スペイン・バルセロナで開催されていた第37回 アメリカズカップは、防衛チームのエミレーツ・チームニュージーランドの勝利で幕を閉じた。
防衛チームへの挑戦権をかけた予選、ルイ・ヴィトン カップへ参戦したシンジケートは、イネオス・ブリタニア(英国)、ルナロッサ・プラダ・ピレリ(イタリア)、アリンギ・レッドブルレーシング(スイス)、アメリカン・マジック(アメリカ)、オリエント・エクスプレス(フランス)の5カ国。この熾烈なルイ・ヴィトン カップを制したのが、英国でサーの称号を持つ英雄、ベン・エインズリー率いるイネオス・ブリタニアだった。
1851年に英国で開催された万国博覧会に端を発するアメリカズカップ。もともとこの銀杯を作製したのが英国であり、その第1回大会で当時の新国アメリカにカップを奪取されて以来、173年もの間、この銀杯は祖国英国の地を踏んでいない。
かようなストーリーがあるがゆえ、アメリカズカップ本戦(決勝マッチ)に英国が進むと、イベントが過熱するのはいつものこと。170年超の悲願、達成か!? ということである。
決勝マッチは10月12日にスタート。1日に1~2レースが開催され、全14戦、7戦先勝したチームが優勝となる。 10月14日の第4レースまで、エミレーツ・チームニュージーランドが4連勝。これはまさかのワンサイドゲームになってしまうかと危ぶまれたが、10月16日の第5、6レースをイネオス・ブリタニアが連勝。4対2で迎えた10月18日以降、イネオス・ブリタニアがエミレーツ・チームニュージーランドよりも先にフィニッシュラインを切ることはなく、10月19日、第9レースをもって、ニュージーランドが7戦先勝を決め、見事銀杯を守り切った。
メインカット | photo by Ivo Rovira / America's Cup | バルセロナのレースビレッジのメインステージ、高々と銀杯を掲げるエミレーツ・チームニュージーランドのスキッパー、ピーター・バーリング
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
防衛艇〈タイホロ〉(AC75)のデッキに立つ、エミレーツ・チームニュージーランドのメンバー
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
「MOLTES GRÀCIES BARCELONA(どうもありがとう、バルセロナ)」と記した巨大フラッグを掲げて凱旋する〈タイホロ〉
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
優勝の熱狂に、伴走艇、観覧艇、運営艇が入り乱れ、どこまでもどこまでも付いていく。このときばかりはマーシャル(レース運営管理者)も各艇のコントロールはできないだろう
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
母国ニュージーランドを離れ、異国の地バルセロナでの勝利に歓喜するキーウィたち
photo by Ricardo Pinto / America's Cup
互いに健闘を称えあう両スキッパー。ベン・エインズリー(左)とピーター・バーリング
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
エミレーツ・チームニュージーランドの立役者、ネイサン・アウタリッジ。フォイリングシーンからオリンピックまで、バチバチのライバルだったバーリングとアウタリッジの2人がともに手を握ったことも、今回の見どころの一つだった
photo by Ricardo Pinto / America's Cup
時速100kmを超えるスピードで走るモンスターボート、AC75。その壮絶なバトルは、これぞヨットレースの頂点と言って過言ではないものだった。普通のセーラーでは決して操ることができない高速艇、それがAC75なのである
photo by S.Enault / INEOS BRITANNIA
英国の英雄、ベン・エインズリー。これからどのような道を歩むのか、注目が集まる
最終日のレース海面とレースコース図
7対2で決着した第37回アメリカズカップ
photo by Ivo Rovira / America’s Cup
あらためて、エミレーツ・チームニュージーランド、おめでとうございます!
(文=中村剛司/Kazi編集部)
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