未経験者やビギナーからすると、どうにも入り口が分かりにくい、ヨット、モーターボート遊びの世界。そんな方の素朴な疑問にお答えする「フネ遊びの素朴なギモン」シリーズを、何回かに分けてお届けします。
Q.フネはどこに置けるの?
A. 民間マリーナや公共ハーバー、河川係留施設などなど。
フネと自動車の大きな違いが、その置き場所です。広い自宅の庭にフネを置いて、出航するときはトレーラーで牽引して・・・なんて恵まれた環境にある人はごく一部のはず。
そこで、海辺の「マリーナ」や「ヨットハーバー」に保管料を支払ってフネを置くことになります。この二つの呼称に関しては特に定義はなく、ほぼ同じ。ほかに漁協を活用した「フィッシャリーナ」や、大型河川の下流部にある「ボートパーク」などがあります。
保管費用については、地域や施設の充実度によって大きく異なり、運営主体が民間か公共か第三セクターかによっても違ってきます。月額ではなく年額で支払う場合が多いようです。
保管料の目安を示すのは難しいですが、例えば30ft(約9m)艇の場合は、首都圏の高級マリーナでは100万円を超える一方、地方では20~30万円、あるいはそれ以下という場合も珍しくありません。充実した施設でリーズナブルな場所は人気が高く、順番待ちや抽選という場所もあるようです。
海上係留の大型マリーナ、伊東サンライズマリーナ(静岡県)。
■陸上保管と海上係留
フネの保管方法には陸上保管と海上係留があります。
陸上保管は、クレーンなどの揚降機を使って、出航するたびにフネを揚げ降ろし(上下架)します。海上係留と比較してフネがキレイに保てる一方、上下架料金が毎回かかる施設があったり、出航までに時間がかかるという面があります。
海上係留は、係留ブイや浮き桟橋にロープでフネをつないで固定します。すぐに出航できたり、浮かべたフネの上でくつろげるといったメリットがある一方、船底に海草や貝類が付着しやすく、最低でも年に一度は船底を塗装し直す必要があります。
陸上保管艇は出航するたびにクレーンでフネを下ろします(写真は神奈川県横須賀市のシティマリーナヴェラシス)。
■人気急上昇中の“遠隔地オーナー”
保管料は地域によって差があります。そしてクルージング愛好家にとって魅力的なゲレンデは、必ずしも都市圏ではありません。そんな事情から、都市圏に住む人が自宅から遠く離れた場所にフネを置き、乗るときは旅行感覚で一定期間訪れて、クルージングや釣りを楽しむケースが増えています。
この“遠隔地オーナー”ともいうべきスタイルはぜいたくに見えて、実はリーズナブル。キャビン付きであればフネに泊まるのは宿泊費はかからず、都市圏との保管料の差額で交通費がまかなえるという計算です。格安航空券の存在も後押しして、時間に自由がきくリタイア世代に人気となっています。
沖縄や九州、瀬戸内海が“遠隔地オーナー”に人気。写真は香川県の仁尾マリーナ。
[実例・35ft艇の海上係留の場合]
過去に取材した、大阪から35ftヨットを熊本に移した例。年6回ほど長期滞在して周辺の島々のクルージングを楽しんでいました。交通費に24万円も使いつつ、結果的にランニングコストが10万円以上安くなりました。
■大阪湾内の某マリーナ
年間約70万円
■熊本県内のフィッシャリーナ
年間約34万円+往復交通費は約24万円(4万円×6回)
=年間58万円
(文・写真=Kazi編集部/中島 淳)
※この記事は月刊『Kazi』2021年11月号に掲載された内容を再編したものです。この号の特集は「今から始めるヨット&ボート」と題し、フネ遊びの世界へのアプローチ法の“王道”を具体的に紹介。ディンギーだけの経験者がクルーザーの世界へ、あるいはクルーザー乗りがモーターボート遊びに挑戦、こんなケースにも役立つ情報も掲載しています。ご興味のある方は、全国書店またはこちらからお求めいただけます。
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