
2023年に誕生した、“ヨットのW杯”であるスターセーラーズリーグ(SSL)ゴールドカップに再び日本が挑む。国内の総力を挙げて組む日本代表には、“若き風”の活躍も欠かせない。35歳以下の熱き若手セーラーを対象にした、2回の代表セレクションの様子をここではお届けする。
(文=川野純平/Kazi編集部 写真=中嶋一成/レイラインメディア、川野純平/Kazi編集部)
※本記事は月刊『Kazi』2026年8月号の記事を再編したものです。
新門司と葉山
二つの海を舞台にしたセレクション
「スターセーラーズリーグ(以下、SSL)ゴールドカップ日本代表の若手セレクション開催」
その告知は多くの若手セーラーを駆り立てた。書類選考を通過し、候補生として認定された計16人(下記)が、セレクション会場となった福岡県新門司マリーナと神奈川県葉山マリーナに集まった。
SSL日本代表候補生(セレクション参加者、順不同)
古川諒真、山川瑛士、岡田海洋、木村直矢、水田隆文、大久保優輝、廣瀬翔大、中島拓海、福原颯太、谷川琢也、石田莞大、田原隼宇、國米 創、村田俊彦、高宮豪太、中川大河
まずはSSLゴールドカップという大会について説明しよう。
「Star Sailors League(スターセーラーズリーグ)」、通称SSLは、2013年にスイスで設立された国際的なセーリング競技組織である。
テニスのATPツアーをモデルとしたポイントシステムにより、世界各地のレガッタ結果を横断的にランキング化し、World Sailingからもグローバルなセーリングプラットフォームとして認定されている。
その旗艦イベントがSSL ゴールドカップだ。
「セーリング版ワールドカップ」をコンセプトに掲げ、World SailingからSpecial Eventステータスを付与された国別対抗戦であり、各国代表がワンデザイン艇であるSSL47に乗り込み、1レース4艇によるノックアウト方式で「World Champion of Nations」を競う。

スタジアムを背景にした大会のイメージ画像。サッカーのW杯のように、自国代表チームが熱く応援される大会になることを目指している

2023年の第1回大会を戦った日本代表TEAM Rising Sun Japan。使用艇であるSSL47では、艇の部品で体を支えてハイクアウトを行う
今回のセレクションは、11月に開催される第2回 SSLゴールドカップの日本代表の若手メンバーを選考するもの。
新門司マリーナでのセレクションは、同マリーナで展開されている実戦型トレーニング「FE28R SAILING BOOT CAMP」と連携する形で実施。
候補生たちはワンデザインキールボート「ファーイースト28R(FE28R)」に乗り込み、スパーリングパートナーとして招集された国内の実力派4チームと同じ海面で走り合うという、実戦に近い緊張感の中で自らの力を試した。



新門司マリーナセレクションは、藤田武己氏と(ECL Agency)と池田栄宏氏(ピー・アール・エフ|Sail On事業部)が企画する「FE28R SAILING BOOT CAMP」との共催が実現し、ワンデザインクラスによる実戦形式でのテストが特徴になった
続く第2回セレクションでは、ジェネカー艇である〈カボック〉(M.A.T.1070)を使用。
FE28Rでの選考とはまた異なる、大型艇ならではのクルーワークや総合的な判断力が求められる環境下で、同様に厳格かつ熱を帯びた審査と指導が行われた。



葉山セレクションでは〈カボック〉(M.A.T.1070、白岩一哉オーナー)を使用し、大型艇でのクルーワークや海上でのコミュニケーションが試される場となった
選考・コーチ役を務めたのは、世界の海で戦ってきた伊藝徳雄さんや早福和彦さんという日本が誇るセーラーだ。
海上での操船スキルやクルーワークはもちろん、陸上でのフィジカルチェック、さらにはチーム内でのコミュニケーション能力や理解力まで、多岐にわたる項目が審査された。
しかし、これは単なるテストではない。選考を通じてコーチングが行われ、トップレベルの知見が惜しみなく若手へと伝えられていく、継承の場でもあった。


世界で戦ってきたトップセーラーも、セレクションを通じてその経験を惜しみなく伝授した
日本のヨット環境において、社会人になってからも本気で競技を続け、世界を目指せる場は決して多くない。今回のセレクションの根底には、「若者が高い次元でセーリングに打ち込む環境を作りたい」という先人たちの強い思いがある。
それは新門司マリーナにFE28Rを導入した藤田武己さんや、FE28R SAILING BOOT CAMPを支援する池田栄宏さん、〈カボック〉のオーナーである白岩一哉さんも同様。彼らが共有する思いが共鳴し、このセレクションは成立した。
新たな世界へ挑む
闘志を燃やす若者たち
その熱意に応えるように、セレクションには世界の舞台に挑もうとする熱き若者が集い、全力でぶつかり合った。
選考に挑んだ木村直矢(30歳)は「やるからには高みに挑みたい。選ばれればチームに貢献し、日本のセーラーの実力を世界に示します」と静かに闘志を燃やす。
参加者で最年少の岡田海洋(19歳)は、将来を見据えた強い覚悟を口にした。「ヨットを職業にして生きていきたい。そのためにこの経験は絶対に手にしたい」。
こうした若き選手たちがキールボートの世界で、年齢も経験も異なるセーラーと同じ艇に乗り、世界という共通の目標に向かってしのぎを削る様子は、日本のセーリング界の未来を照らす光そのものだと感じた。
●選考内容
①セーリング

艇上でセーリングへの理解度、適性、コミュニケーション力などが試された。選考役の伊藝徳雄さんや早福和彦さんからのコーチングも
②フィジカル

腕立て伏せ、スクワット、バーピージャンプ各1分間×3セットを実施。回数ではなく、1分間という時間内でどれだけペースを落とさずに実施できるかが審査された
③面談


2人の選考役に、候補生が代表を目指す理由を伝える。「熱い気持ちを持つ若手がこれほどいることが分かり、日本の未来が明るく感じました」(伊藝さん)
この2度のセレクションを踏まえて、全年齢を対象にした代表候補選考は今後も続いていく。
今回日本を背負うセーラーが誰になるのか、そして何人の新風がメンバーに選出されるのか?
今後も『Kazi』ではSSLゴールドカップの続報を紹介していく。ぜひご注目を!
こちらは月刊『Kazi』2026年8月号掲載の記事をオンライン用に再編したものです。
ぜひ本誌もご一読ください♪
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