江の島ヨットクラブの元会長である故 松本富士也さんと、故 青山 篤さんは、キールボートのひとつドラゴンクラスで活躍した名セーラーであった。多くのドラゴンセーラーを輩出する伝統ある江の島で第49回全日本選手権が開催された。
月刊Kazi 12月号に掲載されたレースレポートをここに再録する。原稿は、江の島ヨットクラブ常務理事の福島 望さんに依頼した(編集部)。
(※トップ写真=海上のチェスと評されるドラゴンクラス。わずかな力量差、風の読みが勝敗を決する。右が優勝の〈LOTUS〉[セールナンバー52])
第49回 ドラゴン級全日本選手権大会
2022.10.7~10/江の島ヨットハーバー沖
接戦のダウンウインドシーン。バウマンをマスト横に立たせ疾走する
7年ぶりの江の島開催
10月7~10日、「第49回ドラゴン級全日本選手権」が江の島ヨットハーバーで開催されました。
江の島での開催は、2015年以来7年ぶりとなります。今回は、関西から4艇、ホームポート江の島から2艇、合計6艇の参加のもとで行われました。
初日は、セール計測とボートのインスペクション(検査)。大雨と北の強風の中で行われたインスペクションの後、各艇の下架が予定されていましたが、天候がさらに悪化することが予想されたため、艇の下架は中止されて初日は終了。
大会2日目、いよいよレースのスタートです。北東の軽~中風、さらに江の島特有のシフティーなコンディションの中、2レースが行われました。1-2とまとめた〈MARTSPIRIT〉が首位に立ち、〈FALCO〉、〈LOTUS〉と続きます。
江の島沖を走るドラゴンクラス。江の島ヨットハーバーでの開催は7年ぶりとなる
ハードコンディションの3日目
大会3日目、北北東の中~強風の中で3レースが行われました。5レグのレースが2本、4レグで1本と終日みっちりレースが行われ、選手にとってはハードな1日だったと思います。レース展開は、〈LOTUS〉と〈FALCO〉が3レースとも1、2位を争う形で、3位以下は混戦となりました。この日、各レースで3位を取ったのは〈GUYFOO II〉、〈WINDWAR〉、〈MART SPIRIT〉と別々の艇でした。江の島の〈GUYFOO I〉もこれに食らいついてまさに激戦となりました。ドラゴンクラスのレースは、各艇のスピードの差がそれほど大きくないため、アクションのミス、ハンドリングのミスでじわじわと差がついてゆきます。
マーク回航、スピネーカーホイスト&ダウンなど正確なクルーワークが求められ、順位を決める大きなファクターとなっています。また、ドラゴンクラスは、フットベルトの装着が認められていません。強風時クローズは、皆「足場」を確保するために必死です。写真等で見ると優雅に座りながら乗っているようですが、実は常に頭脳と体をフルに働かせてセーリングしなければなりません。
ハードな1日を終え、〈LOTUS〉と〈FALCO〉が1ポイント差で最終日を迎えることとなりました。6レースが予定されている全日本では、6レースすべて行われないとカットレース(捨てレース)が作れません。5レースを終了して1ポイント差で2位の〈FALCO〉は最終レースでの巻き返しを期したいところです。
この日は、夕刻より、ドラゴン級全日本恒例の「晩餐会」が鎌倉プリンスホテルにて催されました。ドレスコードがあり、着席形式にて行われるパーティーは、海においても陸においても格式を重んじるドラゴンクラスならではのイベントです。参加各艇、運営スタッフが紹介され、親睦を深めました。
日本海に低気圧が入り荒天となることが予想された大会最終日。運営スタッフが協議した結果、残念ながら第6レースはキャンセルされることが艇長会議にて伝えられました。この時点で〈LOTUS〉の優勝が決定。この後参加艇の上架、解装を行い、昼からの表彰式となり大会を終了しました。〈LOTUS〉の皆さまおめでとうございます!
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江の島ヨットクラブにとってドラゴンクラスは、非常に縁の深いクラスです。故 松本富士也元会長、故 青山 篤元会長がこよなく愛したドラゴンクラスの江の島での全日本を無事に終えられたことに、運営スタッフ一同ほっとしております。格調高いドラゴンクラスは、船、文化ともに、いつまでも残ってほしいと感じました。
記念すべき第50回大会は来年、新西宮ヨットハーバーにて開催されます。
全6艇の参加艇、フィニッシュ後の笑顔を紹介。幅広い年齢層が集まったレガッタだ
〈LOTUS〉セールナンバー52
クルー:安田/森田/伊藤/関根
〈FALCO〉セールナンバー50
クルー:澤田/有馬/川瀬/畑山
〈MART SPIRIT〉セールナンバー54
クルー:玉江/堤/太田/荒川
〈WIND WAR〉セールナンバー49
クルー:諏訪/桝田/岡田/三谷
〈GUYFOO II〉セールナンバー55
クルー:田中/瀧口/柴田/椎野
〈GUYFOO I〉セールナンバー48
クルー:名取/吉川/池田/春木
江の島ヨットハーバー・クラブハウス2階で開催された表彰式。一堂に会したドラゴンクラスセーラーたち
セーラーを魅了するドラゴンクラスのシアーライン。貴重なウッドデッキ艇は2艇の参加だった
1位 LOTUS 2-3-1-1-2
2位 FALCO 4-1-2-2-1
3位 MART SPIRIT 1-2-4-4-3
4位 WIND WAR 3-5-5-3-4
5位 GUYFOO II 5-4-3-5-6
6位 GUYFOO I 6-6-6-6-5
(文=福島 望/江の島ヨットクラブ常務理事、写真=ドラゴン級全日本選手権運営委員会)
※関連記事は、月刊『Kazi』2022年12月号にも掲載。バックナンバーおよび電子版をぜひ
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