東京2020オリンピック・セーリング競技の最終日、11日目。今日は男子470級、女子470級のメダルレースが実施された。11日間にわたって、全10種目、350人の選手たちによる戦いも、いよいよ今日で終わりを迎えた。
今回の五輪には10種目全てに出場がかなった日本勢だが、予選の上位10チームによるメダルレースに残ることができたのは、男子470級の岡田奎樹/外薗潤平と女子470級の吉田 愛/吉岡美帆のみ。
日本セーリング連盟として当初掲げた目標は「メダル2個」であったが、昨日の予選終了時点で岡田/外薗にはメダルの可能性はなく、吉田/吉岡もメダルレースでトップフィニッシュし、なおかつ他チームが大崩しすれば銅メダルという厳しい条件になった。実質、メダルの可能性はなく、男女ともに一つでもよい順位で、そして8位以内に入賞して終わることが目標に切り替わった。
男子470級と女子470級の、予選オープニングシリーズ全10レースを終えた時点でのトップ3は次の通り。
■男子470級の予選終了時のトップ3
1位 21点 マシュー・ベルチャー/ウィル・ライアン(オーストラリア)
2位 41点 アントン・ダールベリ/フレデリック・ベリストローム(スウェーデン)
3位 45点 ジョルディ・シャマル/ニコラス・ロドリゲス・ガルシア=パス(スペイン)
14時30分、男子470級の予告信号が鳴る。南風9ktでO旗掲揚、パンピングコンディションだ。メダルレースのスタートシークエンスは、通常の5分ではなく3分のため、14時33分にスタート。失格せずにフィニッシュすれば、それが何着であっても金メダルとなるベルチャー/ライアンは、ピンエンドからポートスタートを選択し、スターボードタックの艇をかわしながら右海面へ。着実にバウを出していき、1上マークを2位で回航すると、ダウンウインドレグの中盤で首位に立つ。そのままトップは誰にも譲らず、フィニッシュは、オーストラリア、スウェーデン、ニュージーランド。ベルチャー/ライアンは、リオ五輪銀メダルの雪辱を果たす金メダル獲得となった。
好スタートを切った岡田/外薗だったが、終始、フリートの真ん中で展開し、順位を上げていくことができない。6位でフィニッシュし、総合成績は昨日から一つ順位を上げて、7位となった。この種目の日本勢としては、2008年北京五輪以来の入賞となった(松永鉄也/上野太郎の7位)。
「メダルレースでは1位を取って帰りたいと思っていて、気持ちを強く、そしてどういうレース展開にするかというコミュニケーションをしっかり取って、レースに挑みました。ただ、その後のブローをつかんだときの頭を出す具合や、どこでどういう勝負を仕掛けるかというところで、その勝負を仕掛けられる位置にいなくて、後手に回るような展開になってしまった」とレース後に岡田は振り返った。
スタート前にスピネーカーを揚げて走る岡田/外薗
男子470級のメダルレースのスタートシーン
メダルレースもトップフィニッシュを飾ったベルチャー/ライアン
ベルチャーに手を引っ張られて海に落ちたシャマル(左)。互いの健闘を称え合った
男子470級のメダルセレモニーの様子
今大会、メダルは自分たちで取って首にかけることになっている。ペア種目は、みな互いにメダルをかけあっていた
■女子470級の予選終了時のトップ3
1位 28点 ハナ・ミルズ/エイリー・マッキンタイヤ(イギリス)
2位 42点 カミーユ・ルコワントル/アロイズ・ルトルナズ(フランス)
3位 46点 アグニェシュカ・スクシプレッチ/ジョランタ・オガール(ポーランド)
15時33分、女子470級のメダルレースが始まった。スタートラインの真ん中から出た吉田/吉岡は1上で9位、ダウンウインドレグの中盤で10位になってしまう。このままでは入賞できない。2回目のダウンウインドで8位となり、そのままフィニッシュ。総合成績は7位となった。吉田にとっては4度目の、吉岡にとっては2度目の五輪が終わった。
女子470級ではちょっとした出来事があった。2上まで2位だったイギリスが、最終レグで5位まで順位を落とし、ポーランドの次にフィニッシュ。これをフランスが、イギリスはポーランドを先行させることで、フランスの銀メダル獲得を妨害したと主張し、プロテストする。最終得点ではポーランドとフランスは54点のタイとなり、その解消はメダルレースの着順によるため、4位フィニッシュのポーランドが銀、6位フィニッシュのフランスが銅となる。結局、これは却下された。
メダルレース終了後、吉田/吉岡は長い時間レース海面にとどまり、ゆっくりとハーバーバックした。スロープでは、ボランティアスタッフやチームメンバーから、温かい拍手で迎えられた。
「スタートからしっかり出て、自分の選んだコースを取った上での1上10位なので、それに対しての後悔はありません。一つでも順位を上げたいと思って臨みました。ポーランドよりは、スイス、ブラジル、スロベニアを見てレースをしていました」と吉田。
女子470級のメダルレースのスタートシーン
女子470級の吉田/吉岡。リオ五輪の5位に続く、2大会連続の入賞となった
ミルズは五輪2連覇を達成
女子470級のメダルセレモニーの様子
日本の470級が男女同時にメダルレースに進出したのは初のことで、ともに7位で同時入賞も初となる。しかし今大会をもって、男子470級と女子470級はオリンピックの舞台から姿を消す。男子は1976年モントリオール五輪から、女子は1988年ソウル五輪から採用された、伝統ある種目だ。3年後の2024年パリ五輪から、男女混合種目になる。そのことについて、岡田/外薗は次のように話した。
岡田「僕が470級に乗り始めた2014年時点では、まだ男子470級がなくなることは決まっていませんでした。五輪を実際に見て、この舞台を夢見たことで、そういった夢の舞台が一つなくなるというのは喪失感もありますが、時代はまた新しく先に進んでいるんだなと思います」
外薗「最後の男子ペアとしてオリンピックに出られたことは光栄だったとともに、日本開催でいい成績を取って終わりたかったなという悔しい思いもあります」
レース後の選手のコメント、最終成績は以下の通り。
■男子470級 岡田奎樹/外薗潤平
岡田「メダルレースは今大会を印象付けるレースで、これが実力なんだなと感じて、悔しさが残りました。それと同時に、やらなきゃいけないことはしっかりできたので、出し切ったなと強く思います」
外薗「最終レースはスタートも良く出られて序盤はいい展開で、あと半艇身や1艇身、ボートを出す能力が不足していたのかなと思っていて、実力不足だったかなと思います」
■女子470級 吉田 愛/吉岡美帆
吉田「メダルを狙って活動してきて、本当にメダルを取りに行くつもりでレースに入りましたけど、なかなか上手くいかないこともありました。今できることは全部出した結果なので、メダルを皆さんに見せたかったんですけど、しっかりこの結果を受け止めたいなと思います」
吉岡「リオ、東京と2回目の五輪で、東京ではメダルを取りたいという気持ちでここまで頑張ってきて、やっぱりオリンピックって厳しい世界なんだなと感じました。リオと今回の悔しさは全く違います。自分たちのできる精一杯のことをやってきたので、結果は悔しいですけど、内容に悔いはないです」
DAY10 最終成績
■男子470級(19艇)
1位 23点 マシュー・ベルチャー/ウィル・ライアン(オーストラリア)
2位 45点 アントン・ダールベリ/フレデリック・ベリストローム(スウェーデン)
3位 55点 ジョルディ・シャマル/ニコラス・ロドリゲス・ガルシア=パス(スペイン)
7位 82点 岡田奎樹/外薗潤平(7-4-4-11-13-9-5-4-15-13-12)
■女子470級(21艇)
1位 38点 ハナ・ミルズ/エイリー・マッキンタイヤ(イギリス)
2位 54点 アグニェシュカ・スクシプレッチ/ジョランタ・オガール(ポーランド)
3位 54点 カミーユ・ルコワントル/アロイズ・ルトルナズ(フランス)
7位 79点 吉田 愛/吉岡美帆(6-7-11-15-2-2-12-8-7-8-16)
●成績表
https://tokyo2020.sailing.org/results-centre/
●トラッキング(日本セーリング連盟 オリンピック応援サイト内)
https://www.jsaf.or.jp/tokyo2020/
●東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイト
https://olympics.com/tokyo-2020/ja/
(レポート=Kazi編集部/森口史奈 写真=矢部洋一)