美しく魚影濃い海を臨む南国の港|北谷町フィッシャリーナ

2023.09.08

月刊『BoatCLUB』で連載中の「突撃! マリーナレポート」は、全国のマリーナを巡り、その特徴や素晴らしさを読者諸氏にお伝えする連載。舵オンラインでも、その一部をご紹介しよう!!

今回紹介するのは、沖縄県中頭郡北谷町にある北谷町フィッシャリーナ

※掲載情報は、取材当時(2022年11月)のものです。


沖縄県中頭郡北谷町

北谷町フィッシャリーナ

透明度の高い海、温暖な気候、独自の文化に象徴される沖縄県。たくさんの島々からなるが、中でも沖縄本島はアクセスがいいこともあって人気が高く、年間を通して訪れる人が多い。その島の中部に北谷町フィッシャリーナはある。近場には釣りのポイントが多く、沖には美しい環礁帯が広がるが、そこで遊ぶボーターにとっては、泳ぐ海ではなく釣りをする海として認識されている。

 

(トップ写真説明)
対岸から桟橋と事務所のある複合施設うみんちゅワーフを臨む。桟橋の支柱に一部塗装がはげているところがあるが、大型の台風接近と高潮が合わさったときに水位が上がって桟橋が上昇したあとだという。ビジター桟橋は50フィート用×2と40フィート用×2の4艇分のスペースが用意されている。レンタルボートの利用も可能だ(運営はフィッシャリーナではない)

 

 

目的別の保管形態

北谷町の中でも北谷町フィッシャリーナがある周辺は、リゾート開発が進むエリアだ。迷路のような通路が入り組んだ商業施設は、カラフルな色彩に満ちていてショッピングを楽しむ人たちで常ににぎわっている。飲食店も多く、沖縄そばやタコライスといった沖縄ならではの料理を出す店も多い。海沿いはテラス席が広がる飲食店が立ち並び、まるで海外の街並みのような雰囲気を醸している。そんな商業施設に隣接して多くのホテルが林立し、一帯は一大リゾート地のよう。

そんな一帯の端に位置しているのが北谷町フィッシャリーナだ。保管形態は海上と陸上だが、海上はクルーズ船やレンタルボートなど事業目的のボートのみ、逆に陸上はプライベートで楽しむ個人のボートのみの保管。陸上保管しているボートのオーナーのほとんどは近隣に住む人だそうだが、県外オーナーも少しだけいる。ただ、県外の人が置く場合は、県内に住所のある船舶管理責任者を立てなければならないそうだ。それは、台風が近づいた場合などにすぐにボートに駆けつけられる人が必要なことを意味する。

台風接近の予報が出ると、フィッシャリーナは各オーナーに連絡し、それぞれのボートの養生などは基本的に個人でやることになっているそうだ。台風接近と高潮が重なると一帯は海水が上がってきてプールのようになってしまうので、海上保管はほかのマリーナに行くか上架し、陸上保管のボートもすべてロープでがっしりと固定させる。それでも船台が動いてしまうこともあるのだという。

上下架は隣接するスロープで行うが、保管艇ならば自分のクルマで上下架してもいいそうだ。なお、マリーナのように、電話一本で出航前日の下架をフィッシャリーナ側でしてくれるようなサービスはない。前日下架がしたければ、自分でボートを下ろしに行って、係留しておく必要がある。

 

フィッシャリーナ事務所(下)があるうみんちゅワーフ(上)。ここでカートを借りて商業施設を回ることもできる。また那覇空港までの直行バスの発着場でもある。海から訪れる人も多く、ビジター利用は年間160~200艇ほどと人気

 

陸上保管の1艇に割り当てられたスペースが広い。台風接近時に養生をするためのリングも多い。これらを使ってがっちりと養生するのだろう

 

魚影の濃い海が広がる

マリーナのようなサービスは受けられないが、その分、保管料は良心的だとボートの整備に来ていたボーターが話してくれた。

「保管したいって人が多いみたいだけど、今はいっぱいだし、オーナー同士も仲よくて、スタッフの対応も気持ちがいい。居心地がいいから出ていく人はいないと思うよ」

とは、出会ったボーターの言葉だ。釣り事情についても聞いてみると、基本的には、南の宜野湾沖、北の読谷沖、もしくは西のチービシ(慶伊瀬島)の大きく三つに分けられ、そのどこかで釣りをすることが多い。ただ、最近宜野湾沖はあまり釣れないようで、チービシに行くには海が凪いでいないと行けないので、自然と読谷方面に行くことが多いようだ。

釣り方はそれぞれだが、水深は30~300メートルくらいをジギングやエサ釣りでねらうのが多いとのこと。この魚を釣る! というよりも、そのとき釣れるおいしい魚を釣るために、風や潮にまかせてボートを流し、生きエサにする以外は小魚はリリース、1キロ以上ならば持ち帰る。「じゃないとご飯にならないでしょう」と言う。魚影の濃い海なのだ。

よく釣れるのは当地でミーバイと呼ばれるハタ類と、タマンと呼ばれるフエフキダイとその仲間。またタチウオなども指5本サイズどころか手のひらサイズ(魚体に対して直角)の幅のものが上がることもあるそうだ。記者もタイラバでの釣りをさせてもらったが、するどい岩礁が続く根際を流すたびに適度にアタリが届き、釣れる魚が毎回のように違うので面白かった。

釣りの間、何度も透明度の高い海に飛び込みたくなったが、地元の人に聞くと大人は泳がないそうだ。海は泳ぐものではなく眺めるものだそうで、ボーターも海水浴を楽しむ人はいない。ただ、県外から訪れる人は別で、レンタルボート利用の多くは透明度の高い海に潜って楽しむという。旅先の候補地として魅力的すぎる海なのだ。

 

フィッシャリーナに隣接するスロープ。沖縄ならではの赤瓦の屋根が特徴的だ。ここを使用して上下架を行う。大潮の干潮時には浅くなるところもあるので、キールのあるセールボートの保管はしていない(ビジターの係留利用は可)

 

海から来て最奥にある桟橋。ここは一時係留場で、クルマを桟橋に横付けできるので、オーナーが給油のためのタンクローリーを呼んだりする場所になっているとのこと

 

敷地内には大きな工場もあるが、フィッシャリーナの施設ではなく、ヤマハトラスト店・マリンランドの工場。取材時に出会ったボーターは愛艇にヤマハの船外機を積んでいるのですごく便利だと話していた

 

タマンやミーバイと呼ばれる魚たちをはじめ、いろいろな魚種が釣れてくる魚影の濃い海がマリーナ周辺には広がっている。ただ、小さい魚は持ち帰らないとのことで、すべてリリースしていた

 

北谷町フィッシャリーナ

https://chatan-fisharena.com/

 

(文=茂木春菜/『BoatCLUB』編集部、写真=『BoatCLUB』編集部)

 


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