東京オリンピック・セーリング競技の日本代表選手紹介リレー、今日はフィン級の瀬川和正(鳥取県立米子産業体育館)です。コロナ禍でなかなか他の選手と走り合わせられない中、1人黙々と練習に励んできたといいます。レーザー級からフィン級に転向して1年弱、その短い期間で代表に内定しました。
フィン級
Men's One Person Dinghy Heavyweight
瀬川和正
「海外勢と五輪でやっと一緒に走れる。そこが素直に楽しみ」
■代表選考最終日に転向を決意
15人の日本代表に最後に加わった瀬川は、昨年2月まで自身がフィン級代表になるとは思ってもみなかったという。
「絶対自分がレーザー級の代表になると思っていたので、2月の最終選考(レーザー級世界選手権)までフィン級のことは全く考えていませんでした。それが世界選手権もしょっぱなでコケて、予選3日目が終わってブロンズフリート落ち。東京への道が絶たれて、決勝の4日目、5日目に考えて、6日目で転向を決意しました」
フィン級の選考は4月で、時間も艇体も教えてもらう当てもない中、フィン級に活路を見いだした。
「3月頭にクロアチアで艇体を借りて練習を始めました。地元のおじいさんにタッキングやジャイビングの基礎から教わって。その時はまだ体もレーザー仕様で体重は87kgくらい。周りから『まだ90kgにならないのか』と毎日言われて(笑)。そうこうしていたらコロナがはやり始め、3月中旬に帰国しました。プリンセスソフィアが延期になって、選考も雲行きが怪しくなったので船を買うことにして、5月初旬にやっと自分の船を受け取りました」
5月に相模湾で実施されたフィン級の代表選考レースで、オールトップという結果で代表に内定した瀬川
■性格に合っていた1人乗り
五輪と選考の延期で時間ができ、黙々と1人で練習に励んだという。
「ヨットは他艇との比較や競うことで分かること、自分を追い込めることがあるかと思いますが、コロナ禍で1人で練習するのは苦しい部分でした。活動拠点の境港(鳥取県)はある程度の風があって、難しい課題を自然がくれて、それに自分がどう対応すればいいかを毎日考えていましたね」
プライベートコーチはおらず、JSAFの国内合宿に3回ほど参加した。
「フィン級はチューニングの幅が広くて、自分であれこれ考えました。海の上でどんどん変えていって、自分が気持ちよく走れるときのデータを取りました。それが世界のスタンダードと合っているかわからないですけど(笑)」
そう、瀬川はまだ海外選手と走りあわせができていない。(※このインタビューは6月上旬に実施)
「五輪でやっと海外選手と走れる。みんなどのくらいのスピードなのか、これまで自分がやってきた成果はどれほどなのか。率直にそこが楽しみです」
大学は「無駄に6年行った」と瀬川は笑う。自身の性格やフィジカルに合うと思い、4回生の冬からレーザー級に乗った。リオ五輪も含めるとこれが2度目のキャンペーンで、結果としてフィン級代表の道に通じていた。
その性格とはどんなものなのか、自己分析を聞いた。
「内向的で面白くない人間だと思います(笑)。淡々とやっていくことが得意かな、そこに生きがいを感じられるのは自分のいいところ」
本人は控えめにいうが、この性格こそが、フィン級に何年も集中して取り組んだライバルとの遅れに追いつくことができた要因でもあるのだろう。「レーザー級とフィン級は違うけど、同じヨットでシングルハンド、一緒といえば一緒」というように、レーザー級で培ったダウンウインドテクニックも際立っている。五輪の目標は一つ、メダルレース進出だ。
「あとはもう、シンプルに基礎を突きつめていくこと。みんなやっているキープフラットとか波に乗せたりとか、そういうことをパーフェクトに近づけていきたいです」
瀬川和正(せがわ・かずまさ)
●所属企業:鳥取県立米子産業体育館
●出身:大阪府
●出身:31歳
●身長/体重:179cm / 96kg
●競技歴:13年
●経歴:浪速高校➡龍谷大学
●五輪出場歴:初
【応援メッセージ】
Kazi誌が企画した日本代表への応援メッセージの一部を掲載します。
・地元、境港から活躍をお祈りしています!(てっちゃん/40歳)
・メダル目指して頑張ってください!琵琶湖から応援しています!!!(MISAKI/27歳)
・最後の代表を最高の形で勝ち取った瀬川選手。オリンピックでも最善の走りを魅せてください。伸び伸び楽しんで世界をあっと言わせよう。(チームコタロウ/50歳)
この記事は、現在発売中の『Kazi』8月号を再編集したものです。ぜひ本誌『Kazi』もお買い求めください。
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(文=森口史奈/Kazi編集部 レース写真=矢部洋一 選手顔写真=濱谷幸江/日本セーリング連盟)
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