8月22日21時(日本時間)、ついに第37回アメリカズカップの予選、LOUIS VUITTON PRELIMINARY REGATTA(ルイ・ヴィトン 予選レガッタ)が開幕した。この「8月22日」という日は、アメリカズカップにとって特別な意味を持つ。後に第1回アメリカズカップと呼ばれることとなる、ワイト島一周レースが開催されたのが1851年の8月22日。
173年の歴史が始まった、記念すべき日だ。
アメリカズカップの関連記事はこちら!
メインカット | photo by Ricardo Pinto / America's Cup / America's Cup | 第3レース。スタートマニューバで激戦を繰り広げるNYYCアメリカンマジック(右)と、イネオス・ブリタニア
開催地はスペイン・バルセロナ。レースディレクターはイアン・マーレイ。南西の風12~15ノット、波高0.5mの海況をよしと判断し、レース開催をアナウンス。ここに、第37回アメリカズカップが開幕した。
今回のアメリカズカップ採用艇AC75の乗員は8人。ヘルムスマンとトリマーは2人ずつ。タッキングやジャイビングで舷を渡ることはなく、左舷ヘルムスマン&左舷トリマー、右舷ヘルムスマン&右舷トリマーを固定とし、さらに両舷にサイクラー(足漕ぎグラインダー担当)が2人ずつ配置されるという体制だ。
photo by Ian Roman / America's Cup
初日の第1レース(R1)は、アリンギ・レッドブルレーシング(スイス/アリンギ、上写真)対オリエント・エキスプレス・レーシング(フランス/オリエント・エキスプレス)。スタートで先行したアリンギが終始オリエント・エクスプレスをルーズカバーする展開。200m以上の大きな差がついたように見えたが、タイム差は36秒。 驚愕の高速展開のレースとなった。
photo by Ian Roman / America's Cup
第2レース(R2)は、エミレーツ・チームニュージーランド(ニュージーランド/ETNZ、写真左)対ルナロッサ・プラダ・ピレリ(イタリア/ルナロッサ)。いきなり防衛チームと全大会の挑戦者という強豪同士の戦いとなったが、結果はルナロッサの電気系統トラブルで大味のワンサイドゲームに。
photo by Ian Roman / America's Cup
第3レース(R3)は、NYYCアメリカンマジック(アメリカ/アメリカンマジック、写真中央)対イネオス・ブリタニア(英国/イネオス)。トップフォイリングセーラー、トム・スリングズビー(右舷ヘルムスマン)と、英国の英雄、ベン・エインズリー(右舷ヘルムスマン)の戦い。スタートから際どいポジション合戦を繰り広げた両艇。アメリカンマジックのスリングズビーが風下、イネオスのエインズリーが風上でのポジションでのスタートとなった。
しかし、ここは投資金額、予算の差か……。イネオスのボートスピードが際立つ。風上から風を遮ろうとするエインズリーに対し、ギリギリのピンチモードでそれを切り抜けるスリングズビー。一進一退の攻防の末、第1マーク(風上マーク)までの勝負を制したのはスリングズビー。
以降、巧妙なカバーでリードをキープ。風上マークのランディングでタッチダウンする瞬間もあったが、アメリカンマジックがリードを守ってフィニッシュした。今回の有力チームであることは間違いない。
photo by Ricardo Pinto / America's Cup / America's Cup
第4レース(R4)は、ルナロッサ(写真右)対オリエント・エキスプレス。スタート前のトラブルでオリエント・エキスプレスが大幅に遅れ、こちらはルナロッサのワンサイドゲームに。1,100m以上、1分12秒の初日最大差で幕を閉じた。
ついに始まったルイ・ヴィトン予選レガッタ。熱き戦いをお見逃しなく。
LOUIS VUITTON PRELIMINARY REGATTA
8/22 リザルト
R1
アリンギ・レッドブルレーシング 1
オリエント・エキスプレス・レーシング 0
※勝利チームが「1」、敗北チームが「0」
R2
エミレーツ・チームニュージーランド 1
ルナロッサ・プラダ・ピレリ 0
R3
NYYCアメリカンマジック 1
イネオス・ブリタニア 0
R4
ルナロッサ・プラダ・ピレリ 1
オリエント・エキスプレス・レーシング 0
(文=中村剛司/Kazi編集部)
※月刊『Kazi』2024年9月号に関連記事あり。バックナンバーおよび電子版をぜひ
●AC日記04-7|アメリカズカップのレース艇比較研究、序章①
●AC日記04-8 | アメリカズカップのレース艇比較研究、序章②
●月刊『Kazi』2024年9月号|特集は「レーサーの資質|いちセーラーから、レースの道へのステップアップ」