全長12mのモータークルーザーによる太平洋横断航海記|『誰もやらなかった航海』発刊

2023.06.21

堀江謙一さんに辛坊治郎さんと、近年、太平洋を横断するヨットのニュースが続いている。ただし、これらの全ては、風の力で走るヨットによるもの。燃料を動力として走る船──大型商船ならともかく、プレジャーユースの小型モータークルーザ―(パワーボート)でとなると、なかなか難しいのが現実にあるといえるだろう。その理由は、船に積むことのできる燃料に限界があったり、太平洋のど真ん中でエンジンが故障してしまった場合のリスクなど、セール(帆)に風を受けて走るヨットとは大きな違いがある。

全長12.12メートルのモータークルーザー〈海音(みお)〉(ノードヘブン40)は、2013年5月にアメリカのアナコルテスを出航。その後、サンフランシスコ、ハワイ島、オアフ島、マジュロ、ポンペイ、小笠原・父島を経て、同年9月に芦屋マリーナに到着した。

総航行日数48日間、総航行距離は実に約8,670海里(約16,000キロ)。キャプテンの北村正興さん(当時73歳)、クルーの大場健太郎さん(当時65歳)というシニア世代の二人は、小型モータークルーザーによる太平洋横断という、これまでに例のない航海を成し遂げた。

 

愛艇〈海音〉のヘルムステーションで笑顔を見せる北村正興さん

 

2013年9月に北村さんが芦屋マリーナに到着した後、筆者は〈海音〉に北村さんを訪ねる機会を得た。長年にわたって準備を周到に重ね、悲願ともいえる航海を実現した北村さんの話は、何時間も聞いていても興味が尽きないことばかりだった。

また、準備から実際の航海にいたるまで、さまざまな記録をデータとして残していることも目をひいた。これから同じような航海をしてみたいと思っている人にとって、それはとても貴重なものだろう。

 

それから約10年。北村さんが航海記を上梓した。

タイトルはまさしく『誰もやらなかった航海』である。

 

 

 

太平洋を渡って来た愛艇〈海音〉の各部など、カラー写真も多数掲載。読み物としての航海記というだけでなく、海外クルージングをする上でのあれこれなど、非常に役に立つノウハウがぎっしり詰まっている。

ボート乗りのみならず、ヨット乗りにとっても役立つ一冊。ぜひお手に取ってご覧いただきたい。

 

(文=舵社/安藤 健)

 

『誰もやらなかった航海』
北村正興著/舵社刊

●価格:2,200円(税込)
A5判/並製本/228ページ(カラー口絵8頁+モノクロ220頁)
ISBN 978-48072-5129-2

 

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