ベントレーのSUV、ベンテイガに“スピード”が帰ってきた。
このたび行われたベンテイガのマイナーチェンジに伴って、世界最速SUVの評価を受けるスピードも新型へ進化したのだ。搭載されるエンジンは635馬力のW型12気筒ツインターボ。海がさらに近く感じられるような一台だ。
ベントレーのモータースポーツ活動において、今もその最も輝いた瞬間として語られるのが、1929年のル・マン24時間レースだ。ベントレーはこのレースで1位から4位までを独占し、そのドライバーたちはいつしか「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれ、以降、最高峰のパフォーマンスを誇るモデルには「スピード」の称号が与えられるに至ったのである。
その名誉ある“スピード”のタイトルが、ベンテイガに復活した。ベンテイガ・スピードは2019年に誕生しているが、ベンテイガ自身のマイナーチェンジに伴って、一時そのラインアップから外されていた。それは従来型のスピードを超えるスピードが誕生することを予告するメッセージであったことを今にして思う。スピード、すなわち最高峰は一つで十分なのだ。
ベンテイガでは、初めてアルカンターラ素材を用いて、さらにスポーティーな内装を演出して見せた。インストパネルなどはすべてデジタル式に進化
ベントレーが、この“スピード”という言葉が意図するところである速さを直接的に訴えたいのかどうかは別として、マイナーチェンジを終えて戻ってきたベンテイガ・スピードの最も大きな魅力は、その美しさにあるのではないかと個人的には思う。長さが伸びて、さらにシンプルで大型のグリルと組み合わされることになったフロントセクション。そして楕円形にデザインが改められたテールランプなどが、さらに洗練された。フルデジタル式のメーターパネルやセンターディスプレーが大型化されたのは、ほかのベンテイガと同様だが、アルカンターラをシートやステアリングホイールに使用し、スポーティーな雰囲気を強めているのはスピードのみの特徴である。
シートやドア内張りに施された、マリナードライビングスペシフィケーションによるダイヤモンドキルトが美しい。「speed」の刺繍が誇らしげだ
635psの最高出力と900Nmの最大トルクを誇るフロントの6L・W型12気筒ツインターボエンジンは、8速ATとの組み合わせで、常に上品なパワーフィールをアクセルペダルの踏み方とともに感じさせてくれる。そしてさらに好印象を与えてくれたのが、エアサスペンションを用いた4輪のサスペンションと、ボディー剛性の高さ。デフォルトのドライビングモード「B」のほかに、「コンフォート」や「スポーツ」の選択もできるが、実際にはBモードでも足回りの動きはスムーズで、悪路も含めて上質なものになった。もちろんコーナリング時の動きにも十分な安定感がある。
6LのW型12気筒ツインターボエンジンは、最高出力が635ps。最大トルクも900Nmと、ライバルに対して十分なアドバンテージを持つことは間違いない
SUVとしての機能性も、もちろん十分に持ち合わせている。後席は40:20:40で収納が可能。必要に応じてラゲッジルームを拡大していくことができる
いつもと同じ道を、いつもと同じペースでマリーナへと向かう。到着した時間はさほど変わらないのに、なぜか“スピード”を感じてしまったのは、ベントレーマジックによるものなのか。どうやらこのベンテイガ・スピードは、数値化することのできない、別の速さというものを持ち合わせた一台であるようだ。
外観をスポーティーに見せるリアウイングはスピード専用の装備。前後のホイールは22インチ径で、取材車は285/40ZR22のピレリP ZEROを組み合わせていた
※本記事は『シー・ドリーム』vol.32に掲載された記事を再構成したものです。
SPECIFICATIONS
BENTLEY BENTAYGA SPEED
〇全長:5,145mm 〇全幅:1,995mm 〇全高:1,755mm 〇車両質量:2,520kg 〇エンジン:W型12気筒DOHCツインターボ 〇総排気量:5,945cm³ 〇最高出力:467kw(635ps)/5,000rpm 〇最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1,750~4,500rpm 〇加速:0~100km/h 3.9秒 〇最高速度:306km/h 〇車両本体価格:33,450,000円
(問い合わせ)
ベントレーコール
TEL:0120-97-7797
https://www.bentleymotors.jp/
(文=山崎元裕 写真=村西一海 撮影協力=シティマリーナヴェラシス)
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