セーリングクルーザーは、レースだったり長距離クルージングだったり、その目的に応じて、さまざまな種類のモデルがある。そんななかで「デイセーラー」というカテゴリーのセールボートは、いわば純粋にセーリングそのものを楽しむためのものであり、クラシックなスタイルにシンプルな装備というのが定石といえるだろう。
そんなデイセーラーを専門に建造しているのが、オランダのサフィアヨット(Saffier Yachts)社だ。「WORLD CLASS DAYSAILORS」というフレーズを掲げる同社では、2023年1月現在6モデルを扱っているが、今回はその中の一つである「サフィアSe33ライフ」(以下、Se33ライフ)を紹介していこう。
2021年に発表されたSe33ライフは、2022年の「ヨーロピアン・ヨット・オブ・ザ・イヤー」において、スペシャルヨット部門のウイナーに輝いた。ちなみに前年には同じサフィアのSe27レジャーも同部門のウイナーとなっており、サフィアのモデルが世界で高い評価を得ていることがうかがえる。
試乗取材の機会を得たのは、昨秋に日本に入って来た国内1号艇。横浜で実施した取材当日は、風速が10m/sを軽く超えるヘビーなコンディション。デイセーラーには少々厳しい海況かとも思ったのたが、結果的にそんな心配は大きく吹き飛ばされてしまうこととなった。
試乗したプロセーラーの本吉夏樹氏も、そのパフォーマンスにはいい意味で驚かされたとのこと。
「ヘルム感覚はハイパフォーマンスボートに近く、クルージングボートにありがちな、重くかったるい感じはまったくありません。トップスピードは15ノット程度だったと思いますが、とにかく気持ちよく波の中をサーフィングさせて操っていく感覚は、レース艇そのものでした」
また、安定性も特筆すべきポイント。1人あるいは少人数での操船を意図した艤装が施されているため、上の写真を見てもわかる通り、かなりヘビーなコンディションであり、なおかつライフラインすら備えていないセールボートでありながら、ヘルムスマン以外の乗員2人は笑顔を浮かべてリラックスしている。
船体はバキュームインフュージョン工法で造られており、軽く、そして硬いのが特徴。
余計なものをそぎ落とした、シンプルなデッキ構成。ドッグハウスが低く、全体的にロープロファイルなスタイルとなっているが、当然ながら操船中の視界もよい。
ハリヤードやコントロールロープ類はデッキ上には露出しておらず、ヘルムスマンの手元のウインチまでリードされている。少人数での操船も容易であり、見た目においてはすっきりとした印象を強く受ける。
試乗艇は、エステックのイミテーションチーク材が全面に施されていて、非常に高級感があふれる仕上がりとなっている。
コクピット。コントロールロープ類が露出していない上、メインシートのトラベラーは後方に設置されているので、ゲストが快適に過ごせる広いスペースが確保されている。
両舷に電動ウインチを装備。ウインチの下に操作用のボタンが二つあるのは、左舷と右舷それぞれを操作できるようにするため。ヒールしている中で、わざわざ風下側に移動して作業する必要もなく、非常に使い勝手がいい。
ジブはセルフタッキング仕様。セーリング中は、基本的にマストより前に行く場面はほぼないといっていい。
ヘッドセールはファーリング仕様。アンダーデッキファーラーが採用されているので、ドラムは見えない位置にある。バウスプリットを備えており、ジェネカーを展開することも可能だ。
クラシックなスタイルをベースとしながら、現代的なエッセンスを上手に盛り込んだデザインが特徴。デッキの一番後ろの広いスペースは、セーリング中には非常に快適に過ごせるエリアである。
試乗艇のエンジンは、ヤンマー2YM15を搭載。エンジンルームには、コンパニオンウェイの手前からアクセスする。
姉妹艇のSe27レジャーとの大きな違いが、この居住空間。大人3人が足を伸ばして横になれるバースを備えており、デイセーラーとはいえども、1日~数日程度の泊りがけのクルージングにも十分対応するはずだ。
足下には間接照明が施されていたり、シンプルながらもセンスがあふれるインテリアデザイン。
コンパニオンウェイの階段を下りた左舷側には、簡易的なギャレースペースが設けられている。あらためて考えてみると、これだけで必要十分な装備といえるのではないだろうか。
ギャレーの反対側(右舷側)には、個室トイレが設けられている。こちらも十分なスペースが確保されていて、ゲストを招くときにも心配ない。
強風コンディションでのセーリングの様子は、ぜひともコチラの動画をご覧いただきたい。デイセーラーに対する概念を覆されること必至だと思う。試乗した本吉夏樹氏のコメントや、輸入元のオカザキヨットの秋本昂平さんによる解説もあるので、ぜひチェックしてみてほしい。
また、本吉氏によるレポートは、月刊『Kazi』2022年2月号(1/5発売)にも掲載されているので、こちらも是非ご一読を。
(文=舵社/安藤 健 写真=松本和久 取材協力=横浜ベイサイドマリーナ)
Saffier Se33 Life
●全長:9.6m
●全幅:2.85m
●喫水:1.70m
●重量:3,000kg
●セール面積:メイン33㎡、セルフタッキングジブ22㎡、ジェネカー93㎡
●燃料タンク:40L
●清水タンク:60L
(問い合わせ)
オカザキヨット
TEL:045-770-0502(横浜)、0798-32-0202(西宮)
https://okazaki.yachts.co.jp/
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