今回は、孤高の釣り人Mr.ツリックが、2023年12月に、食べておいしい魚のカイワリをコマセ釣りでねらったときの様子をお届けします。事前の情報によるとカイワリが好調で、当日はほかの出船者がカイワリを釣ったとのこと。期待が高まります。(舵オンライン編集部)
冬はやはり東伊豆へ
みなさま、こんにちはMr.ツリックです。
今回の釣り場は東伊豆の伊東にある井上丸サンであります。真冬の厳寒期に確実に獲物をゲットできるありがたい釣り場として、この時季には高確率でツリックが回遊してくる貸しボート店です。
冬のターゲットは、オニカサゴ(イズカサゴ)にカワハギとアマダイがメインかナ。ただ、カワハギは前回オデコをくらったばかりだし、オニは前に井上丸サンを訪問したときにねらったし。となると、残すはアマダイですか。
ん~、アマダイもオデコ臭というかぐわしい香りがそこはかとなく漂う釣りなので、できるだけ近寄りたくない魚なのですヨ。まぁ、常時オデコばかりの人が、なにをいまさらって感じですがネ。それでも、何か釣りたい。できればおいしい魚がイイなんてぇワガママは尽きないのですヨ。
とりあえず、井上丸サンのウェブサイトをチェックしてみたら、カイワリが好釣ではありませんか。カイワリはおいしくて釣り魚の中で一番好きかもしれない。手のひらサイズの魚なのに、身がしっかりしていて甘みが強いですナ。特に刺身がおいしいですよね~。
ということで、魚礁周りのカイワリを本命にする。釣り方はコマセ釣り。コマセマダイよりもアジ釣りをイメージしたほうがイイかしら。仕掛けはウイリーかアジ・イサキ用がちょうどイイ。そして、本命が決まってもオニカサゴやアマダイの仕掛けを押さえとして用意してゆくのはボート釣り人のサガですナ。
近年は真冬にしか訪れていない伊東の井上丸。去年は来ることができなかったので2年ぶりになりますか。店は港の目の前で駐車場もトイレも近い
当日はクリスマス。そんな日に男二人で釣りに来たのだ。朝の冷たい風が体の芯まで吹き込むのを耐えつつ、沖に見える初島の高級会員制ホテルを眺める
本命はカイワリだけれど、一応ほかの仕掛けも用意してきた。このほかにウイリー仕掛けもある。あと、ハリスとハリに、オニカサゴ用の身エサもね
ロッドから片テンビンまでは同じタックルでOKなのだ。ちなみに、サングラスを忘れました。忘れ物をするとよく釣れるジンクスはまだ有効か
広く探るか、とどまるか
伊東といえば、夏に海水浴で訪れる人も多いかと思います。その砂浜の沖、水深30メートル付近に魚礁が設置されている。東伊豆の伊東もなかなかのロケーションですよネ。中でも海からの眺めが最高ですナ。さらに、この号が発売されるころには、河津桜が東伊豆の山や街並みを淡いピンク色で彩り始める。釣りをしながらの眺めとしては、この上ないぜいたくな景色になるのであります。
その河津桜が咲き始める2月初旬よりさかのぼることひと月以上。クリスマスの朝に男二人でカイワリを釣りにきたのであります。海岸線の国道沿いで冷たい海風にさらされながら、ボート店主にレクチャーを受けるも、頭にあるのは沖に浮かぶ初島の豪華ホテルのベッドの中であります。アッチは暖かいんだろうなぁと。
無駄に愚痴ってもしかたないので、店主に釣り方のアドバイスをもらう。とにかく、カイワリが回遊してこないと釣りにならない。魚礁周りでアンカリングして釣っても、カイワリと遭遇しないこともあるそうだ。エンジン付きボートに乗るなら機動性をいかして、流し釣りで広く探って拾い釣りをしたほうがオデコの確率は低くなる。ただ、アンカリングのほうが群れに当たれば数は伸びるという。
それならば、最初は様子見で流し釣りをし、途中で手漕ぎボートの釣果を聞いて、カイワリが釣れているようならば、アンカリングに変更するなんてハイエナ的な作戦を立ててみた。
この日はほかに2艇の手漕ぎボートがレンタルされていた。どちらも魚礁周りでカイワリ・マダイねらいのようだ。この時季に手漕ぎボートでマダイが釣れる場所は貴重だ
久々の80号コマセカゴが重たい。コマセ満タンならなおさら。アタリがなければさらに重く感じる。手巻きりールで水深50メートルの往復はシンドイ
今回の釣行マップ(静岡県伊東市)
「海釣図V」(マップル・オンより転載)
コマセ釣りでねらう
道具をボートに積み込みいざ沖に出てみると、やはり湾の南側にそびえたつ手石岩の存在が際立つ。あの先の水深80~100メートルでのオニカサゴ釣りは魅惑的だ。サクッと数尾のカイワリを釣り上げ、早いとこオニ釣り場へ移動する考えも捨てきれない。まだ溶けきらないアミコマセをむりやりプラカゴにねじ込み、水深40メートルに落とし流し釣り開始。
コマセ釣りでボートを流す場合は、できるだけ同じラインをトレースするように流すのがコツ。でないと無駄にコマセをばら撒いているだけになってしまう。しかし、何回かタナを変えたりして流してみたものの、アタリもなければエサもなくならない。
しかたなく、もっと深い場所を流すことにした。アマダイもねらえる場所である。すると、着底直後にプルプルとアタリが出た。ロッドを立てると小魚が食いついた重みが乗る。深場の釣りで着底直後にジャミがヒットするとウンザリしますナ。しかも、コヤツは巻き上げ途中で姿を消した。たぶん、ヒメコダイだろう。アマダイ釣りでおなじみのゲストだ。食べてもおいしいし体形と体色で人気の魚だけど、よく顔つきを観察すると結構な凶眼である。よって、オイラは凶眼ヒメコダイと呼んでいる。
この流しもアタリは続かず魚礁近くまで流れてきたため、手漕ぎボートの人に釣果をたずねると、たまにカイワリのヒットがあるという。もうね、即決でアンカリングに変更ですヨ。2艇の手漕ぎボートから少し離れた場所にアンカーを入れる。もちろん、先釣している手漕ぎボートの潮下とかコマセの影響下に割り込むようなセコイことはしませんヨ。それから、「近くで釣らせてください」と声かけをしましょう。特にアンカーロープが長くなる深い場所でのアンカリングは他船と十分な距離を取ることですナ。
流し釣りからアンカリングに変更して、コマセを集中したらすぐにヒットしたマダイ。しかし、本日の本命はカイワリさまでアータではないのよネ
立派なサイズのアオハタ。近年はハタ系のキャッチ率が高いこの連載だが、いまだキジハタにはお目に掛かれていない。クエとかでっかいマハタにも合いたいなあ
最後にヒットした35センチのゴマサバちゃん。コイツはほかの魚より大切に持ち帰る。そして、その晩に“1ミリ締めサバ”として酒のアテになるのだ
釣れ始めたところで……
アンカリングしてからはコマセが効くようになったのか、魚探に反応が出始めた。魚探を見ていたY男が「底から8メートルあたりに反応が出ています」というので、コマセカゴを海底から10メートルまで上げてコマセを振るとマダイがヒット。30センチチョイの正月用の塩焼きにちょうどいいサイズではないですか。
その後も、「底から2~3メートルに魚影」の報告に、今回は待望のカイワリに違いないとタナを合わせたらフッキングしたのは良型のアオハタでした。次は底から5メートルでゴマサバ。こりゃ、ラクチンな釣りができる。カイワリをゲットするのも時間の問題だなぁ、なんてお気楽な雰囲気にひたっていたら、いきなり風向きが逆になる。
アンカリング中に風向きが逆になると、ボートの位置がまるきり違う場所に移動してしまう。元の位置にボートを戻すのは潮の流れもあり至難のワザだ。よしんば元の位置に戻れたとしても、コマセの流れも変化しているので元の通りとはいかない。大概の場合、この時点で釣れなくなる。
さらにこの日はこのまま強風に転じた。手漕ぎボート達は北東から南西に風が変わったとたんに撤収していた。賢明なのである。こちらのボートはなんとか釣りをすることは可能だが、いきなりの天国モード終了で、寒いわ揺れるわ釣れないわでやる気が失せてしまった。最近は、強風で早じまいのパターンが多い。
もっとも、天気のいい日はそれなりに釣れるものだから、「今日はココまで釣りすぎ注意」とか言って、結局、早じまいするのだがナ。まぁソーユーことで今回も本命オデコ。次回は風薫る5月号だ。さわやかにウキ釣りとかしてみたいなぁ。
最近、午後の終了時間までナギが続いたことがない。だいたい昼近くになると強風にたたかれる。しかし、ナギが続くと釣果がよくて早じまいしてしまうので結局、昼すぎには帰着
超さみしい当日の釣果。しかも、カイワリが釣れなかったので、この日も本命釣果ゼロのオデコ。この先、またオデコロードをばく進しそうだ
朝からアンカリングで釣っていた手漕ぎボートの人たちには、数は少ないながらもカイワリが釣れていた。われわれはあきらかな作戦ミスでしたナ
須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。
(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=幸野庸平/舵社)
今回お世話になった貸しボート店
今回借りた船外機艇(13,000円)のほかに、手漕ぎボートが多数。手漕ぎでも、魚礁周りのポイントに行くことができる。釣果情報は頻繁に更新されるので、予約前に何が釣れているかをチェックしよう。ちなみに貸しボートだけでなく、仕立て船もあります。
井上丸
[住 所]静岡県伊東市東松原町2-10
[連絡先]0577-37-3525
[料 金]3,500円~
[定休日]年中無休
月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。
今回は、『BoatCLUB』2024年3月号に掲載された「旬のカワハギをねらうゾ」を一部再編集したダイジェスト版をお届けしました。
※取材は2023年12月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。
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