ハンゼ315〈サニーサイドクルーズ〉が、第66回 パールレースのフィニッシュラインを切ったのは、スタートから34時間後の7月26日21時11分。フネに乗るのは本橋亜土(あど)さんと古田雄士さんのたった2人だ。(上写真の左が本橋さん、右が古田さん)
「仕事でもヨットでも、何かをやると決めたら、それを実現するにはどういう準備が必要かを考えて取り組むようにしているんです。今回、初めてのパールレースに初めてのオーバーナイト、そして初めてのダブルハンドで出ると決めて、『協力してくれる人を探さないと』と思い、雄士さんに頼みました」とオーナーの本橋さん。一方、頼まれた古田さんは「俺はレーサーじゃないって言ったんだよ!これ書いてね」と笑う。ではなぜ、180マイルを2人でゆくという大冒険に付き合う気になったのか。「パールに出たことない、オーバーナイトをしたことない、ダブルハンドも経験がないっていう奴の夢を実現してやろうと思ったんだよ」と古田さん。
これまで共同オーナーの1人としてヨットを保有し、トランスサガミヨットレースや湘南レースに出て、バウマンを務めていたという本橋さんは、1年前に新艇のハンゼ315をワンオーナーで購入。エアコンに温水シャワー、さらにワインセラーまである、豪華なクルージング艇だ。
周りの仲間たちが毎年欠かさず出るパールレースに、自分の船で出たいと思ったが、購入したばかりのクルージング艇で、フルクルーのチームを組むことはできなかったという。そんな時にパールレースにダブルハンドクラスがあることを聞き、「これだ!」と2人で出ることを決意。「パーッと道が開けた感じがしました」と本橋さんは振り返る。そして、パールレースにダブルハンドで出るための改造と準備を始めた。
「セルフタッキングジブだったのでジブカーを設置して、レース用のジブとジェネカーを購入。タックライン、カニンガムホール、トラベラーなどを設置し、バックステイは交換しました」(本橋さん)
古田さんの協力を得て、練習のために初島ダブルハンドヨットレースに出たり、国際VHF免許を取ったり、IRC証書を取得したりと、準備は山のようにあったが、何とかスタートに間に合った。そして7月25日11時のスタートを迎える。
左手前の白いセールが〈サニーサイドクルーズ〉(ハンゼ315)。スタートエリアにて
「出てとても勉強になりました。これを毎年続けていったら、確実に技術が上がると思います。47歳なんですが、この年で何かに挑戦するってなかなかないことで、今回出て自分の弱い部分も分かりましたし、スキルアップすることができました」と本橋さんは満足そうだ。次はフルクルーで出ることが新たな目標になっている。
(文・写真=森口史奈/Kazi編集部)