第37回アメリカズカップ関連イベントである、ウイメンズACとユースACの制式艇、AC40クラス。
一般への販売が開始されたことで話題になったこのハイスペック艇に、初の注文が入ったという!
本稿は月刊『Kazi』2024年4月号に掲載された内容を再集録して公開します。(編集部)
※タイトル写真|photo by Hamish Hooper / Emirates Team New Zealand | 写真は、先日発表された防衛者エミレーツ・チームニュージーランドのAC75(編集部)
初めてアメリカズカップを現場で観て以来約30年、その間、ニッポンチャレンジのセーリングチームに選抜されるなどしながら、日本のアメリカズカップ挑戦の意義を考察し続けるプロセーラー西村一広氏による、アメリカズカップ考を不定期連載で掲載する。新時代のアメリカズカップ情報を、できるだけ正確に、技術的側面も踏まえて、分かりやすく解説していただく。(編集部)
先月2月上旬、AC40クラス最初の個人オーナー艇の建造契約が成立したことを、同クラス協会が発表した。
今年開催される第37回アメリカズカップ(以下、AC)関連イベントであるウイメンズACとユースACの制式艇AC40クラスは、ワールドセーリングに正式認定された世界初のモノハルフォイラー・ワンデザインである。第37回AC終了以降には、AC40クラスの世界サーキットの年次開催が決定していて、AC関係のチームだけでなく、もちろん一般の個人オーナーチームも参加することができる。
現在は第37回ACチームのほか、ウイメンズやユースACのニュージーランド・チームやスペイン・チームが所有する11隻のAC40クラスが世界各地でセーリング活動をしている。
今回、12隻目のAC40クラスの建造契約を締結したオーナーの国籍や名前は明らかにされていないが、これまで長く世界レベルの第一線で活躍しているレーシングチームのオーナーだという。我が日本にも、そのように表現されて然るべきチームのオーナーも存在する。もしその日本チームのオーナーがAC40クラスの購入をお決めになったのだとしたら、うれしいなぁ。
AC40クラスは、ソフトウエアも含めたパッケージで販売される。これからの時代のワンデザイン40ftモノハル・フォイラーとして、世界のセーリングレース界をリードしていく存在になる可能性を秘めている
photo by America's Cup / AC37
さて、5カ月後の8月22日には挑戦者を決めるための予選シリーズ、ルイ・ヴィトンカップが始まる第37回AC。そのACに使われる各チームの新世代AC75クラスが、1カ月後の4月上旬を皮切りに続々と進水する予定だ。
第37回ACでは、防衛・挑戦の各チームともAC75クラスは1隻しか建造してはならないことになっている。つまり、来月以降に各チームのベースで進水するヨットが、そのチームの第37回ACのレース艇になる。
前回の、2021年の第36回ACでも制式艇だったAC75クラスだが、AC75のクラスルールは、第37回ACではバージョン2に変更されている。クルー人数が11人から8人になり、フォイルの重さが軽くなり、バウスプリットも無くなったことなどでセーリング重量が軽くなったという要因だけからしても、第2世代のAC75クラスの性能は第1世代を軽く凌駕すると予想されている。
(文=西村一広)
後編、AC40クラス、フォイル開発における三つの鍵に続きます。
※本記事は月刊『Kazi』2024年4月号に掲載されたものです。バックナンバーおよび電子版をぜひ
西村一広
Kazu Nishimura
小笠原レース優勝。トランスパック外国艇部門優勝。シドニー~ホバート総合3位。ジャパンカップ優勝。マッチレース全日本優勝。J/24全日本マッチレース優勝。110ftトリマランによる太平洋横断スピード記録樹立。第28回、第30回アメリカズカップ挑戦キャンペーン。ポリネシア伝統型セーリングカヌー〈ホクレア〉によるインド洋横断など、多彩なセーリング歴を持つプロセーラー。コンパスコース代表取締役。一般社団法人うみすばる理事長。日本セーリング連盟アメリカズカップ委員会委員。マークセットボットジャパン代表。
あわせて読みたい!
●AC日記03-1 | 補完し合うアメリカズカップとSailGP¥
●舵杯2024 結果速報! 優勝は〈グランデッセ〉(X35)