不安定な貿易風でスローペース
一人乗りで大阪~サンディエゴの太平洋横断航海を成功させた辛坊治郎さんは、現地時間6月22日、愛艇〈カオリンV〉(ハルベルグ・ラッシー39)とともに日本に向けてサンディエゴから再び出航した。トップ写真はサンディエゴ滞在時の整備の様子。
出航から45日が経った日本時間8月6日夜時点の位置は、北緯19度/東経163度の海域。周辺には大きな陸地のない孤独な航海が続いている。
日本に向けての追い風となる東寄りの風、貿易風をつかむために、往路より大きく南側の海域を航行している辛坊さんだが、このところその風が不安定で、往路のような嵐に苦しめられない反面、なかなか日本への距離が稼げない、もどかしい状況が続いている。
現在位置は古野電気の辛坊さん応援ウェブサイトで、ほぼリアルタイムで更新されている(PC閲覧推奨)。右端のフラッグは、復路スタート地サンディエゴの位置で、そこから左上の航跡は往路の航跡だ。
ギザギザの航跡を描いた往路の航海(上)と比較すると、復路の航海(下)はスムーズな航跡で、順調に進んでいることが見てとれる。単純な直線距離での計算では、この時点で全航程の65%をクリア、日本までは約1,800マイル(約3,300km)となっている。
絶海の孤島、ウェーク島
7月27日に日付変更線を越えてから、吹いたり吹かなかったりの貿易風。8月1~2日はほぼ無風で、艇上の辛坊さんは「漂流中」と語って、あまりのスピードの遅さに、残りの水と食料の心配をし始めるほど(実際には食料は十分に余裕がある)。
8月3日になってようやく待望の風は吹きはじめ、8月5日には珍しい出来事が。
ハワイ諸島のすぐ南側を通過してから2週間、久しぶりに島の近くを通過したのだ。それは、ウェーク島(Wake Island)という環礁で、日本の南鳥島の東南東約1,400kmに位置するアメリカ領土。この絶海の孤島は、第二次世界大戦下で1941年から1944年にかけて日本軍が占領統治していたという歴史を持つ。
航行しているのは沖縄のはるか南
辛坊さんが3週間以上航行しているのは、北緯20度以南の海域で、この海域に貿易風が吹くためだ。しかしながら沖縄の那覇(北緯26度)よりもずっと南であることから、とにかく暑く、除湿器から回収した水などを浴びてしのいでいるようだ。
そして目的地は大阪なので、日本に近づくにつれて、どこかのタイミングで大きく北上しなければならない。今後の船足にもよるが、1週間後くらいに小笠原諸島方面に向けて大きく転針する場面が出てくるかもしれない。日本へのアプローチでは、うまく台風を避けたいところだ。
辛坊さんは、本格的な台風シーズン前の8月下旬の日本到着を目指している。
■波乱万丈の往路航海を追体験
辛坊さんの公式YouTubeチャンネル『辛坊の旅』では、7月4日から、往路航海の模様を毎日動画でアップしている。4月9日の出航以降の様子が1日1本ペースで辛坊さんの「自撮り」で報告されており、太平洋横断を追体験できる、非常に興味深い内容になっている。
4月9日から6月17日にかけて行われた往路航海のまとめ。月刊『Kazi』8月号より。禁無断転載。
(文=Kazi編集部/中島 淳)
※辛坊さんの航海についての詳しい記事は、毎月5日発売の月刊『Kazi』5~9月号に掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。
辛坊治郎さんの太平洋横断チャレンジを応援しよう!
古野電気の特設ウェブサイト
https://www.furuno.com/special/jp/shinbo-challenge/
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