタートラインの一上(いちかみ)、第一線で見事なスタートを見せた。
「でもね、ここまで(笑)。このフネはかなり古いですから、タッキングアングルがとても悪い。あとは皆さんの邪魔にならないところを走ります」と井上さん。スピネーカーは使わず、ジェノアの観音開きで楽しく進む〈かたつむり〉。レーティングは0.910と参加艇最小ながら、オープンクラスBの32艇中着順10位、修正は6位と71秒差の7位。レース中にがちゃがちゃと撮影し、集中力をそいでしまいすみませんでした(涙)。
ピリッとするスタートシーン。一上からベストスタートを切った!
スターンのイラストがかわいい、〈かたつむり〉(岡本24)。関東学院大学ヨット部OBで構成されるレースチームだ
リラックスムードのダウンウインド。ジェノアを観音開きにしてのんびりと
レースをフィニッシュし、デッキで乾杯!(ヘルムスマンの井上さんは水)
YBMオープン恒例の表彰パーティー。笑顔の喧騒のなか、私はかたつむりチームのテーブルで古尾谷さんにYBMオープンの魅力について尋ねてみた。
「毎回思いますが、ヨットを楽しませてくれる場ですね。みんなと会って、ヨットに乗って。ヨットは死ぬまで楽しめる、唯一の場所ですから」
セーリングを楽しみ、パラオ旅行に一喜一憂する横浜の夜。オープンレースの正しき形がそこにはあった。
大いに盛り上がったYBMオープン恒例の表彰パーティー
合計年齢301歳&強豪関東学院大学ヨット部OBチームと、びびりながらの参戦でしたが、皆さん本当に優しく、面白く、そして楽しい方々でした。ありがとうございました!(筆者中村は左端)
(文・写真=中村剛司/Kazi編集部 写真=山岸重彦/舵社)
※本記事は月刊『Kazi』2024年1月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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