基本スキルを身に着けることこそが、安全なパドリング上達の近道。今回のテーマは、シットオントップカヤック(以下、SOT)のリエントリー(再乗艇)です。
SOTは、パドルスポーツの中では比較的初心者でも安全に始めやすいタイプとされ、その手軽さが人気を集めています。しかし、水の上を漕ぐ小舟であることに変わりはありません。さらに、海や湖がパドリングフィールドとなることが多いため、沈脱してしまうと泳いで上陸するセルフレスキューは現実的ではありません。シーカヤック同様、水上でリエントリー(再乗艇)できることが必須となります。
以下、SOTの再乗艇のコツや注意点、その練習方法を交えて紹介します。
(文・写真・動画=嘉藤暖博)
■代表的な復元方法
転覆した艇のボトムに乗り上がり、向こう側のグラブループを持って起こす方法。
手前のグラブループを持ち上げながら中に入り、向こう側のグラブループを引き寄せる方法。
SOTを転覆状態から復元する方法は主に2種類あります(写真・動画上)。シーカヤックはバウから起こすのが普通ですが、SOTは幅が広く重量があるので、バウを持っての復元は難しい場合が多いです。サイドにグラブループのないタイプの艇はビルジホールに指を入れたり、ビルジホールに細引きを通しておくなどするとよいでしょう。
ビルジホールに細引きを通して簡易的なグリップを作った例。グラブループがないモデルなどには有効です。
■リエントリー(再乗艇)の方法(パドルフロートなし)
① 艇の横から(風上側が良)バタ足で足を水面に出す。
② 片手で艇の向こう側、反対の手で艇の手前を持ち一気に這い上がる。這い上がったら頭は下げる。
③ 足をバウ側、頭をスターン側に向け、艇のキールライン(縦側中心)を中心に左右のバランスを取る。
④ 寝た状態でバランスを取りながら仰向けになる。
⑤ 上体を起こしてシートに座る。
■リエントリー(再乗艇)の方法(パドルフロートあり)
① パドルフロートを付けていないほうのブレードをシートの後ろに置き、手で固定する。このときフロートは水面に。
② パドルに足をかけて艇に乗り上がる。
③ 重心を低くし、足をバウ側、頭をスターン側に向ける。
④ 寝た状態でバランスを取りながら仰向けになる。
⑤ シートに座りパドルフロートを回収する
再乗艇の方法は上記の写真および動画を参考にしてください。
ひとつ注意していただきたいのは、練習はまず道具を使わずに始めてみること。いきなりパドルフロートを使って練習すると、体重のかけ過ぎでパドルを破損しがちです。
セルフレスキューができない人のソロ活動は、やはり無謀です。スキルに自信のない方は、グループレスキューのできるベテランと行動するか、スクールに入って講習を受けましょう。
一般社団法人JSCA(日本セーフティカヌーイング協会)公認スクールではSOT、フィッシングカヤックを得意としているしているところも多数あります(https://jsca.net/)。
※本記事は『カヌーワールド』VOL.21の連載「カヤッカーのためのリスクマネジメント教室」から抜粋したものです。バックナンバーおよび最新刊もぜひご覧ください。
※【カヤックハウツー】基本の「き」 #01 はコチラ
※【カヤックハウツー】基本の「き」 #02 はコチラ
※【カヤックハウツー】基本の「き」 #03 はコチラ
(著者プロフィール)
嘉藤暖博(かとう・あつひろ)
日本セーフティーカヌーイング協会(JSCA)公認カヌースクールBLUE HOLIC代表。JSCA安全委員会委員。福岡県北九州市出身の50歳でカヤック歴は30年。趣味は料理とバックカントリースキー。春~夏は北海道小樽でカヤックガイド、秋は九州沖縄方面で釣りとカヤック、冬は山ごもりでバックカントリースキーという生活を送る。
http://www5c.biglobe.ne.jp/~b-holic/
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