貸しボート店探訪記/⑧とみうらマリンボートでマゴチねらい

2023.05.10

月刊『BoatCLUB』の奇数月号で連載している「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、料理上手な釣り人Mr.ツリックが、関東を中心に全国の貸しボート店を巡り、その地、その季節に合った釣りを楽しむ様子をお届けしています。

今回は、『BoatCLUB』2022年9月号に掲載された「泳がせ釣りでマゴチをねらうゾ」を一部再編集したダイジェスト版をお届けします。

※取材は2022年7月に実施。記事内に掲載されている写真の内容などは、取材当時のものです。


在りし日の富浦湾

みなさま、こんにちはMr.ツリックです。

さて今回のレンタルボートは内房の富浦湾。いわゆる有名な景勝地ではありませんが、なんと申しましょうか、落ち着いた心なごむ的な感じのするロケーションなのですヨ。まぁ、のんびり釣りを楽しむには最適というコトですナ。

ふた昔前の富浦は、レンタルボート釣りの聖地といわれていた超人気釣り場であった。最盛期の湾内には少なく見ても数百艇。もしかしたら1,000艇以上の手漕ぎボートがあったのではないかと思う。当然、貸しボート店が海岸に文字通り軒を連ねて営業していた。それが現在は、湾内の多田良北浜では2軒のみの営業。昔からのレンタルボートファンにとっては寂しい半面、広い釣り場をノビノビと釣ることのできるうれしさもある。

2馬力ボートが登場する以前、沖のポイントまでボートを曳いていってくれる曳き船サービスは、富浦湾だけのうれしいサービスであった。それぞれの店の曳き船が、一度に10艇前後のボートを曳いてはポイントまでの移動を、朝の出船時には2~3回繰り返す。そして、沖のポイントで同じ店のボートをまとめて釣らせるスタイルでした。

なので、アンカリングでの釣りが基本。たまに、流されて大きく船団からはずれたボートは巡回している曳き船に連れ戻されたりしていた。それでも、シロギスは釣れていたのだ。まぁ、普通に半束(50尾)はキープできた。それ以上はあとが大変なので、半束釣ったら道路が渋滞する前に帰ることにしていた。

昔は自動車道が整備されていなくて、エラく時間がかかったのですヨ。さらに、その先の都心に向かう高速道路もメチャ混みしていたなぁ。

それが今では、都心からだと三浦半島の釣り場に行くのと変わらないほどアクセスがラクチンになった。逆に伊豆方面は取材時点で小田原付近で高速リニューアル工事をしていたので、行く気になりませんワ。今年は雨による災害で通行止めにならないことを祈る。

 

大きなクーラーを提げて釣る気まんまんのワガハイ。ここは、受付、無料駐車場、トイレが近くにあり便利。ちなみに、国道127号から多田良北浜に曲がる角はセブン-イレブンが目印

 

今回はウキ釣りがメイン。よって、めずらしく乗船前にタックルの準備をする。陸上である程度、ウキ止め位置の調整をしておくとラクだ。奥のエンジン船が曳き船兼監視ボート

 

オープンしたてなので、すべてが真新しい。レンタルのライジャケもピカピカ。ボートもキレイに塗りなおしてある。当然、2馬力エンジンも元気ハツラツ。文句ナシ

 

出船時は満潮だったのでラクチンでした。干潮時は遠浅の海岸だからチョイと大変。夏はいいけど、寒い時季は濡れないよう長靴は必須。もっとも、ここの営業期間は4~11月だが

 

エサを確保するためのシロギス仕掛けとエサのジャリメ。オイラが本命のマゴチねらいよりもシロギス釣りに没頭しないよう、編集担当はジャリメを1パックしか用意していないのだ

 

照りゴチの季節

今回のターゲットはマゴチ。釣り方は釣った小魚をエサにする〝泳がせ釣り〟。それを、ウキ仕掛けでねらいます。ウキ釣りはタナの設定などに多くの手間を要し、重いオモリを使うテンビンやドウヅキ仕掛けに比べると手返しが悪く、多少の慣れが必要になる。しかし、アンカリングでも広い範囲を探ることができるため、流し釣りが苦手な人や、のんびり釣りたい人にオススメの釣り方である。

エントリーは6時。早朝から日差しが強めで日中の酷暑が思いやられるが、気持ちのいい朝である。シロギス釣り向きではない重めの海色が気になるものの、なにか久々に期待感がみなぎる。

普段は、乗船時のトラブルを避けるため沖に出てからタックルの用意をするが、準備に手間のかかるウキ仕掛けの場合は、ボートに乗る前に済ませておく。富浦湾内は深い場所でも水深10メートル未満だ。よって、あらかじめウキ止めをオモリから7メートルほどの場所に固定しておく。なお、サルカンから下のハリスとハリは沖のポイントに到着してからセットする。

 

シロギスザオを1投目から置きザオにして、ウキ仕掛けにハリを装着していたら、エサには少し大きめだけど、18センチほどの頃合いサイズのメゴチが釣れた。早速エサにする

 

ウキ釣りで一番エキサイトする瞬間を見逃し、アレ? ウキがドコかに消えた。などとノンキなことを言いつつも、海面下ににじむ赤いウキを確認し、大アワセをくれる

 

遠近法ナシのツリックポーズ。1投目でエサをキープし、ひと流しめで本命ゲットなんて快挙ですナ。さぁ、あともう2~3尾・・・とならず早々に帰りたくなるのがオイラの性分

 

ここでもエサのシロギスどころかメゴチさえ釣れない。しかたなく、巡回にきていた船長の「今は大房(たいぶさ)岬近くでもシロギスが釣れている」との情報をもとに再移動

 

水深数メートルの超浅場で、やっとシロギスとご対面。崖際の根周りで釣るシロギスは、小浜湾の釣り大会を思い出す。そして、いかにもアオリイカが釣れそうなロケーションである

 

ウキ釣りの魅力

ちなみに、編集担当はワームでマゴチをねらう。フィッシュイーターを釣るならルアーが手っ取り早いですナ。生きエサの確保から仕掛けの準備にタナの調整など、小難しい作業から解放される。ただ、獲物がいない場所でキャストを繰り返すときの徒労感はハンパないけどネ。

ワガハイもオカッパリのときはルアーを投げる。ねらいは主にクロダイ。最近はやりのチニングってヤツだ。家の近くにいい釣り場がたくさんあるからサ。それでもボートに乗れば、やはり生きエサ釣りがしたい。それも、テンビン仕掛けやドウヅキ仕掛けはNG。オモリが重たいため、エサの弱りが早いし、ヒット後のエキサイティングな獲物のファイトが半減してしまうから。

一方、ウキ釣りなら仕掛けが軽くてラクチンだし、生きエサの消耗も少ない。さらに、ウキが移動するのでアンカリングをしていても、広範囲を探れることが一番の利点だ。ただし、タナ取りが超メンドイ。まぁ、ソコがウキ釣りの面白みでもあるのですがネ。

 

この日エサとなったのは、5尾のシロギスとマゴチを連れてきてくれたメゴチ1尾のみ。ほかに、ネンブツダイとかイトヒキハゼとか、エサとなるような小魚は釣れなかった

 

夏のカワハギはキモが小さくて、キモ和えは作れないけれど、そのぶん身は美味になる。梅雨の季節に腹パンのカワハギが釣れたら、そのおなかには白子が詰まっているでしょう

 

泳がせテクニック

まずは、対象魚をヒットさせる場所を決める。例をあげれば、根周りとか、点在する根とか、藻際とかだ。そこの水深が基本になる。そして、そのポイントへウキが流れるようにボートをアンカリングする。ここが最大の難関。風と潮が影響するし、元気なエサだと潮上や隠れ場所に向かって泳いだりもする。何度も納得がいくまでシビアにアンカリングを繰り返すことだ。

ボートの位置が整ったらタナを合わせる。ねらう基本的なタナは海底から50センチほど上。ただし、遊泳力の低い小メゴチやピンギスはベタ底にする。

ここで注意したいのは、軽いオモリは潮や風の影響を受けるうえに、エサの小魚が泳ぐ。なので、20~50センチほどタナよりもウキ下(ウキからオモリまでの長さ)を長くしないと目的のタナにエサが届かないことだ。

例えば、ハリスの長さが2メートルの仕掛けで、水深5メートルのベタ底に設定するなら、ウキ止めの位置をオモリから3.2~3.5メートル上にする。水深5メートルの海底から50センチ上を流すなら、ウキ止め位置はオモリから2.7~3.0メートル上だ。

それから、潮が効いているときに弱ったエサを使うとエサが浮いてしまい、ウキ下と変わらない深さにエサがある場合もある。このへんの感覚は経験を積むしかない。エサの弱りはウキの動きを見ていれば判断できるし、エサが元気なときは泳ぐ方向をある程度コントロールすることもできる。また、ハリスの長さを短くすればタナボケは半減するけれど、エサの弱りが早くなるのであまりオススメしない。

富浦湾は平たんでなだらかな海底なので、水深差が少ない。また、丸根以外はさしたる有望な根がないため、エサを広く泳がせて様子をみる釣り方。ようするにラクチンなのである。

あらら、オイラにはめずらしくテクニック的なモノを書いてしまいましたナ。ついでに、ラインはエサの負担を極力減らすためにPE0.8号を使用。

そして、リーダーはフロロカーボン2号を20メートル。こんな長いのをリーダーといっていいのかわからんけれども、これはウキ止めに対応させるためです。つまり、水深20メートルまでカバーできるってコトです。これだけあれば、ほとんどの釣り場に対応できる。

ちなみに、ウキ仕掛けでコマセダイ釣りも可能。それなりのウキと仕掛けは使いますが、コマセダイ釣りにスレきったマダイもウキ仕掛けにはだまされる。

次回はソレでいきますかネ。

 

ハコフグはマゴチのエサには不向き。ああ、マゴチがいるときはエサが釣れず、エサがたくさん釣れるときはマゴチがいない。当然といえば当然な現象ですナ

 

マゴチのほかは、良型のカワハギ2尾と、エサとして泳がせ中に息を引き取ったシロギスが3尾。このゲストの中から、常にダダ漏れしているオヤジの小言で料理を作るとしよう

 

遠浅の海は見た目と異なり、海底は複雑である。この日は、波打ち際の数十メートル手前でボートから降ろされ歩き、深くなっている波打ち際で再度乗船するパターンだった

 

■今回の釣行マップ(静岡県伊東市)

「海釣図V」(マップル・オンより転載)

 

須藤恭介(すとう・きょうすけ)
愛称、Mr.ツリック。長年、月刊『ボート倶楽部』の筆者として活躍。現在、同誌に連載中の「孤高の釣り人Mr.ツリックの ふらっと貸しボートに乗りにきた」では、釣りだけでなく、釣果料理のノウハウを紹介している。

 

(文=須藤恭介[Mr.ツリック] 写真=幸野庸平/舵社)

 

■今回お世話になった貸しボート店

2022年4月にオープンしたばかりの貸しボート店。初めての人にもていねいに船外機の操作方法やポイントなどを教えてくれる。シロギス、マゴチ、ヒラメ、アジ、カワハギ、アオリイカ、青ものなど、多種多様な釣りものが楽しめるぞ。営業期間は4~11月。

とみうらマリンボート
[住 所]千葉県南房総市富浦町多田良954
[連絡先]090-6732-0108
[料 金]4,500円~
[定休日]12月~3月


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