ヤマハ船外機の信頼性の礎「幻の黄帽子」を62年ぶりに復元

2025.05.15

世界の水辺で活躍するヤマハ船外機。その「信頼の礎」を築いた60年以上前の製品(PC-3)が見事に復元され、現在、ヤマハ発動機の企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」で来館者の目を楽しませています。

コミュニケーションプラザの担当者から、「創立70周年を機に、外観だけでなく性能も蘇らせたい。苦労を重ねた技術者の想いを紡いで次の世代につなげたい」と、ヤマハマリーナ浜名湖に相談が持ち込まれたのは昨春のこと。普段はマリーナに停泊するオーナー艇の整備を行っている内田 尚さん(ヤマハ発動機サービス課)や、常駐サービス指定店の坪井 航さんにとってもこれは本業ではありません。それでも、声をそろえて「やりがいのある仕事。やるべき仕事」と、この大役を引き受けることとなりました。

使命感を持って引き受けてはみたものの、朽ちかけた船外機を復元するのは容易なことではありません。

「当時を知るOB技術者に助言を求めたり、図面や資料の提供もいただいた」と内田さん。坪井さんも「ゴムの劣化などはどうしようもないのですが、それでも(新たに部品を作るのではなく)できる限りオリジナルの部品を再生して復元したいと考えた」と振り返ります。「腐食したネジを1本外すのに半日以上」、「手描きの図面や残された資料も難解」……など苦労話は尽きませんが、それでも二人の表情はじつに明るく充実したもの。その理由の一つとして、復元のプロセスに多くの貴重な発見があったことが挙げられます。

「エンジンを開けて驚いたのは、シリンダーがスリーブレスだったことです。この時代に、スリーブレスを可能にする加工精度があったことに心底びっくりしました」と坪井さんが言えば、「海で使う船外機は、一つの故障で命にかかわる。材料選びや構造の工夫に、いまも受け継がれる絶対的な信頼性へのこだわりを感じました」と内田さん。そして「ルーツを知り、残すことはやはり大切」、「先人の想いやチャレンジ精神を感じることができた」と、このレストアプロジェクトを振り返りました。

エンジンを始動したのは陸上での一度だけ。「パラパラッという感じの小気味いいサウンドだった」ということですが、準備が整えば「ぜひ水の上でその推進力を体感したい」と、密かに計画を進めているそうです。

 

火入れ(エンジン始動)のセレモニーを終えた「PC-3」を囲み、達成感いっぱいで談笑する内田さん、鈴木社長、坪井さん(左から)

 

沿岸漁業のパートナーとして日本の津々浦々でヒットした「PC-3」は、当時、水路や運河などの海上交通でも活躍した(1964年撮影)

 

(問い合わせ)
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
本社:0538-32-1145 / 東京:03-5220-7211

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